“紙レシート無し”で経費精算? 会社員が知っておきたい改正「電子帳簿保存法」
領収書などの電子保存を可能にする「電子帳簿保存法」(以下、電帳法)。概要と対応による会社へのメリットについては前回(対応しないと損してるかも? 生産性を向上させる「電子帳簿保存法」とは(https://www.bcnretail.com/market/detail/20201123_200879.html)※ハイパーリンク無し※)解説した。そも そも電帳法が制定されたのは1998年と意外にも歴史は古く、2015年以降はほぼ毎年のように改正されている。
例えば、近年ではスキャナ保存だけでなくスマートフォンで撮影した領収書なども電子保存が可能になるなど、改正のたびに要件が緩和され利用しやすい制度になってきている。本稿では、さらなるペーパーレス化が進むとして注目される2020年10月施行の改正内容について詳しく解説する。
電帳法の制定により、紙で最低7年間保管することが義務付けられていた領収書や請求書といった証票類(国税関係帳簿書類)を、電子データで保管することができるようになった。これだけでも非常に便利になったように思われるが、一方で定期検査終了までは紙の原本保管が必要で、ペーパーレス化しきれない部分が残るなどの課題も残っていた。
ここでは例として、領収書の取り扱いについて考えてみる。2020年10月の改正以前は経費で物品を購入する際、キャッシュレス決済や現金決済を問わず領収書の受領が必要だった。
紙の領収書を電子データ化するためには、スキャナで読み取ったり、スマホで撮影したりするひと手間は不可欠。電子データ化は領収書を受け取ってから約3営業日以内、といったルールもある。また、電子データ化しても定期検査が済むまでは紙の領収書原本を破棄できないため、結局は原本を経理などに提出して保管しておく必要があった。
この改正がもたらすメリットは多い。まず申請者にとっては、領収書を紛失する心配がなくなり、電子データ化したり原本を提出したりする手間を削減することができる。また、キャッシュレス決済サービスと経費精算システムが連携していれば、精算時に日付や金額、取引先といった明細情報を手入力する工数を減らすことも可能だ。特に元々紙・Excelベースで経費精算していた人にとっては業務を大幅に効率化できる。
申請者の手入力が減ると入力ミスの防止になるので、経理担当者が修正や差し戻しをする負担の軽減にもつながる。会社にとっては、領収書原本の保管コスト削減や、改ざんできないキャッシュレス決済の利用明細に基づくことで不正を防止できる、といったメリットもあるだろう。
ここまでご紹介したメリットだけを考えると今回の改正内容はいいことばかりだが、「キャッシュレス決済の利用明細だけでは具体的な取引内容がわからない」という点には注意が必要だ。
現在、日本における消費税は10%と8%(軽減税率)に分かれているので、適切な会計処理をするためには税率の確認が欠かせない。法律上は領収書の受領が不要であっても、利用明細だけで経費精算を行う場合は「購入内容や税率を別途明記する」といった社内ルールを整備した上で運用することが大切になる。この点については、次回の記事で「気を付けておきたい意外な落とし穴」として改めて解説したい。
また、これらの電帳法対応は、キャッシュレス決済の利用明細データを取り込むことができ、かつ取り込んだ利用明細データを受領者側で改ざんできないといった法要件に対応するクラウド会計・経費精算システム等を会社が導入していることが前提になる。ハードルにはなるが、乗り越えれば圧倒的に効率化できるため、一考の価値はあるはずだ。(ラクス)
例えば、近年ではスキャナ保存だけでなくスマートフォンで撮影した領収書なども電子保存が可能になるなど、改正のたびに要件が緩和され利用しやすい制度になってきている。本稿では、さらなるペーパーレス化が進むとして注目される2020年10月施行の改正内容について詳しく解説する。
これまでの電帳法
2020年10月の改正内容について解説する前に、まずはそれまでの電帳法でできていたこと、そして課題となっていた点について整理する。電帳法の制定により、紙で最低7年間保管することが義務付けられていた領収書や請求書といった証票類(国税関係帳簿書類)を、電子データで保管することができるようになった。これだけでも非常に便利になったように思われるが、一方で定期検査終了までは紙の原本保管が必要で、ペーパーレス化しきれない部分が残るなどの課題も残っていた。
ここでは例として、領収書の取り扱いについて考えてみる。2020年10月の改正以前は経費で物品を購入する際、キャッシュレス決済や現金決済を問わず領収書の受領が必要だった。
紙の領収書を電子データ化するためには、スキャナで読み取ったり、スマホで撮影したりするひと手間は不可欠。電子データ化は領収書を受け取ってから約3営業日以内、といったルールもある。また、電子データ化しても定期検査が済むまでは紙の領収書原本を破棄できないため、結局は原本を経理などに提出して保管しておく必要があった。
2020年10月の改正によりキャッシュレス決済の利用明細で経費精算が可能に
前述のように、これまでは電帳法に対応してもペーパーレス化につながらないうえ、手間も多かった。しかし2020年10月の税制改正により、キャッシュレス決済時は利用明細データを適切に保存すれば紙の領収書を受領しなくても経費精算ができる、という解釈が加わった。この改正がもたらすメリットは多い。まず申請者にとっては、領収書を紛失する心配がなくなり、電子データ化したり原本を提出したりする手間を削減することができる。また、キャッシュレス決済サービスと経費精算システムが連携していれば、精算時に日付や金額、取引先といった明細情報を手入力する工数を減らすことも可能だ。特に元々紙・Excelベースで経費精算していた人にとっては業務を大幅に効率化できる。
申請者の手入力が減ると入力ミスの防止になるので、経理担当者が修正や差し戻しをする負担の軽減にもつながる。会社にとっては、領収書原本の保管コスト削減や、改ざんできないキャッシュレス決済の利用明細に基づくことで不正を防止できる、といったメリットもあるだろう。
ここまでご紹介したメリットだけを考えると今回の改正内容はいいことばかりだが、「キャッシュレス決済の利用明細だけでは具体的な取引内容がわからない」という点には注意が必要だ。
現在、日本における消費税は10%と8%(軽減税率)に分かれているので、適切な会計処理をするためには税率の確認が欠かせない。法律上は領収書の受領が不要であっても、利用明細だけで経費精算を行う場合は「購入内容や税率を別途明記する」といった社内ルールを整備した上で運用することが大切になる。この点については、次回の記事で「気を付けておきたい意外な落とし穴」として改めて解説したい。
また、これらの電帳法対応は、キャッシュレス決済の利用明細データを取り込むことができ、かつ取り込んだ利用明細データを受領者側で改ざんできないといった法要件に対応するクラウド会計・経費精算システム等を会社が導入していることが前提になる。ハードルにはなるが、乗り越えれば圧倒的に効率化できるため、一考の価値はあるはずだ。(ラクス)