もう画質向上は消費者に刺さらない、有機ELテレビは復調しつつあるけれど
コロナ特需の後遺症で大幅な前年割れに苦しむテレビ市場だが、有機ELテレビは踏ん張っている。8月の前年同月比が販売台数で108.3%、販売金額でも100.1%と、4カ月ぶりにそろって前年を上回った。全国の家電量販店やネットショップなど約2300店舗の実売データを集計するBCNランキングで明らかになった。
液晶テレビと有機ELテレビを合わせたテレビ市場全体では4月以降、台数、金額ともに前年を下回っている。特に5月以降は、いずれも2桁割れの大きなマイナスが続いている。液晶テレビに比較して好調を維持していた有機ELテレビも、6月、7月と連続して大きなマイナスを記録。テレビ市場の総崩れが危惧されていた。しかし8月、有機ELテレビの販売が持ち直しの動きを見せ、なんとか一服。下がり続けていた平均単価も、20万円台を回復した。
このところ市場を動かしているのは、地デジ化前後に購入されたテレビの買い替え需要。新調するにするにあたって、より大型のテレビが受け皿になってきた。とはいえ、住宅事情を考えれば大型化にも限度がある。そこでもう一つの受け皿として機能しているのが高画質の有機ELテレビだ。現在はすべて42型以上の製品が占めている。8月現在、42型以上のテレビ全体に占める有機ELテレビの販売台数構成比は18.1%、販売金額で30.7%。平均単価は有機ELが約20万円に対し液晶は約10万円。2倍の価格差があるにもかかわらず、有機ELテレビはジリジリと売り上げを伸ばしている。
画面サイズ別の有機ELテレビの販売台数構成比では55型が主流。過半を占める。しかしトレンドは縮小傾向。2019年時点で8割程度あったが徐々に構成比が下がり、この8月は53.7%だった。一方、構成比を伸ばしているのが、一回り小さい48型。21年に入り2桁の構成比を占めるようになり、昨年8月には29.4%と3割水準に達した。以降やや落ち着いてきたが8月は21.5%と2割台を維持している。65型もほぼ同じ水準の20.1%だが、この3年では構成比の大きな増減はない。より小さな42型も登場しているが、まだラインアップが限られており、今のところ2.9%にとどまっている。
メーカー別販売台数シェアでは、8月現在、ソニーが30.5%を占めトップ。以下シャープ、TVS-REGZA、パナソニック、LGエレクトロニクスと続く。昨年7月はオリンピック特需のためパナソニックが39.5%でトップを走っていたが、以降、徐々にシェアを失い4位まで順位を落とした。逆にシェアを伸ばしているのがシャープとTVS-REGZA。有機ELテレビでは最後発のシャープだが、42型の小型製品をいち早く投入するなど、ラインアップを拡充。1年でおよそ10ポイントシェアを上げた。TVS-REGZAは逆に大型製品のラインアップに力を入れ、9.4%から18.8%へとシェアを倍増させた。
現在テレビ市場を下支えしている有機ELテレビの利点は画質。新方式のミニLEDを搭載した液晶テレビも含め、画像の美しさは本質的な価値だ。しかし市場の伸びは緩やか。市場全体をプラスに引っ張り上げる力はない。いわゆるチューナーレステレビに注目が集まる昨今、放送波の受信を主軸に据えたテレビのニーズは相対的に小さくなってきた。差別化のポイントは確実にシフトしている。今、消費者がテレビに最も求めている価値は画質ではない。画質競争に埋没する限り市場の本格回復は望み薄。必要なのは、本気のオンライン対応だ。テレビ離れが叫ばれて久しいが、中身は放送コンテンツ離れだ。オンラインコンテンツを含めた動画を大画面で楽しむニーズはむしろ高まっている。あらゆる映像コンテンツをどれだけ手軽で便利に楽しめるか、徹底的に攻めた製品が求められている。テレビ市場を復活させるカギはそこにある。(BCN・道越一郎)
液晶テレビと有機ELテレビを合わせたテレビ市場全体では4月以降、台数、金額ともに前年を下回っている。特に5月以降は、いずれも2桁割れの大きなマイナスが続いている。液晶テレビに比較して好調を維持していた有機ELテレビも、6月、7月と連続して大きなマイナスを記録。テレビ市場の総崩れが危惧されていた。しかし8月、有機ELテレビの販売が持ち直しの動きを見せ、なんとか一服。下がり続けていた平均単価も、20万円台を回復した。
このところ市場を動かしているのは、地デジ化前後に購入されたテレビの買い替え需要。新調するにするにあたって、より大型のテレビが受け皿になってきた。とはいえ、住宅事情を考えれば大型化にも限度がある。そこでもう一つの受け皿として機能しているのが高画質の有機ELテレビだ。現在はすべて42型以上の製品が占めている。8月現在、42型以上のテレビ全体に占める有機ELテレビの販売台数構成比は18.1%、販売金額で30.7%。平均単価は有機ELが約20万円に対し液晶は約10万円。2倍の価格差があるにもかかわらず、有機ELテレビはジリジリと売り上げを伸ばしている。
画面サイズ別の有機ELテレビの販売台数構成比では55型が主流。過半を占める。しかしトレンドは縮小傾向。2019年時点で8割程度あったが徐々に構成比が下がり、この8月は53.7%だった。一方、構成比を伸ばしているのが、一回り小さい48型。21年に入り2桁の構成比を占めるようになり、昨年8月には29.4%と3割水準に達した。以降やや落ち着いてきたが8月は21.5%と2割台を維持している。65型もほぼ同じ水準の20.1%だが、この3年では構成比の大きな増減はない。より小さな42型も登場しているが、まだラインアップが限られており、今のところ2.9%にとどまっている。
メーカー別販売台数シェアでは、8月現在、ソニーが30.5%を占めトップ。以下シャープ、TVS-REGZA、パナソニック、LGエレクトロニクスと続く。昨年7月はオリンピック特需のためパナソニックが39.5%でトップを走っていたが、以降、徐々にシェアを失い4位まで順位を落とした。逆にシェアを伸ばしているのがシャープとTVS-REGZA。有機ELテレビでは最後発のシャープだが、42型の小型製品をいち早く投入するなど、ラインアップを拡充。1年でおよそ10ポイントシェアを上げた。TVS-REGZAは逆に大型製品のラインアップに力を入れ、9.4%から18.8%へとシェアを倍増させた。
現在テレビ市場を下支えしている有機ELテレビの利点は画質。新方式のミニLEDを搭載した液晶テレビも含め、画像の美しさは本質的な価値だ。しかし市場の伸びは緩やか。市場全体をプラスに引っ張り上げる力はない。いわゆるチューナーレステレビに注目が集まる昨今、放送波の受信を主軸に据えたテレビのニーズは相対的に小さくなってきた。差別化のポイントは確実にシフトしている。今、消費者がテレビに最も求めている価値は画質ではない。画質競争に埋没する限り市場の本格回復は望み薄。必要なのは、本気のオンライン対応だ。テレビ離れが叫ばれて久しいが、中身は放送コンテンツ離れだ。オンラインコンテンツを含めた動画を大画面で楽しむニーズはむしろ高まっている。あらゆる映像コンテンツをどれだけ手軽で便利に楽しめるか、徹底的に攻めた製品が求められている。テレビ市場を復活させるカギはそこにある。(BCN・道越一郎)