マクドナルドのトレイ、“茶”と“緑”で分かれているワケ
【なぐもんGO・77】 普段、何気なく利用していると気が付かないかもしれないが、実はマクドナルドのトレイは1色ではない。大きく分けて茶色のトレイと、鮮やかな緑色のトレイがあるのだ。単純に考えれば1色の方が効率的だが、世界的な大企業が意味もなくコストをかけているはずがない。一体、なぜ茶色と緑色が用意されているのか。直接、聞いてきた。
同社マーケティング本部 ナショナルマーケティング部の大湯緑氏に尋ねると、あっさりと回答が得られた。この新色トレイの正体はやはり「役目を終えたハッピーセットのおもちゃ」なのだという。素材の約10%におもちゃ由来の樹脂が利用されており、循環型社会の実現を目指す姿勢が目に見える形になっている。
ハッピーセットは、マクドナルドが栄養バランスや楽しさを追求したメニュー。子どもたちの好奇心を刺激するおもちゃや本などと食事をセットにすることで、家族の幸せと子どもたちの健全な成長を支えることが狙いだ。人気メニューで、年間1億食販売している。保護者の中には「もう遊ばなくなったおもちゃが家に溜まってしまう」といった悩みを抱える人もいるそうだ。
こうした声に加え、持続可能な社会の実現に向けて政府主導でプラスチックを試験的に回収していたことが後押しになり、18年からは全国でハッピーセットのおもちゃの回収を開始。最初は春休み期間のみの実施だったが、好評だったことから19年には春、夏、冬の長期休みまで拡大した。21年には通年で回収することを決定した。20年までに回収したおもちゃは約740万個に上る。
トレイに再生するにあたって、工場では集められたおもちゃをまず粉砕する。その後、磁石、水、風をつかって不要なものを取り除き、最後に残った樹脂をトレイなどに再生利用する。緑色に着色するのはリサイクルやエコをイメージしたとのこと。おもちゃを工場に運ぶ際も物流の帰り便を使うという、エコを意識したプロジェクトだ。ちなみに、遊ばなくなったおもちゃを通年で回収するために設置するボックスも、回収したハッピーセットのおもちゃを素材に使っている。
ここで気になるのは、トレイを構成する残りの90%の素材は一体何なのか。大湯コンサルタントによると、「回収された白物家電のプラスチック」。白物家電を使っている理由は、「着色がしやすいから」だそうだ。さらには元来の茶色のトレイも、リサイクル材を使っているのだという。トレイなどに使われなかった玩具の素材は、白物家電に生まれ変わっているとのこと。まさしく循環が生まれていた。
日本の先進的な分別技術を使用していることから、世界に先駆けた取り組みでもあり、ヨーロッパなどの一部の地域では日本を参考に実証実験を行っている。再生の過程には改善を重ねており、「より地球への負担が少ない方法を開発しつづけている」という。
通年で回収するようになれば、徐々に認知度も上がり回収量も増えていくだろう。ただ、回収できたとしても使い道が限られていては“宝の持ち腐れ”になってしまう。そうならないよう、同社ではプラスチックの使い道を模索しつづけており、今後も挑戦を続ける方針だ。プラスチックを水素にリサイクルして発電し、マックデリバリーの電動バイク用エネルギーにする実証実験も行っている。
将来、ハッピーセットのおもちゃが新たなハッピーセットのおもちゃに生まれ変わる日も、やってくるかもしれない。循環型社会の実現は一朝一夕にいかないが、こうした取り組みを通して、限られた資源を大切にする意識が少しずつ醸成されていくのかもしれない。(BCN・南雲 亮平)
2020年までに約740万個のハッピーセットのおもちゃを回収
今回注目したのは、緑色のトレイ。元から使われていた茶色に加えて2018年に登場した“新色”だからだ。初年度の生産枚数は10万枚とのこと。以来、少しずつ数を増やしている。18年と言えば、同社がハッピーセットのおもちゃを回収し始めた時期と重なる。消えたおもちゃたちはどこへ行ったのか。同社マーケティング本部 ナショナルマーケティング部の大湯緑氏に尋ねると、あっさりと回答が得られた。この新色トレイの正体はやはり「役目を終えたハッピーセットのおもちゃ」なのだという。素材の約10%におもちゃ由来の樹脂が利用されており、循環型社会の実現を目指す姿勢が目に見える形になっている。
