デジカメ市場の販売金額で2022年6月、ミラーレス一眼が占める割合が初めて6割を超えた。全国の家電量販店やカメラ専門店、ネットショップの実売データを集計するBCNランキングで明らかになった。
デジカメのタイプ別で販売金額構成比を集計したところ、2022年6月、ミラーレス一眼が60.3%、コンパクトが29.3%、一眼レフが10.3%と、ミラーレス一眼の販売金額構成比が初めて6割を超えた。スマートフォンに押され、デジカメ市場は縮小を続けている。2019年6月の販売金額を1とする指数では、この6月は0.65と35%減。とはいえ、コロナ禍で販売が激減した20年3月の0.35からは持ち直しており、縮小傾向はやや弱まってきた。3年間の販売金額推移をタイプ別でみると、コンパクトが45.5%減、一眼レフが69.3%減といずれも大幅に売り上げが減少した。一方、ミラーレス一眼は6.9%減と1桁減に踏みとどまっている。そのため、ソニー、キヤノン、ニコンなど主要カメラメーカーは、こぞってミラーレス一眼の開発や販売に力を入れている。
デジカメの主流が完全にミラーレス一眼にシフトする中、日本経済新聞は7月12日「ニコン、一眼レフカメラ開発から撤退 60年超の歴史に幕」と報じた。これに対しニコンは「憶測によるもので、当社が発表したものではありません」と否定。しかし「デジタル一眼レフカメラの生産、販売、サポートは継続」と反論しつつ、開発を終了させたこと自体は否定しなかった。ニコンでは既に一眼レフの開発は停止しているが、仮に一眼レフの開発を完全に終わらせたとしても全く不自然ではなく、むしろ当然の流れだ。
実売データが示す通り、レンズ交換型のカメラだけでなく、カメラ全体から見ても、市場をけん引しているのは完全にミラーレス一眼。ニコンでも一眼レフのラインアップを絞り込んでおり、現行製品は4機種のみだ。縮小市場にあって、販売金額でわずか1割にすぎない一眼レフの開発継続は、ニコンに限らずどんなメーカーでも困難だろう。見出しに取った「撤退」や「歴史に幕」という表現は、いずれも市場からの撤退を連想させる。カメラにあまり詳しくない向きからは、一部で「ニコンがカメラから撤退する」かのごとく、誤解して受け止められた。むしろそういう誤解を期待した「釣り見出し」であり、悪意を感じさせる、ある種の誤報ともいえる。
とはいえ、主戦場のミラーレス一眼市場で、ニコンが大苦戦していることもまた事実だ。販売台数シェアの争いは1位キヤノンと2位ソニーの間でし烈。ソニーは昨年、部材調達の不調から一部製品の受注を停止し大きくシェアを落とした。しかし、受注再開を受けこの6月は急回復。3位のOMデジタルソリューションズも、ソニー不在でシェアを伸ばしていたがソニーの復帰でシェアを落とし始めている。以下パナソニック、ニコン、富士フイルムと続く。フィルムカメラも含め一眼レフ全盛時代はキヤノン、ニコンの2強時代が長らく続いた。ところが、キヤノン、ソニーの2強の前に、ニコンは5位、6位のシェアに甘んじている状態だ。
ニコンがミラーレス一眼に本格参入したのは2018年。先立つ2011年には同社初のミラーレス一眼「Nikon 1」シリーズを発売したものの、メインストリームの扱いではなく短命に終わった。結局、ミラーレス一眼では先行するソニーに8年ほども後れをとった。現在のニコンがシェア低迷に苦しんでいる要因だ。しかし、フィルムカメラのスタイルを継承した「Z fc」が話題を呼び、流行の動画撮影に特化したVlogger向け製品「Z 30」をリリースするなど、同社の動きは活発になってきた。キヤノンとの2強時代であれば、いくら知識のない整理部の記者でも「ニコンがカメラから撤退することはあり得ない」と思ったことだろう。ミラーレス一眼であっても、トップシェアを脅かす迫力ある製品の継続的なリリースを期待したい。(BCN・道越一郎)
