ドコモと三菱UFJ銀行が金融事業で包括的提携と報道 ドコモの狙いは?
国内通信事業者で契約件数最多のNTTドコモと、3大メガバンクの一つ、三菱UFJ銀行が金融事業での包括提携に向けて検討しているという。「通信と金融の融合」を掲げるKDDIが2020年2月以降、金融・決済サービスのブランド名を「au PAY」に統一し、Zホールディングス、Zフィナンシャル、ソフトバンクの3社が20年秋以降順次、これまで名称がバラバラだった金融関連サービスを「PayPay」ブランドに統一すると発表しているため、今回の提携発表そのものには驚かないが、提携先の金融機関が予想外だった。KDDIと三菱UFJ銀行と共同出資したインターネット銀行「auじぶん銀行」が、業界最低水準の住宅ローンで攻勢をかけているからだ。
家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、2020年1~12月の累計(20年年間)で、スマートフォン全体(スマホ)のグループ単位のキャリア別販売台数は、KDDI(au+UQ mobile)、ソフトバンク(SoftBank+Y!mobile)、ドコモ、その他・SIMフリー、楽天モバイルの順。1位のKDDIと2位のソフトバンクは0.5ポイントの僅差となっている。楽天モバイルとドコモがオンライン申込比率がかなり高いとみても、ドコモは家電量販店チャネルで、KDDI(au+UQ mobile)、ソフトバンク(SoftBank+Y!mobile)にやや差をつけられていた。
20年8月掲載記事で、記者は「1~2年以内にドコモの銀行というべき新たな銀行の立ち上げがあるのか、資産運用を敬遠する自社のユーザー層にあわせ、ソフトバンクやKDDIの後追いはせずに、今後も他社との提携のみにとどめるのか、今後の動向に注目だ」と書いた。
今回の包括提携に基づき、ドコモ契約者を優遇する専用口座の開設、住宅ローンの共同実施のほか、三菱UFJ銀行の口座から口座振替で支払うとドコモの共通ポイント「dポイント」を付与するサービスを検討しているという。共同出資の新会社を立ち上げ、金融サービス仲介業に参入することも視野に入れる。
住宅ローンに関しては、21年3月開始のau・じぶんでんき・auじぶん銀行の住宅ローンのセット利用で、auじぶん銀行の住宅ローン金利を引き下げる「au金利優遇割(auモバイル優遇割+じぶんでんき優遇割)」のドコモバージョンが登場しそうだ。ドコモは現在、電気サービスを提供していないので、適用条件が一つ減るか、同時にドコモか三菱UFJ銀行が電気サービスを開始するだろう。
楽天モバイルは、楽天グループサービス利用者還元の一つとして、楽天でんき・楽天ガス(都市ガス)のセット利用で楽天ポイントを通常よりも多く付与するサービスを20年10月に開始している。条件はそれぞれ若干異なるものの、クレジットカードあるいは共通ポイントを軸に、「生活に欠かせないサービスの契約先を一つにまとめるとお得」という方向に進みつつある。
ドコモ側の狙いは、若者や高齢者に多いといわれるクレジットカード否定派や事情によりクレジットカードを持てない層のドコモへの取り込み・引き止め、キャリアショップの収益化・店舗統廃合にあるだろう。現時点では、ドコモは、ソフトバンクやKDDIの完全な後追いをしないと分かった。
通信×金融を推し進め、徹底的に他社に対抗するなら、いずれかの銀行を買収して「ドコモ銀行・NTT銀行」というべき、スマホファーストのオンライン銀行をドコモ自身が立ち上げるべきだといえる。しかし、三菱UFJ銀行と提携するだけでも、auモバイル優遇割と同等の優遇、ドコモ回線とセット利用を前提とした住宅ローン金利引下げは可能になり、ドコモからauへのMNP、顧客流出抑止が可能になると判断したようだ。
実際には、発表済みの若者向けの新料金プラン「ahamo」の開始にあわせた新銀行の立ち上げや、別の金融機関との包括的提携なのかもしれない。正式発表を待ちたい。(BCN・嵯峨野 芙美)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。
