苦戦続くカメラ市場で注目のカテゴリーがある。Vlogger(ブイロガー)向けカメラだ。写真よりも音と映像の記録を重視し、日常的に動画を収録し発信するVloggerのニーズに応える。先鞭をつけたのはソニーだ。2020年6月、1インチセンサーを搭載するコンパクトカメラ「VLOGCAM ZV-1」を発売。新市場を生み出した。以後、パナソニックとニコンが参入。20年6月の販売台数を1とする指数では、この9月に1.88と、ほぼ2倍に近い水準まで市場が拡大した。全国2300店の家電量販店やネットショップ、カメラ専門店の実売データを集計するBCNランキングで明らかになった。
ZV-1発売のインパクトは大きかった。発売初月の20年6月、カメラ全体の販売金額ランキングで首位。販売台数で7位を記録した。当時の平均単価(税抜き、以下同)が9万7800円。カメラ全体の5万2000円に比べるとかなり高額な製品だが、新規性が受けた。その後も、コンパクトカメラカテゴリーでは、発売月から14カ月連続で販売金額1位を維持する大ヒット商品になった。
人気を引き継いだのがやはりソニーの「ZV-E10」。21年9月の発売初月、単価は7万7100円だった。APS-Cセンサーを搭載するレンズ交換式カメラにもかかわらず、コンパクトのZV-1より2万円近く安いこともあり、こちらも大ヒットを記録した。ZV-1発売初月の販売台数を1とする、Vlogger向けカメラ全体の販売台数指数は、21年9月には1.74まで急上昇。同月、レンズ交換型カメラの販売台数シェアでも1位を記録した。その後、部材不足などの影響で一時受注を停止。売り上げは一旦大きく後退したものの、受注再開後に急回復。この9月は再び販売台数でトップに返り咲いた。
ソニーの2機種に共通なのはピントスピードの速さと音の良さ。特に音質に関しては三つのマイクユニットを搭載し、電子的に指向性を制御することで鮮明な音声の収録を可能にした。また、マイクが内蔵されているカメラ上部に取り付けられる付属品、通称「もふもふ」(風切り音を防ぐウインドジャマー)が可愛いと評判にもなった。マニッシュなカメラ筐体の上部に毛玉が付いた商品写真が、新カテゴリーのカメラであることを強烈に印象付けた。
ソニーに続きパナソニックも20年8月、「LUMIX G100」を発売し、いち早く市場に参入した。後にソニーがリリースしたZV-E10に仕様が似通っていたが、売り上げは振るわなかった。最大のポイントは価格だ。レンズ交換型ながら、コンパクトのZV-1とほぼ同水準まで価格を抑え、当初の平均単価も9万5500円と10万円を切った。ところが一部ではピントのスピードが遅く音質も今一つとも評価されるなど、機能面でソニーに後れをとったことで、ヒットには至らなかった。その後、21年10月に単価を7万6100円まで引き下げたことなどで、現在でもコンスタントに売り上げを稼いでいる。
11万円を超える強気価格の「Z30」で、この8月に参入したのはニコンだ。レンズ交換型のAPS-Cセンサーを搭載するモデルで、Zマウントのカメラとしては初めてファインダーを取り払った。今のところパナソニックのG100と同程度は売れている。価格を考えるとまずまずの出足だ。とは言え、ニコンの中では安い。同社のミラーレスカメラの平均単価は18万2200円、一方、Z30は11万9200円と34.6%安だ。安いといえばソニーも同様で、同社のミラーレスカメラの平均単価は12万8700円。対して9月のZV-E10の平均単価は7万8200円、これも3割超の39.2%安だ。パナソニックは全体が9万1800円に対して、G100が7万5400円。やや控えめだが17.9%安と2割近く安い。Vlogger向けカメラの人気の秘密は、目先の新しさだけでなく、価格の安さにもありそうだ。
