【家電コンサルのお得な話・44】 皆さんは「売り筋」と「売れ筋」の違いをご存知だろうか? 最近、ネットメディアなどでは、この違いを理解せずに使っていると思われるケースが散見される。新入社員も覚えておいて損のない用語で、覚え方は簡単だ。「売り(たい)筋」か「売れ(ている)筋」かの違い。たった一文字違うだけで、意味は大きく異なる。
売り筋とは、一言でいえば「販売店が売っていくべき商品」のこと。例えば、家電量販店なら「定番」と呼ばれる商品の優先販売ランクがあり、売り場に展示されている全ての商品の一品ごとに売るべき序列が本社や本部によって定められている。
この定番の序列は、メーカー商談担当者と量販商品部のバイヤーによる商談で決められるのだが、当然、「売るべき順位が高い」ということは、家電量販店にとっては儲かる商品であり、条件がいい(値入率が高い)商品ということである。
そのため、来店客の目に入りやすい場所や位置に並べて、POPなどで目立つように展示したり、販売員が接客でお勧めしたりするのが一般的な販売方法になっている。
これに対し、「売れ筋」とは「市場全体で売れている、消費者のニーズが高い商品」のことである。わかりやすく説明すれば、消費者からの指名買いが多いため、放って置いても売れる商品である。そのため、メーカーも商談でわざわざいい条件を出す必要がない。販売店にとっても、大きく儲かる商品ではないが、「どれだけ数を確保できるか?」ということが勝負になり、規模の大きな企業が有利な状況になりやすいという特徴もある。
いずれにせよ、1社だけの販売店やネット通販が「今売れている商品」としてアピールしているのを目にした人もいると思うが、これは本来は「今売りたい商品」と表記しなければおかしい。
実際、以前は「売れ筋No.1、2、3」という表示を店頭やネットでよく目にしたが、この訴求方法は実際には販売店が売っていきたい「売り筋」に用いられることが多かったことを受けて、2008年6月に公正取引委員会(現在は消費者庁に移管)が「No.1表示に関する実態調査報告書」を出し、景品表示法上の考え方を整理した。
この指針を示してからは「おすすめNo.1、2、3」という表現がよく使われるようになり、「売れ筋ランキング」という表記は、今ではネット専業企業のサイトなどで目にする程度となっている。
ネット専業企業の売れ筋ランキングが販売台数・金額データに基づいた正しい運用で、実際に売れた商品を反映しているかどうかはわからないが、少なくとも「検索数」などによるランキングは「売れ筋」とはいえない。売れ筋という表示には、前述のような経緯があるため、注意して購入を決めていただければと思う。
なお、筆者が寄稿しているBCNでは「BCNランキング」を発表しているが、これは家電量販店やネット企業など複数社から集計した実際の販売データ(POSデータ)に基づいた客観データである。正真正銘の「売れ筋ランキング」「今売れている商品」を示しているので安心していただきたい。
最後に誤解のないように言っておくが、「売り筋」といっても、販売店が儲けを狙っただけの商品とは限らない。基本的に機能や操作性に優れた商品が選定されているため、よく比較検討して自分の生活にあった商品を選んでいただければと思う。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計しているPOSデータベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。
■Profile
堀田泰希
1962年生まれ。大手家電量販企業に幹部職として勤務。2007年11月、堀田経営コンサルティング事務所を個人創業。大手家電メーカー、専門メーカー、家電量販企業で実施している社内研修はその実戦的内容から評価が高い。
公正取引委員会も「景品表示法」で指針
「売り筋」と「売れ筋」のどちらも、基本的には販売店やメーカー販社がよく用いる言葉で、特に「売り筋」の方は、一般消費者はあまり耳にしたことがないかもしれない。売り筋とは、一言でいえば「販売店が売っていくべき商品」のこと。例えば、家電量販店なら「定番」と呼ばれる商品の優先販売ランクがあり、売り場に展示されている全ての商品の一品ごとに売るべき序列が本社や本部によって定められている。
この定番の序列は、メーカー商談担当者と量販商品部のバイヤーによる商談で決められるのだが、当然、「売るべき順位が高い」ということは、家電量販店にとっては儲かる商品であり、条件がいい(値入率が高い)商品ということである。
そのため、来店客の目に入りやすい場所や位置に並べて、POPなどで目立つように展示したり、販売員が接客でお勧めしたりするのが一般的な販売方法になっている。
これに対し、「売れ筋」とは「市場全体で売れている、消費者のニーズが高い商品」のことである。わかりやすく説明すれば、消費者からの指名買いが多いため、放って置いても売れる商品である。そのため、メーカーも商談でわざわざいい条件を出す必要がない。販売店にとっても、大きく儲かる商品ではないが、「どれだけ数を確保できるか?」ということが勝負になり、規模の大きな企業が有利な状況になりやすいという特徴もある。
いずれにせよ、1社だけの販売店やネット通販が「今売れている商品」としてアピールしているのを目にした人もいると思うが、これは本来は「今売りたい商品」と表記しなければおかしい。
実際、以前は「売れ筋No.1、2、3」という表示を店頭やネットでよく目にしたが、この訴求方法は実際には販売店が売っていきたい「売り筋」に用いられることが多かったことを受けて、2008年6月に公正取引委員会(現在は消費者庁に移管)が「No.1表示に関する実態調査報告書」を出し、景品表示法上の考え方を整理した。
この指針を示してからは「おすすめNo.1、2、3」という表現がよく使われるようになり、「売れ筋ランキング」という表記は、今ではネット専業企業のサイトなどで目にする程度となっている。
ネット専業企業の売れ筋ランキングが販売台数・金額データに基づいた正しい運用で、実際に売れた商品を反映しているかどうかはわからないが、少なくとも「検索数」などによるランキングは「売れ筋」とはいえない。売れ筋という表示には、前述のような経緯があるため、注意して購入を決めていただければと思う。
なお、筆者が寄稿しているBCNでは「BCNランキング」を発表しているが、これは家電量販店やネット企業など複数社から集計した実際の販売データ(POSデータ)に基づいた客観データである。正真正銘の「売れ筋ランキング」「今売れている商品」を示しているので安心していただきたい。
最後に誤解のないように言っておくが、「売り筋」といっても、販売店が儲けを狙っただけの商品とは限らない。基本的に機能や操作性に優れた商品が選定されているため、よく比較検討して自分の生活にあった商品を選んでいただければと思う。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計しているPOSデータベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。
■Profile
堀田泰希
1962年生まれ。大手家電量販企業に幹部職として勤務。2007年11月、堀田経営コンサルティング事務所を個人創業。大手家電メーカー、専門メーカー、家電量販企業で実施している社内研修はその実戦的内容から評価が高い。