「ドコモ銀行だけがない……」
KDDI(au)、ソフトバンク(PayPay・LINE)に比べ、ドコモは非通信・スマートライフ分野で一番伸びしろがあると思われる、金融・コマースに遅れを取っていた。ただ、15年に名称一新して以来、クレジットカード事業は好調で、その理由は、毎月の支払額の多いドコモ回線契約者なら、年会費無料の「dカード」と比べ、年会費が発生してもドコモ料金の10%がdポイント還元される「dカード GOLD」の方がどう計算してもお得だからだ。その結果、ゴールドカードの構成比の方が高い状況にある。家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、2020年1~12月の累計(20年年間)で、スマートフォン全体(スマホ)のグループ単位のキャリア別販売台数は、KDDI(au+UQ mobile)、ソフトバンク(SoftBank+Y!mobile)、ドコモ、その他・SIMフリー、楽天モバイルの順。1位のKDDIと2位のソフトバンクは0.5ポイントの僅差となっている。楽天モバイルとドコモがオンライン申込比率がかなり高いとみても、ドコモは家電量販店チャネルで、KDDI(au+UQ mobile)、ソフトバンク(SoftBank+Y!mobile)にやや差をつけられていた。
20年8月掲載記事で、記者は「1~2年以内にドコモの銀行というべき新たな銀行の立ち上げがあるのか、資産運用を敬遠する自社のユーザー層にあわせ、ソフトバンクやKDDIの後追いはせずに、今後も他社との提携のみにとどめるのか、今後の動向に注目だ」と書いた。
今回の包括提携に基づき、ドコモ契約者を優遇する専用口座の開設、住宅ローンの共同実施のほか、三菱UFJ銀行の口座から口座振替で支払うとドコモの共通ポイント「dポイント」を付与するサービスを検討しているという。共同出資の新会社を立ち上げ、金融サービス仲介業に参入することも視野に入れる。
住宅ローンに関しては、21年3月開始のau・じぶんでんき・auじぶん銀行の住宅ローンのセット利用で、auじぶん銀行の住宅ローン金利を引き下げる「au金利優遇割(auモバイル優遇割+じぶんでんき優遇割)」のドコモバージョンが登場しそうだ。ドコモは現在、電気サービスを提供していないので、適用条件が一つ減るか、同時にドコモか三菱UFJ銀行が電気サービスを開始するだろう。
楽天モバイルは、楽天グループサービス利用者還元の一つとして、楽天でんき・楽天ガス(都市ガス)のセット利用で楽天ポイントを通常よりも多く付与するサービスを20年10月に開始している。条件はそれぞれ若干異なるものの、クレジットカードあるいは共通ポイントを軸に、「生活に欠かせないサービスの契約先を一つにまとめるとお得」という方向に進みつつある。
ドコモ側の狙いは、若者や高齢者に多いといわれるクレジットカード否定派や事情によりクレジットカードを持てない層のドコモへの取り込み・引き止め、キャリアショップの収益化・店舗統廃合にあるだろう。現時点では、ドコモは、ソフトバンクやKDDIの完全な後追いをしないと分かった。
通信×金融を推し進め、徹底的に他社に対抗するなら、いずれかの銀行を買収して「ドコモ銀行・NTT銀行」というべき、スマホファーストのオンライン銀行をドコモ自身が立ち上げるべきだといえる。しかし、三菱UFJ銀行と提携するだけでも、auモバイル優遇割と同等の優遇、ドコモ回線とセット利用を前提とした住宅ローン金利引下げは可能になり、ドコモからauへのMNP、顧客流出抑止が可能になると判断したようだ。
実際には、発表済みの若者向けの新料金プラン「ahamo」の開始にあわせた新銀行の立ち上げや、別の金融機関との包括的提携なのかもしれない。正式発表を待ちたい。(BCN・嵯峨野 芙美)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。