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5G時代を支える“縁の下の力持ち”、ミリ以下の世界を覗く技術

経営戦略

2021/03/25 18:00

 「高速・大容量・低遅延通信!」とうたわれる第5世代移動通信システム(5G)。対応エリアの広さや電波の種類など、発信側ばかり注目されているが、受信側の技術も欠かせない。特に重要なパーツの一つが、スマートフォン(スマホ)の“アンテナ”。徐々に高周波数化する電波に合わせ、設計も微細になっている。この1mm以下の単位で正確さが求められるパーツの開発を支えているのが「マイクロスコープ」だ。商品を提供するサードウェーブと、現場で活用する埼玉大学理工学研究科の木村雄一准教授に、いかに活躍しているのか聞いてみた。

左から木村准教授、サードウェーブの原田氏、藤本氏
(オンライン取材だったので写真は後日撮影)

──マイクロスコープとは、どのような機材なのでしょうか。

木村准教授(以下、敬称略) 簡潔にいえば、高精度なデジタルカメラを搭載した顕微鏡です。カメラで映したものを拡大し、液晶ディスプレイなどの画面に表示することができます。

藤本氏(以下、敬称略) 教育の現場や研究機関での動植物の観察などで使われていますね。木村准教授はどのような時に使用するのでしょうか。

木村 私たちの研究では品質チェックで活用しています。
 
木村准教授が使用しているマイクロスコープ「UM20」

──研究されているアンテナはかなり小型なのですね。

木村 はい、スマホなどに搭載されている平面アンテナです。プリント基板に1mm以下の単位で印刷して作っており、緻密な調整が欠かせません。そこで、マイクロスコープを使って寸法を測っています。

研究している中でも昨今話題になっている5Gに対応したアンテナは、4Gなど従来の電波に比べて波長が短い高周波数帯を利用するので、アンテナにも微細な設計が求められます。マイクロスコープでないと、細かく確認するのは難しいです。

──マイクロスコープの導入前はどのように確認していたのでしょう。

木村 拡大鏡ルーペを使っていました。対象物が“平面”アンテナとはいえ、パーツですから段差があったり、暗かったり、ルーペには可動域の限界があったりと、今思えば制限が多かったですね。

原田氏(以下、敬称略) 大きく見るだけなら普通の顕微鏡で足りると思いますが、現在、木村准教授が使用しているマイクロスコープUMシリーズ(UM20、UM18)は、外部のモニターにHDMIで映像を映し出せるのが特徴です。複数人と情報を共有しながら研究を進める場合は、有用な機能になるでしょう。倍率は、UM20が13~140倍、UM18が12~132倍。それぞれ、別売りの10倍レンズも装着可能です。

藤本 加えて、遠距離から被写体をクリアに拡大表示できる点も強みです。被写体とカメラの間に十分なスペースを確保することができる上、LEDで照らすなど、見やすいように工夫を凝らしています。
 
UM18

──ルーペとは使い勝手が全く異なるのですね。

木村 マイクロスコープを使っていて便利に感じたのは、オートフォーカス機能です。「一回焦点合わせ」モードで使っているので、一度焦点を合わせれば被写体から外れることがないので見やすい。ルーペのように毎回、焦点を合わせる手間が省けて助かります。

藤本 もう一つ、「連続焦点合わせ」モードも搭載していますが、こちらは被写体が動いても自動的に焦点を合わせる機能で、生物の観察などに用いられます。

木村 画質も奇麗ですね。手軽にくっきり、はっきり見えます。

原田 画質にもこだわり、200万画素のCMOSセンサーを採用しています。出力はフルHDで、1秒間に60フレームレートとコマ数が多いので、滑らかな映像を表示できます。また、ホワイトバランス、露出、明るさなどの細かな調節が可能です。
 
木村准教授

──調整時は本体を操作するのでしょうか。

木村 普段、UM18を使うときはリモコンで操作しています。ズームやフォーカス、ホワイトバランスなども離れた位置から操作できるので、メンバーたちと一緒にモニターを見ながら調節できます。

藤本 もう一方のUM20は、PCとも接続可能です。USB 3.0端子を通して、WindowsやAndroidタブレット端末、Mac OSにも対応します。

木村 UM20なら以前、Androidスマホとも接続しました。手元で確認するなら、小さなディスプレイとして使えそうです。スマホのスクリーンショット機能を使えば、画像もすぐに保存できます。
 
サードウェーブ藤本氏

──スマホとも接続できると場所を選ばず、使い勝手が良さそうですね。ところで、UMシリーズはどちらの商品なのでしょうか。

原田 はい、UMシリーズは台湾のマイクロスコープ専業メーカーであるマイクロリンクス テクノロジー社製の商品です。世界46カ国で活躍し、信頼を集めています。もちろん、当社で扱う商品の品質チェックは細かくしておりますので、品質には自信があります。

木村 日本製のマイクロスコープは、性能は高いのですがその分コストもかかります。その点、UMシリーズはリーズナブル。それでいて使い勝手もいいので、いわゆる“コスパ”が高いといって差し支えないでしょう。

藤本 木村准教授が使用しされているUM20が9万6800円(税込)、UM18が7万4800円(税込)と、どちらも先生の判断で決済しやすい税込10万円以下に抑えています。さらに、UMシリーズには、UM20とUM18のほか、UM10とUM12があります。

UM10は、PCとHDMIの同時出力に対応するほか、MicroSDカードに映像を記録することができます。直販価格は12万9800円(税込)ですが、それに見合った性能といえます。

UM12は、USBケーブル1本をPCに接続するだけで使える商品です。10倍レンズには非対応ですが、12~320倍まで拡大可能※、500万画素で価格は4万4000円(税込)と手頃です。ただ、1秒間に最大30フレームの描写や、モニターへの出力ができないなど、価格とトレードオフな性能もあります。なお、いずれの製品も倍率はモニターの大きさによって異なります。
 
サードウェーブ原田氏

──幅広いラインアップですね。

藤本 幅広いニーズに応えるため、スペックと価格のバランスを考慮しながらそろえています。

──5G時代の到来とも言われるなか、マイクロスコープの重要性はますます高まるのでしょうか。

木村 平面アンテナを研究した結果として、コンパクト化によるスマホ本体の小型化や、より安定した通信につながる可能性もありますから、ますますマイクロスコープは活躍するでしょう。

3月末まではさらにお得に

 毎日、何気なく通信しているスマホの中には、さまざまなパーツが搭載されている。電波を受信するアンテナもその一つ。研究成果をもとに日々進化を重ね、スマホの使い勝手向上に貢献している。今後、幅広くアンテナが研究されることになれば、需要も増してくる。そうした時には、性能はもちろん、価格の面にも配慮した製品があると参加しやすいはずだ。

 3月末までは期末の予算消化に合わせて、サードウェーブのウェブ販売において格安の価格でUMシリーズを提供している。UM10が税込み9万9000円、UM12が4万円、UM18が7万円、UM20が9万円と、先生なら申請なしの校費で購入できるよう税込み10万円以内におさめている。今回は第1弾で、好評なら第2弾を検討するとしているが、重要な機材をお得に用意するチャンスだ。