【木村ヒデノリのThe HOUSE「地方コスパ最強賃貸編」#1】 普段ガジェットレビュー「Tech Magic」をお届けしているが、この夏からスマートホームに特化した記事も連載する運びとなった。「The HOUSE」というタイトルでスマートホームの設計方法や気をつける点、取り入れるガジェットやテクノロジーなどをお伝えしようと思う。時代を先取りするマインドの編集部と編集担当のO氏に改めて感謝したい。
筆者が何者なのか疑問の読者も多いと思うので簡単に紹介させてほしい。私は2018年からbentoというスマートホームブランドを展開している会社の代表だ。第1弾として2018年にリリースしたbento biancoは50平方メートルの狭小築古団地をベースにスマートホームを作った。完成後100組を超える企業や個人ユーザーが見学に訪れ、写真や文章では伝わりにくい「空間としての完成度」や「住みやすさ」を評価していただいた。令和元年度には国土交通省白書にも取り上げられ、日本式ライフスタイルの新たな形として注目されている。
bentoでは現在も進行中のプロジェクトがいくつかある。ガジェットを含めたさまざまな工夫でタスクを減らし、快適な時間を捻出するよう設計しているところだ。テクノロジーを詰め込んだ家のことをスマートホームと表現しがちだが、筆者は「無駄な時間を減らし、快適な時間を生み出す家」がスマートホームだと考えている。
例えば「トイレ掃除」は無駄な時間だし、掃除をしなくてもよければそれ以外の快適な時間を増やしてくれる。しかしこの「トイレ掃除」というタスクは必ずしもテクノロジーで解決しなくてはならないわけではない。洗剤や手入れの方法を工夫する方が賢い場合もあるだろう。そう考えれば「洗剤や手入れ方法の工夫」も立派なスマートハウス化手法の一つなのではないだろうか。
こうした考えをもとに、テクノロジーだけでなく行動心理、空間デザイン、主夫の知恵などの角度からスマートハウス化していくのがbentoのコンセプトだ。これまで始動から4年間、さまざまな場面で「これはうちでも取り入れたい!」と喜んでいただく機会が多くあった。この連載が皆さんの暮らしを豊かにする一助になれば幸いだ。
家の購入を「投資」にする方法は「家が価格以外の価値を生み出すようにする」か「再販価格が維持できる家を作る」のどちらかだ。筆者がおすすめするのは圧倒的に前者で、このコンセプトがスマートホームと相性がいい。家でお金を直接的に生み出すのは、空き時間貸し出したり、ルームシェアしたりとこれもまた難しいが、時間を生み出してくれる家であれば簡単に作ることができる。
スマートホーム化することで家事負担が半分になり、その時間副業ができるなら間接的に家がお金を生み出してくれていると言える。人によって生み出される金額は変わるが、このマインドで家を選んだり設計したりすれば少なくとも「浪費」や「消費」ではなくなるのではないだろうか。
今回のプロジェクトは愛知県豊橋市の物件で、住まわれるのは男性、一人暮らし、家賃8万4800円(共益費+駐車場1台込み)だ。見てもらってわかるように、都内では考えられないコスパの良さになっている。豊橋市内で考えるとかなりの高級物件だが、駅からは離れているので駅前の同家賃物件と比較するとコスパが良い。
都内や主要都市に住んでいるのであれば、こうした場所に移り住むだけでQOLが大幅に上がることがある。駅近物件の方が良いのでは?と思われるかもしれないが、市内ではコスパの悪い物件になってしまう。地方に移り住むのであれば、頻繁に駅を利用することはないはず。都度タクシーや自家用車+駅近駐車場を利用するのとどちらが得か精査するべきだ。まずは今払っている住居費と同じ家賃で理想的な家に住めないか場所にとらわれず検証してみるとよいだろう。
冷蔵庫の年間電気代の相場は7000~8000円だが、中身の詰め方や設定温度、扉の開閉数などの調整で2000~3000円節約できるというデータもある。これを考えると2台運用してもランニングコストはそこまで増加しない反面、設定温度がそれぞれで変えられたり、必要な場所におけたりと享受できるメリットが多くなる。
このように、新しい住居をスマートホーム化する際にはゼロベースで検討することが求められるが今まで持っていた家具家電を手放さないと何かしらそのように考えられない原因になってしまう。筆者が依頼されたプロジェクトでは基本的に手放すことを推奨しているのはこのためだ。次回は賃貸プロジェクトで実現しようとしている、ポイントから導入するスマート冷蔵庫、その上手な活用法を紹介するので楽しみにしていてほしい。(ROSETTA・木村ヒデノリ)
■Profile
木村ヒデノリ
ROSETTA株式会社CEO/Tech Director、スマートホームブランドbentoを展開。
普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。
【新きむら家】
https://www.youtube.com/rekimuras
記事と連動した動画でより詳しい内容、動画でしかお伝えできない部分を紹介しています。(動画配信時期は記事掲載と前後する可能性があります)
筆者が何者なのか疑問の読者も多いと思うので簡単に紹介させてほしい。私は2018年からbentoというスマートホームブランドを展開している会社の代表だ。第1弾として2018年にリリースしたbento biancoは50平方メートルの狭小築古団地をベースにスマートホームを作った。完成後100組を超える企業や個人ユーザーが見学に訪れ、写真や文章では伝わりにくい「空間としての完成度」や「住みやすさ」を評価していただいた。令和元年度には国土交通省白書にも取り上げられ、日本式ライフスタイルの新たな形として注目されている。
