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高額転売に歯止めなるか、メルカリが考える自由取引と規制の線引き

販売戦略

2021/01/28 19:00

 フリマアプリ「メルカリ」を運営するメルカリは1月27日に外部有識者とともに策定した「マーケットプレイスの基本原則」を公開した。発表会では2020年7月30日に設立した外部有識者で構成される「マーケットプレイスのあり方に関する有識者会議」の議論の内容が明かされた。

メルカリが「マーケットプレイスのあり方に関する有識者会議」
にもとづく基本原則を公開

 「マーケットプレイスのあり方に関する有識者会議」設立のきっかけになったのは、新型コロナウイルス感染拡大を受けて発生したマスクや消毒液の高額転売だ。一次流通で品薄だったこともあり、二次流通の巨大プラットフォームであるメルカリでは買い占めたユーザーによる高額転売が多発した。

 メルカリジャパンCEOの田面木宏尚氏は「メルカリは必要なモノが必要な人のもとに届き、廃棄の少ない循環型社会を目指している」というビジョンを説明。透明性の高いオープンなマーケットプレイスとして運営してきたが、コロナ禍の中でさまざまな課題が浮き彫りになったという。

 今回の「マーケットプレイスの基本原則」の背景にあるのは、需給のマッチングが最大限に発揮されるために自由な取引を尊重する一方で、需給のバランスが著しく崩れているケースはマーケットプレイスとして放置できないということだ。
 
自由取引を尊重する一方で“需給のバランスが著しく崩れているケース”には対処が必要

 例えば、マスクの高額転売は供給の逼迫により、必要なモノが届けられるべき人に届けられず、メルカリを経由したことでそれがさらに遅れる可能性が生じた。結局、同社は3月13日にマスクの出品を全面的に禁止。異例の対応をとることになった。

 今回の基本原則では、マスクのように“対応をとるべき”対象は何か、ということに焦点があてられている。有識者会議の結果、打ち出したのは「安全であること」「信頼できること」「人道的であること」の三つだ。まず、安全とは「取引の当事者および取引の結果影響を受ける第三者の安全」を指す。その対象として法令に違反する取引だけでなく、緊急事態において生命や健康の維持に関わる必需品の取引にまで範囲を広げた。
 
 

 次に信頼だが、これは買い手が商品や取引に関する正確な情報を提供されているか、ということだ。商品の詳細が分からない、情報を偽装している、返品に応じない、手元に商品がないのに出品する、販売を目的としない出品、などのケースが該当する。これはマスクというより、昨年品薄が続いたNintendo SwitchやPlayStation 5の例が想像できる。
 

 最後の人道的であることは、人種・民族・宗教・性別などによる差別を助長する取引や行為、誹謗中傷や脅迫行為を是としないということだ。取引自体はもちろんだが、それに至るまでのコメントのやりとりなども含めて、個人の価値観や立場を尊重するという考えを改めて示した形だ。
 

 では、具体的にメルカリはどう動くのか。一つめに掲げたのは「一時流通の供給状況の確認と出品規制」だ。コロナ禍でいえば、マスクや消毒液、ハンドソープなどが顕著な例。「需給のバランスが著しく崩れているかどうか」を調査し、もし崩れているなら規制するということを明言した。
 

 二つめは「購入判断に必要な情報提供」だ。これは購入したいと思った商品が意図せず急騰していた場合のユーザー保護を目的とする。昨年のゲーム機の例では新品価格より中古価格が高いなどの現象が発生していた。メルカリは一次流通企業との連携や価格アラート機能を実装することで、これを防止したい考えだ。
 

 今回の方針は新たなルールの策定とは異なる。田面木CEOは「基本原則はマーケットプレイスに参加するすべての人に共有されるべき基本的な考え方。広く浸透させていくことが重要だ」とコメント。メルカリにとどまらず、競合となるプラットフォーマーとも連携していくと語った。