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日本とサウジ初の合作アニメが国際映画賞、サウジ制作会社CEOが喜び語る

時事ネタ

2022/07/29 11:30

 日本・サウジアラビア初の合作の長編アニメ映画『ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語』が、オランダ・アムステルダムで6月に開かれたセプティミウス映画祭で、セプティミウス賞・最優秀実験映画賞を受賞した。サウジのマンガプロダクションズと日本の東映アニメーションが共同で手がけた作品だ。サウジやアラブの映画が国際映画祭で実験映画賞を受賞するのは初。

セプティミウス賞授賞式に出席したマンガプロダクションズ・チーム

 受賞作品のエグゼクティブプロデューサーを務めた、サウジの制作会社、マンガプロダクションズのブカーリ・イサムCEOはBCNのインタビューに応え、受賞の感想を「大変うれしい。今までの痛みや苦しみが一気に喜びに変わった。2017年、マンガプロダクションズの社員は自分一人。そこからのスタートだった。世界的に認められる映画をつくるという夢がかなった」と語った。また「同時に責任も感じる。最初の映画で賞を頂いた。次の作品は、より良いものにしなければならない」と気を引き締める。

 「東京とサウジの首都リヤドの間で制作を進めた『ジャーニー』は、両国のメンバーが、多くのものを乗り越えて力を合わせたからこそできた作品」と話すイサムCEO。基本的なストーリーやキャラクターデザインのアイデアはサウジで行い、ストーリーの肉付けや実際のキャラクターデザインは日本のチームが主導した。しかし「サウジのチームも常に意見を出し、あらゆる点で話し合いながら共同で作業を進めた」という。サウジのチームは若者中心、日本のチームはベテラン中心と、世代を超えたプロジェクトでもあった。作品のユニークさに加え、こうしたダイナミックな制作体制も今回の受賞に結び付いた。
 
受賞の喜びを語る『ジャーニー』のエグゼクティブプロデューサーを務めた
マンガプロダクションズのブカーリ・イサムCEO

 『ジャーニー』の日本での封切りは2021年。コロナ禍での公開だったわけだが「リヤドと東京での共同作業だったこともあり、実はコロナになる前から頻繁にオンラインミーティングを行っていた。そのため、コロナ禍でのオンラインミーティングも全く違和感なく進めることができた」とイサムCEOは語る。制作過程でのコロナ禍の影響は最小限にとどまった。しかし、当初の2020年の公開予定は1年遅れになった。各国で映画館への入場制限などが広く行われていたからだ。

 日本のアニメは、サウジでも大人気だ。『ワンピース』『進撃の巨人』『鬼滅の刃』『呪術廻船』など、人気作品は日本と変わらない。とはいえアニメの世界は自分たちとは関係のない世界の話と受け止められている。しかし、今作『ジャーニー』は違った見方で受け入れられた。「自分たちの顔、服装、考え、文化がアニメになったと、喜んで観てくれた。特に子どもたち、若者たちからの評判がよかった」という。
 
『ジャーニー』日本公開時のポスター

 リヤドと東京の距離はおよそ8700Km。『ジャーニー』は、これだけ離れた場所にいても、世界に通じる映画がつくれることを証明した。マンガプロダクションズでは、次回作として、現在5~6本のアニメ作品を映画やテレビシリーズとして展開すべく準備を進めているという。「コンテンツが平和へのパスポートだと思う」と話すイサムCEO。これからも、文化も言葉も世代もアートスタイルも乗り越えて「メイド・イン・ジャパン・ウィズ・サウジ、メイド・イン・サウジ・ウィズ・ジャパン」のスタイルで両国共作のアニメ作品を世界に提供し続ける。(BCN・道越一郎)