bentoでは現在も進行中のプロジェクトがいくつかある。ガジェットを含めたさまざまな工夫でタスクを減らし、快適な時間を捻出するよう設計しているところだ。テクノロジーを詰め込んだ家のことをスマートホームと表現しがちだが、筆者は「無駄な時間を減らし、快適な時間を生み出す家」がスマートホームだと考えている。
例えば「トイレ掃除」は無駄な時間だし、掃除をしなくてもよければそれ以外の快適な時間を増やしてくれる。しかしこの「トイレ掃除」というタスクは必ずしもテクノロジーで解決しなくてはならないわけではない。洗剤や手入れの方法を工夫する方が賢い場合もあるだろう。そう考えれば「洗剤や手入れ方法の工夫」も立派なスマートハウス化手法の一つなのではないだろうか。
こうした考えをもとに、テクノロジーだけでなく行動心理、空間デザイン、主夫の知恵などの角度からスマートハウス化していくのがbentoのコンセプトだ。これまで始動から4年間、さまざまな場面で「これはうちでも取り入れたい!」と喜んでいただく機会が多くあった。この連載が皆さんの暮らしを豊かにする一助になれば幸いだ。
家がお金を生み出す思考で設計する
よく言われる浪費・消費・投資マインドだが、家を「投資」として購入できているユーザーは多くない。「賃貸の家賃分の支払いで将来的に資産になります!」が不動産屋の常套句だが、購入した瞬間に物件価値(再販価格)は下がり、戸建ての場合は20年経つと建物の価値もゼロになってしまう。人生で一番高い買い物がこれでは困る。これから家を買う方はこれをよく考えて計画する必要があるだろう。家の購入を「投資」にする方法は「家が価格以外の価値を生み出すようにする」か「再販価格が維持できる家を作る」のどちらかだ。筆者がおすすめするのは圧倒的に前者で、このコンセプトがスマートホームと相性がいい。家でお金を直接的に生み出すのは、空き時間貸し出したり、ルームシェアしたりとこれもまた難しいが、時間を生み出してくれる家であれば簡単に作ることができる。
スマートホーム化することで家事負担が半分になり、その時間副業ができるなら間接的に家がお金を生み出してくれていると言える。人によって生み出される金額は変わるが、このマインドで家を選んだり設計したりすれば少なくとも「浪費」や「消費」ではなくなるのではないだろうか。
地方都市でコスパ最強の家を作る物件の選び方
家を選ぶ時に一度通勤圏内を離れて探してみよう。スマートハウス化するにしても物件で制約が決まってしまうので、慎重に選びたい。場所を限定しなければ同じ値段でかなり豪華な物件に住めることがわかるのではないだろうか。すでに地方都市に住んでいる人はさらに田舎を見てみよう。同じ価格で一軒家に住めたり広大な庭が使えたりすることが多い。現代、特にコロナ後においてもはや通勤できるかどうか考えるのは二の次だ。同じ職場に5年後勤めているかも怪しい。それであれば住まいを起点に働き方を考える方が大きなメリットを得られるだろう。今回のプロジェクトは愛知県豊橋市の物件で、住まわれるのは男性、一人暮らし、家賃8万4800円(共益費+駐車場1台込み)だ。見てもらってわかるように、都内では考えられないコスパの良さになっている。豊橋市内で考えるとかなりの高級物件だが、駅からは離れているので駅前の同家賃物件と比較するとコスパが良い。
都内や主要都市に住んでいるのであれば、こうした場所に移り住むだけでQOLが大幅に上がることがある。駅近物件の方が良いのでは?と思われるかもしれないが、市内ではコスパの悪い物件になってしまう。地方に移り住むのであれば、頻繁に駅を利用することはないはず。都度タクシーや自家用車+駅近駐車場を利用するのとどちらが得か精査するべきだ。まずは今払っている住居費と同じ家賃で理想的な家に住めないか場所にとらわれず検証してみるとよいだろう。
ゼロベース思考が必須、家具家電は持って行かない
物件が決まったら引っ越すわけだが、このとき思い切って今まで持っていた家具家電は手放そう。人間はどうしても今までの生活をベースに新しい家の住み方を考えてしまう。例えば「冷蔵庫は今のものを使えばいい」といった具合だ。しかし時代は動いている、冷蔵庫は今2台以上持つのがトレンドだ。また冷蔵庫の性能も進化している。省エネ性能だけでなく、中身が外出時でも確認できたり、量が減ってきたら自動発注できたりとこれまでの概念のとらわれていると見過ごしてしまう多くの機能が付加されている。冷蔵庫の年間電気代の相場は7000~8000円だが、中身の詰め方や設定温度、扉の開閉数などの調整で2000~3000円節約できるというデータもある。これを考えると2台運用してもランニングコストはそこまで増加しない反面、設定温度がそれぞれで変えられたり、必要な場所におけたりと享受できるメリットが多くなる。
このように、新しい住居をスマートホーム化する際にはゼロベースで検討することが求められるが今まで持っていた家具家電を手放さないと何かしらそのように考えられない原因になってしまう。筆者が依頼されたプロジェクトでは基本的に手放すことを推奨しているのはこのためだ。次回は賃貸プロジェクトで実現しようとしている、ポイントから導入するスマート冷蔵庫、その上手な活用法を紹介するので楽しみにしていてほしい。(ROSETTA・木村ヒデノリ)
■Profile
木村ヒデノリ
ROSETTA株式会社CEO/Tech Director、スマートホームブランドbentoを展開。
普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。
【新きむら家】
https://www.youtube.com/rekimuras
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