9月現在で、4モデルしかないVlogger向けカメラだが、販売台数はカメラ市場全体の7.4%を占める。もはや無視できない規模になってきた。この13日、ソニーは広角レンズを搭載するZV-1の別バージョン「VLOGCAM ZV-1F」を発表。ラインアップが一つ増える。またキヤノンなど他社もこのカテゴリーに参入する可能性も高い。Vlogger向けカメラは、今後さらなる盛り上がりが期待できそうだ。(BCN・道越一郎)
ZV-1発売のインパクトは大きかった。発売初月の20年6月、カメラ全体の販売金額ランキングで首位。販売台数で7位を記録した。当時の平均単価(税抜き、以下同)が9万7800円。カメラ全体の5万2000円に比べるとかなり高額な製品だが、新規性が受けた。その後も、コンパクトカメラカテゴリーでは、発売月から14カ月連続で販売金額1位を維持する大ヒット商品になった。
人気を引き継いだのがやはりソニーの「ZV-E10」。21年9月の発売初月、単価は7万7100円だった。APS-Cセンサーを搭載するレンズ交換式カメラにもかかわらず、コンパクトのZV-1より2万円近く安いこともあり、こちらも大ヒットを記録した。ZV-1発売初月の販売台数を1とする、Vlogger向けカメラ全体の販売台数指数は、21年9月には1.74まで急上昇。同月、レンズ交換型カメラの販売台数シェアでも1位を記録した。その後、部材不足などの影響で一時受注を停止。売り上げは一旦大きく後退したものの、受注再開後に急回復。この9月は再び販売台数でトップに返り咲いた。
ソニーの2機種に共通なのはピントスピードの速さと音の良さ。特に音質に関しては三つのマイクユニットを搭載し、電子的に指向性を制御することで鮮明な音声の収録を可能にした。また、マイクが内蔵されているカメラ上部に取り付けられる付属品、通称「もふもふ」(風切り音を防ぐウインドジャマー)が可愛いと評判にもなった。マニッシュなカメラ筐体の上部に毛玉が付いた商品写真が、新カテゴリーのカメラであることを強烈に印象付けた。
ソニーに続きパナソニックも20年8月、「LUMIX G100」を発売し、いち早く市場に参入した。後にソニーがリリースしたZV-E10に仕様が似通っていたが、売り上げは振るわなかった。最大のポイントは価格だ。レンズ交換型ながら、コンパクトのZV-1とほぼ同水準まで価格を抑え、当初の平均単価も9万5500円と10万円を切った。ところが一部ではピントのスピードが遅く音質も今一つとも評価されるなど、機能面でソニーに後れをとったことで、ヒットには至らなかった。その後、21年10月に単価を7万6100円まで引き下げたことなどで、現在でもコンスタントに売り上げを稼いでいる。
11万円を超える強気価格の「Z30」で、この8月に参入したのはニコンだ。レンズ交換型のAPS-Cセンサーを搭載するモデルで、Zマウントのカメラとしては初めてファインダーを取り払った。今のところパナソニックのG100と同程度は売れている。価格を考えるとまずまずの出足だ。とは言え、ニコンの中では安い。同社のミラーレスカメラの平均単価は18万2200円、一方、Z30は11万9200円と34.6%安だ。安いといえばソニーも同様で、同社のミラーレスカメラの平均単価は12万8700円。対して9月のZV-E10の平均単価は7万8200円、これも3割超の39.2%安だ。パナソニックは全体が9万1800円に対して、G100が7万5400円。やや控えめだが17.9%安と2割近く安い。Vlogger向けカメラの人気の秘密は、目先の新しさだけでなく、価格の安さにもありそうだ。
9月現在で、4モデルしかないVlogger向けカメラだが、販売台数はカメラ市場全体の7.4%を占める。もはや無視できない規模になってきた。この13日、ソニーは広角レンズを搭載するZV-1の別バージョン「VLOGCAM ZV-1F」を発表。ラインアップが一つ増える。またキヤノンなど他社もこのカテゴリーに参入する可能性も高い。Vlogger向けカメラは、今後さらなる盛り上がりが期待できそうだ。(BCN・道越一郎)