ハッピーセットは、マクドナルドが栄養バランスや楽しさを追求したメニュー。子どもたちの好奇心を刺激するおもちゃや本などと食事をセットにすることで、家族の幸せと子どもたちの健全な成長を支えることが狙いだ。人気メニューで、年間1億食販売している。保護者の中には「もう遊ばなくなったおもちゃが家に溜まってしまう」といった悩みを抱える人もいるそうだ。
こうした声に加え、持続可能な社会の実現に向けて政府主導でプラスチックを試験的に回収していたことが後押しになり、18年からは全国でハッピーセットのおもちゃの回収を開始。最初は春休み期間のみの実施だったが、好評だったことから19年には春、夏、冬の長期休みまで拡大した。21年には通年で回収することを決定した。20年までに回収したおもちゃは約740万個に上る。
トレイに再生するにあたって、工場では集められたおもちゃをまず粉砕する。その後、磁石、水、風をつかって不要なものを取り除き、最後に残った樹脂をトレイなどに再生利用する。緑色に着色するのはリサイクルやエコをイメージしたとのこと。おもちゃを工場に運ぶ際も物流の帰り便を使うという、エコを意識したプロジェクトだ。ちなみに、遊ばなくなったおもちゃを通年で回収するために設置するボックスも、回収したハッピーセットのおもちゃを素材に使っている。
ここで気になるのは、トレイを構成する残りの90%の素材は一体何なのか。大湯コンサルタントによると、「回収された白物家電のプラスチック」。白物家電を使っている理由は、「着色がしやすいから」だそうだ。さらには元来の茶色のトレイも、リサイクル材を使っているのだという。トレイなどに使われなかった玩具の素材は、白物家電に生まれ変わっているとのこと。まさしく循環が生まれていた。
リサイクル意識のきっかけに
マクドナルドは、おもちゃが生まれ変わったトレイを通して、「不要なものも、役に立つものに生まれ変わる」というメッセージを伝えようとしている。限りある資源を大切に思う気持ちを育むことで、循環型社会の実現に一歩近づけようという試みだ。子どもたちも、自分が持っていた玩具が具体的にどのようなものに生まれ変わるのか知ることで、実感を持って学ぶことができる。日本の先進的な分別技術を使用していることから、世界に先駆けた取り組みでもあり、ヨーロッパなどの一部の地域では日本を参考に実証実験を行っている。再生の過程には改善を重ねており、「より地球への負担が少ない方法を開発しつづけている」という。
トレイの底のメッセージ
記事を読まずとも、すでに緑色のトレイがハッピーセットのおもちゃから生まれたと知っている人もいるだろう。緑色のトレイの底面には「ぼくはハッピーセットのオモチャから、うまれたよ!」というメッセージが記載されているからだ。普段はシートが敷かれた上に食品をのせて提供されるので、トレイだけをまじまじと見る機会はほとんどない。最後に返却するときにチラッと見える程度だが、注意深い人やマクドナルドファンなら気が付くはずだ。もちろん、ハッピーセットのおもちゃの回収ボックスでも再生先を伝えている。通年で回収するようになれば、徐々に認知度も上がり回収量も増えていくだろう。ただ、回収できたとしても使い道が限られていては“宝の持ち腐れ”になってしまう。そうならないよう、同社ではプラスチックの使い道を模索しつづけており、今後も挑戦を続ける方針だ。プラスチックを水素にリサイクルして発電し、マックデリバリーの電動バイク用エネルギーにする実証実験も行っている。
将来、ハッピーセットのおもちゃが新たなハッピーセットのおもちゃに生まれ変わる日も、やってくるかもしれない。循環型社会の実現は一朝一夕にいかないが、こうした取り組みを通して、限られた資源を大切にする意識が少しずつ醸成されていくのかもしれない。(BCN・南雲 亮平)