縮小が続くカメラ市場。デジタルカメラ(デジカメ)とデジタルビデオカメラ(ビデオカメラ)を合わせた市場規模はどんどん小さくなっている。2018年5月の販売台数を1とすると、この5月は0.34。わずか3年の間に販売台数が66%も減少したことになる。内訳は、デジカメが0.34、ビデオカメラが0.35とほぼ同じだ。その中で、縮小幅が小さいカテゴリの製品がある。4K動画機能を搭載したデジカメだ。厳しい市場環境の中、この5月時点で0.82と孤軍奮闘の状態。昨年4月こそ、緊急事態宣言の発出と外出自粛、イベント中止などのあおりを受け、売り上げが大幅に落ち込んだが、夏以降急速に回復している。一方、フルHDにしか対応していないデジカメは、0.08と絶滅寸前だ。要するにこのところ市場から急速に消えていたのは、4K動画に対応しないデジカメだった、ということになる。
一方、4Kビデオカメラは0.42とふるわない。フルHDモデルに至っては0.23とさらに悪い。もともと、デジカメとビデオカメラの販売台数構成は、デジカメ7に対してビデオカメラ3の割合。この3年でも大きな変化はない。それでも、4K動画機能を搭載したデジカメだけが踏ん張っているとあれば、ビデオカメラ市場が、デジカメ市場に食われている、ともいえるだろう。
デジカメの差別化ポイントが写真ではなく動画になってきている。デジカメであっても、動画機能を前面に押し出したデジカメのリリースが目立っているからだ。
この1年で最も成功したのは、ソニーの「ZV-1」だ。昨年6月に発売したコンパクトデジカメだが、自撮りを多用しつつ動画で日常を記録して発信するVloggerをターゲットにした。カメラのカテゴリながら、動画撮影用途を前面に押し出している。
発売から1年が経過しても、この5月現在でコンパクトデジカメの販売台数シェア4.0%。平均単価(税別)が2万9000円のコンパクトデジカメ市場で、平均単価8万6900円のカメラが上位にランククインしていることからも、その人気がうかがえる。
最近では、6月に発売するパナソニックのレンズ交換型カメラ「GH5 II」も動画撮影機能を前面に押し出した製品だ。YouTubeライブで行った製品発表会では、話題のほぼ100%が動画撮影機能に関する内容だったのには驚いた。さらに、5月に青山にオープンした「LUMIX BASE TOKYO」は、主に動画クリエーターを主なターゲットにした多目的スペース。写真撮影に比べ、周辺機器も多く、機材構成も複雑になるため、動画向け施設というイメージが強い。
実際、ライブ配信や録画などもできる簡易スタジオも備えている。動画クリエーターのための施設という印象だ。この1年、デジカメ市場で同社のシェアは年間を通して4%前後で低迷しており、動画に振り切ることで難局を乗り切ろうとしているようだ。
レンズ交換型デジカメで動画撮影が本格化したのは、キヤノンが2008年に発売したフルサイズ一眼レフ「EOS 5D Mark II」から。大きな撮像素子と高性能なレンズの組み合わせで、比較的安価に本格的な動画が撮影できると話題になった。しかし、静止画向けのカメラだけでは、動画撮影時に不便な点も多かった。
あれから15年余り。腑に落ちないものの、いまだにフィルム時代の一眼レフの形を継承したボディで動画を撮影するというスタイルは、あまり変わっていない。一方で、ビデオカメラは縮小が続いているという妙な現象も起こっている。
デジカメの動画用途が注目されているのは、YouTuberなど動画配信を行う人たちが増えたからだともいわれる。高画質な映像コンテンツを作りたいというニーズも高まっているようだ。玄人はだしの機材を使って動画を制作しているYouTuberも多い。さらに、コロナ禍の影響だ。画像だけで勝負しなければならない写真は、撮影場所やタイミング、何を被写体にするかといった、外部要因の重要性が高い。気軽に出かけたり旅行したりしづらい状況では、撮影が難しいという事情もある。動画なら、自宅での撮影であっても、工夫次第では充実したコンテンツを製作することもでき、自分自身を被写体にすることもできる。とはいえ、撮影後には編集という、とても重い作業が待っている。果たしてニューノーマル社会で、動画がデジカメの窮地を救うことはできるのだろうか。(BCN・道越一郎)