デジカメのタイプ別で販売金額構成比を集計したところ、2022年6月、ミラーレス一眼が60.3%、コンパクトが29.3%、一眼レフが10.3%と、ミラーレス一眼の販売金額構成比が初めて6割を超えた。スマートフォンに押され、デジカメ市場は縮小を続けている。2019年6月の販売金額を1とする指数では、この6月は0.65と35%減。とはいえ、コロナ禍で販売が激減した20年3月の0.35からは持ち直しており、縮小傾向はやや弱まってきた。3年間の販売金額推移をタイプ別でみると、コンパクトが45.5%減、一眼レフが69.3%減といずれも大幅に売り上げが減少した。一方、ミラーレス一眼は6.9%減と1桁減に踏みとどまっている。そのため、ソニー、キヤノン、ニコンなど主要カメラメーカーは、こぞってミラーレス一眼の開発や販売に力を入れている。
デジカメの主流が完全にミラーレス一眼にシフトする中、日本経済新聞は7月12日「ニコン、一眼レフカメラ開発から撤退 60年超の歴史に幕」と報じた。これに対しニコンは「憶測によるもので、当社が発表したものではありません」と否定。しかし「デジタル一眼レフカメラの生産、販売、サポートは継続」と反論しつつ、開発を終了させたこと自体は否定しなかった。ニコンでは既に一眼レフの開発は停止しているが、仮に一眼レフの開発を完全に終わらせたとしても全く不自然ではなく、むしろ当然の流れだ。
実売データが示す通り、レンズ交換型のカメラだけでなく、カメラ全体から見ても、市場をけん引しているのは完全にミラーレス一眼。ニコンでも一眼レフのラインアップを絞り込んでおり、現行製品は4機種のみだ。縮小市場にあって、販売金額でわずか1割にすぎない一眼レフの開発継続は、ニコンに限らずどんなメーカーでも困難だろう。見出しに取った「撤退」や「歴史に幕」という表現は、いずれも市場からの撤退を連想させる。カメラにあまり詳しくない向きからは、一部で「ニコンがカメラから撤退する」かのごとく、誤解して受け止められた。むしろそういう誤解を期待した「釣り見出し」であり、悪意を感じさせる、ある種の誤報ともいえる。
とはいえ、主戦場のミラーレス一眼市場で、ニコンが大苦戦していることもまた事実だ。販売台数シェアの争いは1位キヤノンと2位ソニーの間でし烈。ソニーは昨年、部材調達の不調から一部製品の受注を停止し大きくシェアを落とした。しかし、受注再開を受けこの6月は急回復。3位のOMデジタルソリューションズも、ソニー不在でシェアを伸ばしていたがソニーの復帰でシェアを落とし始めている。以下パナソニック、ニコン、富士フイルムと続く。フィルムカメラも含め一眼レフ全盛時代はキヤノン、ニコンの2強時代が長らく続いた。ところが、キヤノン、ソニーの2強の前に、ニコンは5位、6位のシェアに甘んじている状態だ。
ニコンがミラーレス一眼に本格参入したのは2018年。先立つ2011年には同社初のミラーレス一眼「Nikon 1」シリーズを発売したものの、メインストリームの扱いではなく短命に終わった。結局、ミラーレス一眼では先行するソニーに8年ほども後れをとった。現在のニコンがシェア低迷に苦しんでいる要因だ。しかし、フィルムカメラのスタイルを継承した「Z fc」が話題を呼び、流行の動画撮影に特化したVlogger向け製品「Z 30」をリリースするなど、同社の動きは活発になってきた。キヤノンとの2強時代であれば、いくら知識のない整理部の記者でも「ニコンがカメラから撤退することはあり得ない」と思ったことだろう。ミラーレス一眼であっても、トップシェアを脅かす迫力ある製品の継続的なリリースを期待したい。(BCN・道越一郎)