2019年10月の消費税増税から1年。増税前の駆け込み購入によって、昨年9月はデジタル家電市場も多くの製品カテゴリで売り上げが跳ね上がった。逆に、今年の9月は昨年の反動で多くのカテゴリで前年比マイナスに沈んでいる。しかし、それでも堅調を維持している市場がある。手書きの電子メモや、キーボード付きテキスト入力端などで構成する電子文具市場もその一つだ。この1年ほど、前年比で2倍前後の販売台数を維持していた。さすがに9月は勢いが鈍ったとはいえ、前年比で152.4%と堅調だ。
販売の大部分を占める売れ筋は、NAKAGAMIが販売するSmalyブランドの「電子メモパッド」やキングジムの「Boogie Board」といったメモパッド類。税別の平均単価が1000円から3000円程度の安価な製品群だ。タッチペンを使って画面に書き込み、ボタン一つで書き込みを消すことができる。何回でも繰り返し使えるのが特徴だ。
しかし、安価なものはPCとの接続機能がなく、単純な電子メモだけの製品が多い。販売台数シェアでは、価格の安さでNAKAGAMIがトップを走っていたが、この9月、豊富なラインアップをそろえるキングジムが25.0%のシェアを獲得しトップに躍り出た。上位5社のうち4社は、こういったメモパッドが主力商品だ。
一方、台数シェアで5位の富士通クライアントコンピューティング(FCCL)は異色の存在。「QUADERNO」ブランドで展開するメモパッドの2モデルだけを展開する。A5モデルにおける税別の平均単価は3万台。A4モデルは5万円台もする高機能製品だ。画面に電子ペーパーを採用しているため、消費電力が小さく、3週間程度は充電なしでも使える。
もちろん、PDFファイルなどを使ったPCとの連携も可能。「紙」の使用感を電子的に実現するというコンセプトで作られており、専用のペンによる書き心地も、ペンで紙に書く感触に近い。価格が高いため、販売台数では5位ながら、販売金額シェアで9月は43.0%に拡大。これまでトップを走っていたキングジムを逆転し、堂々1位の座を獲得した。
販売金額で3位のソニーが「デジタルペーパー」、4位のシャープが「電子ノート」という名称で、FCCLと同様の製品を販売し、金額シェアを稼いでいる。いずれも、ディスプレイに電子ペーパーを採用している。一般的な液晶画面と異なり、電源を切っても表示が維持できるという特徴がある。画面の書き換えの際に電力を必要とするだけなので、バッテリの持ちもいい。
ただし、書き換え速度は遅く、動画に使えない。表示はモノクロ。スマートフォンやタブレット端末のフルカラーで美しい画面を見慣れた目からすると、どうしても見劣りがしてしまう。メモ用途であれば、実際はモノクロで十分なのだが、どうしても古臭く感じてしまうのは、いかんともし難い。
電子ペーパーは、電子書籍リーダーにも採用されている。小説など、文字だけの書籍を読むにはとても快適だ。炎天下でも視認性は落ちない。しかし、カラー図版や写真を楽しむ雑誌となると、モノクロでは無理だ。
そこで、カラーの電子書籍リーダーが登場し始めている。中国・深センのOnyx Booxが11月に発売する「ONYX BOOX Poke 2 Color」もその一つ。カラーの電子ペーパー「E Ink Kaleido」を搭載するのが最大の特徴だ。地味な発色ながらカラーのコンテンツが楽しめるのは大きい。電子ペーパーを採用する電子メモにも徐々に注目が集まっている中、ネックだったモノクロ表示からカラー表示に進化できれば、電子文具市場をさらに活性化することになるだろう。(BCN・道越一郎)
販売の大部分を占める売れ筋は、NAKAGAMIが販売するSmalyブランドの「電子メモパッド」やキングジムの「Boogie Board」といったメモパッド類。税別の平均単価が1000円から3000円程度の安価な製品群だ。タッチペンを使って画面に書き込み、ボタン一つで書き込みを消すことができる。何回でも繰り返し使えるのが特徴だ。
しかし、安価なものはPCとの接続機能がなく、単純な電子メモだけの製品が多い。販売台数シェアでは、価格の安さでNAKAGAMIがトップを走っていたが、この9月、豊富なラインアップをそろえるキングジムが25.0%のシェアを獲得しトップに躍り出た。上位5社のうち4社は、こういったメモパッドが主力商品だ。
一方、台数シェアで5位の富士通クライアントコンピューティング(FCCL)は異色の存在。「QUADERNO」ブランドで展開するメモパッドの2モデルだけを展開する。A5モデルにおける税別の平均単価は3万台。A4モデルは5万円台もする高機能製品だ。画面に電子ペーパーを採用しているため、消費電力が小さく、3週間程度は充電なしでも使える。
もちろん、PDFファイルなどを使ったPCとの連携も可能。「紙」の使用感を電子的に実現するというコンセプトで作られており、専用のペンによる書き心地も、ペンで紙に書く感触に近い。価格が高いため、販売台数では5位ながら、販売金額シェアで9月は43.0%に拡大。これまでトップを走っていたキングジムを逆転し、堂々1位の座を獲得した。
販売金額で3位のソニーが「デジタルペーパー」、4位のシャープが「電子ノート」という名称で、FCCLと同様の製品を販売し、金額シェアを稼いでいる。いずれも、ディスプレイに電子ペーパーを採用している。一般的な液晶画面と異なり、電源を切っても表示が維持できるという特徴がある。画面の書き換えの際に電力を必要とするだけなので、バッテリの持ちもいい。
ただし、書き換え速度は遅く、動画に使えない。表示はモノクロ。スマートフォンやタブレット端末のフルカラーで美しい画面を見慣れた目からすると、どうしても見劣りがしてしまう。メモ用途であれば、実際はモノクロで十分なのだが、どうしても古臭く感じてしまうのは、いかんともし難い。
電子ペーパーは、電子書籍リーダーにも採用されている。小説など、文字だけの書籍を読むにはとても快適だ。炎天下でも視認性は落ちない。しかし、カラー図版や写真を楽しむ雑誌となると、モノクロでは無理だ。
そこで、カラーの電子書籍リーダーが登場し始めている。中国・深センのOnyx Booxが11月に発売する「ONYX BOOX Poke 2 Color」もその一つ。カラーの電子ペーパー「E Ink Kaleido」を搭載するのが最大の特徴だ。地味な発色ながらカラーのコンテンツが楽しめるのは大きい。電子ペーパーを採用する電子メモにも徐々に注目が集まっている中、ネックだったモノクロ表示からカラー表示に進化できれば、電子文具市場をさらに活性化することになるだろう。(BCN・道越一郎)