※6月9日追記:当初「EOS 5D」に動画機能が搭載されたとしていましたが、「EOS 5D Mark II」の誤りでしたので訂正いたしました。
一方、4Kビデオカメラは0.42とふるわない。フルHDモデルに至っては0.23とさらに悪い。もともと、デジカメとビデオカメラの販売台数構成は、デジカメ7に対してビデオカメラ3の割合。この3年でも大きな変化はない。それでも、4K動画機能を搭載したデジカメだけが踏ん張っているとあれば、ビデオカメラ市場が、デジカメ市場に食われている、ともいえるだろう。
デジカメの差別化ポイントが写真ではなく動画になってきている。デジカメであっても、動画機能を前面に押し出したデジカメのリリースが目立っているからだ。
この1年で最も成功したのは、ソニーの「ZV-1」だ。昨年6月に発売したコンパクトデジカメだが、自撮りを多用しつつ動画で日常を記録して発信するVloggerをターゲットにした。カメラのカテゴリながら、動画撮影用途を前面に押し出している。
発売から1年が経過しても、この5月現在でコンパクトデジカメの販売台数シェア4.0%。平均単価(税別)が2万9000円のコンパクトデジカメ市場で、平均単価8万6900円のカメラが上位にランククインしていることからも、その人気がうかがえる。
最近では、6月に発売するパナソニックのレンズ交換型カメラ「GH5 II」も動画撮影機能を前面に押し出した製品だ。YouTubeライブで行った製品発表会では、話題のほぼ100%が動画撮影機能に関する内容だったのには驚いた。さらに、5月に青山にオープンした「LUMIX BASE TOKYO」は、主に動画クリエーターを主なターゲットにした多目的スペース。写真撮影に比べ、周辺機器も多く、機材構成も複雑になるため、動画向け施設というイメージが強い。
実際、ライブ配信や録画などもできる簡易スタジオも備えている。動画クリエーターのための施設という印象だ。この1年、デジカメ市場で同社のシェアは年間を通して4%前後で低迷しており、動画に振り切ることで難局を乗り切ろうとしているようだ。
レンズ交換型デジカメで動画撮影が本格化したのは、キヤノンが2008年に発売したフルサイズ一眼レフ「EOS 5D Mark II」から。大きな撮像素子と高性能なレンズの組み合わせで、比較的安価に本格的な動画が撮影できると話題になった。しかし、静止画向けのカメラだけでは、動画撮影時に不便な点も多かった。
あれから15年余り。腑に落ちないものの、いまだにフィルム時代の一眼レフの形を継承したボディで動画を撮影するというスタイルは、あまり変わっていない。一方で、ビデオカメラは縮小が続いているという妙な現象も起こっている。
デジカメの動画用途が注目されているのは、YouTuberなど動画配信を行う人たちが増えたからだともいわれる。高画質な映像コンテンツを作りたいというニーズも高まっているようだ。玄人はだしの機材を使って動画を制作しているYouTuberも多い。さらに、コロナ禍の影響だ。画像だけで勝負しなければならない写真は、撮影場所やタイミング、何を被写体にするかといった、外部要因の重要性が高い。気軽に出かけたり旅行したりしづらい状況では、撮影が難しいという事情もある。動画なら、自宅での撮影であっても、工夫次第では充実したコンテンツを製作することもでき、自分自身を被写体にすることもできる。とはいえ、撮影後には編集という、とても重い作業が待っている。果たしてニューノーマル社会で、動画がデジカメの窮地を救うことはできるのだろうか。(BCN・道越一郎)
※6月9日追記:当初「EOS 5D」に動画機能が搭載されたとしていましたが、「EOS 5D Mark II」の誤りでしたので訂正いたしました。