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来春からJR東日本の「終電」30分繰り上げ、新型コロナで利用客が激減

 JR東日本は9月3日、来春のダイヤ改定から東京100キロメートル圏の各路線の終電時刻の繰り上げを実施すると発表した。新型コロナウイルスによる深夜時間帯の利用客が大幅に減少していることに加え、夜間の改良・保守作業にあたる人材が不足しており、人材確保に向けた働き方改革が急務になっているため。

東京100キロメートル圏の各路線で終電時刻を繰り上げる

 終電時間の繰り上げは、終電から始発までの間隔を240分程度確保するために、各路線の終電時刻を現行より約30分繰り上げる。例えば、現在の終電が1時20分着の場合、30分繰り上げて0時50分着になるようにする。
 

「元に戻らない」との見方

 金曜日などは必要に応じて終電前に臨時列車の増発も行う。終電駅の到着時刻はおおむね1時ごろにしたり、一部の路線では始発時刻を繰り下げたりする。実施する線区や内容は、10月に知らせるという。

 JR東日本では、新型コロナによる乗客の働き方や行動様式が変化し、感染が収束した後もテレワークやECなどが広く社会に浸透することで、人々の働き方や行動様式が元に戻ることはないとの見方を示す。

 コロナ前の2019年8月(お盆除く)と直近の20年8月(同)を比較した場合、山手線(上野~御徒町間)の終日の利用は38%減少。朝のピーク3時間の利用は36%減、最ピークの1時間の利用は42%減となった。特に深夜帯の利用は、66%減と大きく落ち込んだ。京浜東北線や中央線、総武線、常磐線でも終日の利用が34~38%減少したという。
 
利用状況の変化

 一方で終電時間の繰り上げにより始発まで240分以上が確保できる。これを、鉄道の改良・保守作業の働き方改革につなげる。

 過去10年でJR東日本管内の線路保守作業員は約2割減少しており、今後10年でも1~2割の減少が続く見込み。これに対し、設備の老朽化による新規設備の増加やホームドア、バリアフリーなど工事量は増加している。

 少ない作業人数で多くの工事量をこなすには機械化の推進が必要になるが、大型機械の搬出入などの準備時間(60分)が増えるという。そのため、240分以上の列車間合いの確保が必要になる。終電時間が現在のままだと実作業時間が減ってしまい、作業を複数日かけて分割して行うなど、作業効率の悪さが課題になっていた。

 JR東日本の2021年3月期第1四半期(4~6月)決算は、売上高が3329億円(前年比55.2%減)、営業損益が1783億円の赤字(前期は1446億円)、純損益が1553億円の赤字(前期は915億円)だった。新型コロナの影響で鉄道の利用客が大幅に減少したことに加え、駅構内の店舗や駅ビル、ホテルなど生活サービス事業も減少した。