パフォーマンスだけでなくラインアップの多様性で選ばれる
AMD ARENAは欧米向けに作られた英語のコンテンツを日本語訳し、提供している。英語コンテンツは結構前から存在していたが、日本語コンテンツの数がそれなりに揃ってきたのは比較的最近だ。新型コロナの影響で、トレーニングのための店舗訪問がしずらくなり、急遽充実させることになった。こうした国内ならではの事情は他にもある。たとえば、グローバルで販売している製品の中には、日本でだけ販売できていない商品がある。これはAMD特有の事情ではなく、いろいろな外資系メーカーで起きている。良い商品であっても、簡単に市場に入れる訳ではない。
製造や販売のサイドから見れば、できるだけ「売れる」と確信が持てる商品を取り扱いたい。ユーザーも、国内に競合製品があれば、最初から日本企業が日本人の使いやすいように作った、日本語で説明が受けられる製品のほうが安心と考える。差別化され、付加価値を持った製品になっていないと、日本では参入が難しいのだ。
いまアメリカで販売しているAMDのラインアップの中で、日本でも展開したい製品をどうやって増やすか。土子氏がいま力を入れているのが、モビリティであり、マイクロソフトの提唱するモダンPCのカテゴリーだ。
「プロセッサーのパフォーマンスは、当社も競合も1年ごとに更新しているので、タイミングによって抜いたり抜かれたりする。PCメーカーには、パフォーマンスだけでなく、彼らがやりたいと考える領域に対してアプローチできる製品をわれわれがきちんと揃えておくことで、選んでもらえるようにならねばいけないと思っている」と土子氏。
PCメーカーにとっては、ハイエンド向けだけでなくミドルクラスにも、従来のハイエンドでしか提供できなかった機能やパフォーマンスを付加できるチャンスと捉えれば、国内では取り扱いのなかったAMD製の製品を採用することも選択肢になってくる。
AMDの認知を高めていく
最後にPCの店頭販売に関して、工夫の余地がないか聞いてみた。基本的に売り場をどうみせるかは販売サイドが決めるものであって、メーカーが口を出すことはない。ましてAMDはPC本体のメーカーではないので、PC売り場に対する提案も踏み込み過ぎないように気をつけている。そんな中なかでも気がつくこととして、土子氏は「パソコンで体験できることが少ない」と指摘する。商品は展示してあり、キーボード、マウス、ディスプレイに触れることができるが、そこでなにか操作して確かめようというものにはなっていないということだ。
もっとキーボードやマウスの使い勝手、ディスプレイの見やすさや美しさ、パソコンの性能などを実感できる体験があってもよいのではないか。たとえば、VRは実際に装着してアプリケーションを試すことで、パソコンの性能がどう関わるかが分かりやすい例と言える。PCゲームにしても、あえてスペックの低い古いPCも並べて操作できるようにすれば、最新モデルがいかに快適かすぐに伝わりそうだ。
土子氏は「一般消費者におけるAMDの認知は、3割弱でまだまだ高いとは言えない。もっと多くのユーザーに知ってほしい。それを考えるとやらなければならないことはたくさんある」と語る。
土子氏は直近の課題として認知の向上を挙げる。製品力を高めるだけでなく、AMD HEROESやAMD ARENAのようなツールも利用して着々と地歩を固める。ファンを一層惹きつけ、新たなファンを増やしていくのはもちろん、AMDを知らないユーザーや、そもそもパーツメーカーに興味や関心がないユーザーにも知ってもらい、安心して購入してもらえるブランドをこれからも目指していく。ここ数年で著しい成長をみせているAMDだが、まだまだ伸びしろは大きそうだ。(ライトアンドノート・諸山泰三)