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ビックカメラのSPAの試金石になるか ウォーターサーバー事業で「富士吉田工場」を竣工

経営戦略

2022/07/07 19:05

 ビックカメラが本格的なSPA(製造小売り)に向けた一歩を踏み出した。ビックカメラグループのビックライフソリューションは7月7日、ウォーターサーバーサービス事業の開始に向けた山梨県富士吉田市の採水工場の竣工式を実施した。ビックカメラの木村一義代表取締役社長は挨拶の中で「長年の懸案であった自社の製造・生産による水ビジネスへの参入で、本日、無事にスタートを切ることができた」と語った。

ビックライフソリューション富士吉田工場の竣工式の挨拶で語る
ビックカメラの木村一義代表取締役社長

生産能力は9.5Lボトルで月間80万本以上

 富士山のふもとの富士吉田市上吉田に7月7日に竣工したビックライフソリューション富士吉田工場は、敷地面積1万2674平方メートル、延べ床面積5029平方メートルの鉄骨造り2階建て。生産ラインと自動倉庫、事務所を備え、稼働時の従業員数は約10人を予定する。
 
ビックライフソリューション富士吉田工場
 
竣工式のテープカット。
向かって真ん中右がビックカメラの木村一義社長、左が堀内茂 富士吉田市長

 現在の生産ラインは1ラインだが、もう1ラインの増設が可能で、2ライン時の最大生産能力は9.5Lの宅配水用ボトルで月間80万本以上に及ぶ。工場では、富士山の玄武岩層をゆっくりと浸透する間にミネラルが程よく含まれた天然水をくみ上げ、工場内で製造した9.5Lのボトルに詰め込み、2本を1セットに梱包。宅配先のラベルを貼り付けて、自動倉庫から全国に出荷する。
 
富士吉田工場内のラインの様子

 今秋の本格稼働を目指している。「月1000件、2000件という数字ではなく、倍以上を目指したい」とビックライフソリューションの西山佳孝社長は意気込む。1ラインでフル稼働した際の単純計算だと20万世帯、2ラインで40万世帯に宅配できる。その数字にいかに近づけていけるかだろう。

ビックカメラグループのチャネルと顧客接点に強み

 サービスの申し込みはビックカメラやコジマなどグループの店頭で受け付ける予定。自社ECのビックカメラ.comでの販売は、現時点では想定していない。まずは店頭で丁寧に接客しながらサービスの認知を高めていく考えだ。

 ビックカメラの木村一義社長は「メーカーから仕入れた商品を販売するだけでは小売業の競争はますます激化する。競争を勝ち抜くには、製造小売りに進出していかなければならない」と語り、ウォーターサーバー事業をSPAへの足掛かりにする。

 だが、ウォーターサーバー事業でビックカメラは後発となる。既存の宅配水事業者との差別化はどこにあるのか。「ビックカメラグループの販売チャネルと、直接、お客様との接点を持っているのが最大の強み。安心、安全、健康、地球資源の問題を考えても、水へのお客様の関心は今後ますます高まる。そうした時に、ビックカメラのブランドへの安心も差別化につながる」と木村社長は自信を見せる。
 
ビックカメラの新規事業に期待を寄せる堀内茂 富士吉田市長

 竣工式には堀内茂 富士吉田市長も挨拶で水ビジネスへの潜在力をアピールした。「国内のミネラルウォーター市場は20年で4倍となり、3400億円を超える巨大産業になっている。宅配水に限ってもミネラルウォーター市場全体の5割強、1800億円を超える規模に達する。都道府県別生産量で山梨県は38%を占め全国1位を誇る。中でも富士吉田市の地下には30億トンの地下水が抱えられているので、安定した製品の供給が可能だ。ビックカメラの新規事業に大きな期待を寄せている」。

 竣工式の後に工場内も披露された。詳細は後日レポートするが、天然水を入れるためのボトルがその場で製造され、フィルターや熱加工された水を注入したボトルがラインに流れる様子を実際に間近で見ると、ビックカメラのSPAに向けた本気度がひしひしと伝わってきた。(BCN・細田 立圭志)