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2021キャッシュレス決済 実態調査 キャッシュレス導入率は約7割

 キャッシュレス決済手段の手数料など関連コストの実態を把握するため、経済産業省が事業者を対象にインターネット上で調査を実施し、2021年6月に公表した「キャッシュレス決済 実態調査アンケート(7月19日・微修正反映済み)」を3回に分けて解説する。この調査の回答数は1189件、調査時期は21年1月27日~3月31日。

チャージ上限・利用上限と客単価に相関性あり?

 調査の対象となるキャッシュレス決済は、クレジットカード、デビットカード、プリペイドカード、電子マネー、コード決済などのカード・携帯電話・スマートフォン(スマホ)による支払い。導入状況については、クレジットカード、交通系電子マネー(Suica、PASMOなど)、非交通系電子マネー(iD、QUICPayなど)、コード決済の4つに分けている。クレジットカードは後払い、その他はサービスごとに、後払い、前払いプリペイド(事前チャージ)、即時決済のいずれかとなる。
 
各決済手段の導入状況の傾向分析

 回答した事業者のキャッシュレス導入率は72%。全体では約7割が対応済みとなったが、飲食業、小売業、観光業は高く、逆に、一次産業、製造業、建設業は低いなど、業種ごとに差が見られた。
 
キャッシュレス決済導入状況

 また、クレジットカード、PayPayなどのコード決済は半数以上の事業者が導入しているのに対し、電子マネー(交通系・非交通系)は4分の1程度にとどまった。
 
キャッシュレス決済導入状況(業種別・地域別)

 客単価別でみると、客単価が高いほど導入率が低くなり、「10万円以上」は19.7%にとどまった。しかし、クレジットカード決済に限ると「1000円未満」はキャッシュレス決済全体の70.8%に対して36.5%とほぼ半減し、コード決済の導入率(59.9%)を下回った。
 
キャッシュレス決済導入状況(客単価別)

 ただ、交通系電子マネー(21.2%)・非交通系電子マネー(26.3%)に比べると、クレジットカード決済導入率のほうが10ポイント以上高く、今回の調査で分かった各キャッシュレス決済手段の手数料率の分布と照らし合わせると、コード決済以外は事業者側の手数料負担が大きいといえるだろう。
 
各決済手段の手数料率の分布

 なお、クレジットカード決済の導入率は「客単価3000円以上~5万円未満」が最も高く、「客単価5000円以上、1万円未満」は74.0%と7割を超えた。客単価が中間だと導入率が高い要因には、交通系電子マネーはチャージ上限2万円、非交通系電子マネーは1回の決済上限がおおむね3万円(支払方法、サービスによって異なる)という利用制限が影響していると考えられる。
 
クレジットカード決済 導入状況(売上高別・客単価別)

 25年までにキャッシュレス決済比率40%の達成に向け、少額決済といわれる「1000円未満」と、現在は現金払いに相当する口座振替が主とみられる「10万円以上」の客単価の店舗・サービスで、クレジットカード、電子マネー(交通系・非交通系)、コード決済のいずれか、または全てについて、どのように導入率・利用率をそれぞれ高めていくか、官民を挙げた利用促進の取り組みが必要だろう。
 
茨城県警察で利用可能なキャッシュレス決済サービス

 口座振替は、スマホ決済サービスの請求書払いやデビットカード・デビットサービスへの置き換えが考えられ、東京都(警視庁)や茨城県(茨城県警察)は免許更新時の各種手数料の支払いにキャッシュレス決済の導入を開始した。税金や公共施設の利用料、警察手数料など、全国一律対応を期待したい。(BCN・嵯峨野 芙美)