紙レシート卒業に“落とし穴”、改正電帳法の対応は「メリットだけじゃない」
2020年10月1日に施行された「改正電子帳簿保存法」により、働き方は大きく変わろうとしている。前回の記事(“紙レシート無し”で経費精算? 会社員が知っておきたい改正「電子帳簿保存法」=https://www.bcnretail.com/market/detail/20201126_201598.html)では、電帳法対応によるペーパーレス化や業務効率化といったメリットを解説した。
一方、完全にペーパーレス化できない部分はまだ残っているうえ、複雑な法要件を満たすために注意すべき点が多いのも事実だ。最終回となる今回は、電帳法対応について気を付けておきたい意外な落とし穴を解説する。
経費精算のために紙の領収書を受け取って原本を経理に提出したり、経理が原本をチェック・保管したりする手間は、まだしばらく残るだろう。
現在、日本における消費税は10%と8%(軽減税率)に分かれているので、適切な会計処理をするためには税率の確認が欠かせない。なぜなら、利用明細だけではその取引に軽減税率対象のものが含まれているかどうかわからないからだ。対処としては、法律上はキャッシュレス決済時の領収書受領が不要であっても、経費精算の申請時は備考欄に取引内訳や税率を明記する、あるいは確認用に領収書を必ず添付するなどがオススメだ。
そうすれば、経理がスムーズに進むだけでなく、差し戻しによる申請者の修正・再提出にかかる手間の削減にもつながる。異なる税率が同じ領収書内に混在するケースは比較的少ないが、注意しておきたい。
また、電帳法に対応済みかつキャッシュレス決済時であっても、社内ルールで領収書が必要なケースも考えられる。会社の経費精算マニュアルを確認し、不明点があれば経理に聞いてみよう。経理担当者が法要件や社内の運用ルール整備に悩んだ場合、税理士や税務署などの専門家、ITベンダーに相談してみると解決の糸口がみえるかもしれない。
電帳法は法要件が複雑なので慣れるまでの苦労はあるが、仕組みをしっかりと理解し、クラウド経費精算システムやキャッシュレス決済とあわせてうまく活用できれば、ペーパーレス化だけでなく経費精算業務の効率化も実現できる。負荷を軽減できるばかりでなく、もし余力ができればコア業務に注力する時間を増やすことも可能だ。
経費精算のフローを変えたり、システムを導入したりするのは特定の担当部署に依存する可能性もあるが、担当部署でない人も理解を深めておきたい。経理や経費精算に関わる人の助けになり、結果としてスムーズなペーパーレス化の実現に繋がるはずだ。(ラクス)
一方、完全にペーパーレス化できない部分はまだ残っているうえ、複雑な法要件を満たすために注意すべき点が多いのも事実だ。最終回となる今回は、電帳法対応について気を付けておきたい意外な落とし穴を解説する。
メリットだけじゃない?電帳法の意外な落とし穴とは
改正電帳法により、キャッシュレス決済の利用明細データを適切に保存すれば、紙の領収書は不要になった。これだけ聞くとペーパーレス化でき、領収書原本を提出・保管する手間もなくなるといったメリットばかりのように思える。しかし、これは法要件を満たした運用が大前提で、実際の運用においては課題や気を付けなければならない点もある。具体例をいくつか挙げて、説明したい。経費の決済手段としてのキャッシュレス決済 6割超が未導入
20年7月に全国の経理担当者400名を対象としてラクスが実施した調査によると、全体の約80%が電帳法に対応したシステムを導入しておらず、また約60%が経費の決済手段としてクレジットカードなどのキャッシュレス決済を導入していないと回答している。これらの結果から、「キャッシュレス決済なら領収書が不要になり経費精算がより楽になる」というメリットを実感できる人は、現状では多くない。経費精算のために紙の領収書を受け取って原本を経理に提出したり、経理が原本をチェック・保管したりする手間は、まだしばらく残るだろう。
キャッシュレス決済でも要注意!軽減税率の罠
キャッシュレス決済の利用明細では、取引金額や日付、取引先などを確認できるが、具体的な取引内容や税率はわからないという点には注意が必要だ。現在、日本における消費税は10%と8%(軽減税率)に分かれているので、適切な会計処理をするためには税率の確認が欠かせない。なぜなら、利用明細だけではその取引に軽減税率対象のものが含まれているかどうかわからないからだ。対処としては、法律上はキャッシュレス決済時の領収書受領が不要であっても、経費精算の申請時は備考欄に取引内訳や税率を明記する、あるいは確認用に領収書を必ず添付するなどがオススメだ。
そうすれば、経理がスムーズに進むだけでなく、差し戻しによる申請者の修正・再提出にかかる手間の削減にもつながる。異なる税率が同じ領収書内に混在するケースは比較的少ないが、注意しておきたい。
キャッシュレス決済でも領収書を受領してしまったら電子保存が原則?
先述の通り、電帳法ではキャッシュレス決済の利用明細データを適切な方法で保存すれば領収書の受領は不要とされている。一方で「領収書を受領してしまった場合は、キャッシュレス決済であっても領収書を電子保存する必要がある」とする専門家の意見もある。また、電帳法に対応済みかつキャッシュレス決済時であっても、社内ルールで領収書が必要なケースも考えられる。会社の経費精算マニュアルを確認し、不明点があれば経理に聞いてみよう。経理担当者が法要件や社内の運用ルール整備に悩んだ場合、税理士や税務署などの専門家、ITベンダーに相談してみると解決の糸口がみえるかもしれない。
金額が3万円以上になる場合は領収書を受け取ろう
取引金額が税込3万円以上になる場合は、消費税法で定められる仕入税額控除制度の観点から、領収書の取り扱いに気を付けたい。消費税の納税額計算で「費用と一緒に支払った消費税」を差し引くことになるからだ。この差し引く金額を仕入税額控除と呼び、適用するためには費用の内容などについて証明できる資料の保存が必要になるので、領収書は必ず受け取り大切に保管しよう。電帳法への対応でコア業務も効率化
領収書や請求書などの帳票類の電子化は政府でも積極的に推し進められており、ペーパーレス化は近い将来実現するはずだ。一方、電帳法への対応は、まだ多くの企業が追いついておらず、法要件を理解している人も少ないというのが実情だ。ペーパーレス化のメリットを十分に享受するためには、要件を理解することがとても重要になる。電帳法は法要件が複雑なので慣れるまでの苦労はあるが、仕組みをしっかりと理解し、クラウド経費精算システムやキャッシュレス決済とあわせてうまく活用できれば、ペーパーレス化だけでなく経費精算業務の効率化も実現できる。負荷を軽減できるばかりでなく、もし余力ができればコア業務に注力する時間を増やすことも可能だ。
経費精算のフローを変えたり、システムを導入したりするのは特定の担当部署に依存する可能性もあるが、担当部署でない人も理解を深めておきたい。経理や経費精算に関わる人の助けになり、結果としてスムーズなペーパーレス化の実現に繋がるはずだ。(ラクス)