番号持ち運び制度は形骸化 大手キャリアは家族割引・固定回線セット割引で囲い込み
8月31日までなどの期間限定で、複数の家電量販店ではNTTドコモの「キッズケータイ SH-03M」が新規契約・MNP限定で一括1円で販売されていた。ほかにも、一部のAndroidスマートフォン(スマホ)は、MNPや3Gケータイからの機種変更、その他の全ての条件に該当すると、端末本体はかなり安価で購入可能だった。
まず、キッズケータイを例に説明しよう。もともと子どものためにキッズケータイを購入しようと思っていたドコモ回線契約者にとって、「一括1円」は最適な買い時だ。対して、auやソフトバンク、MVNO各社などの契約者は、月額500円のキッズケータイプラン専用プランの申込条件を満たすために自身もドコモに乗り換えるか、新規に親回線となるドコモ回線を契約する必要が生じるので安いとは言えない。居場所を把握するために子どもに持たせる防犯目的のケータイ・スマホは、自身(親)のキャリアに合わせるか、古いスマホで代用するのが鉄則だ。
スマホの場合は、料金体系はさらに複雑だ。ドコモ・au・ソフトバンクとも「家族3人または4人以上」「指定の固定回線とのセット割引」といった条件付きの割引全てを適用した月額料金を提示しており、しかも「新規割引」は当初6カ月~1年で終了する。数年前は、新規割引は最大2年間の割引適用だったので、どんどん変化している。
つまり、現状、「家族が利用しているキャリアに自分が乗り換え、キャリアを揃える」ケースを除き、他の大手キャリアに乗り換えるメリットは回線契約者限定の特典くらいしかなく、通信費削減が目的ならMVNOがおすすめといわざるを得ない。しかし、選ぶMVNOのサービス規模にもよるが、無駄なコストを省いて料金を低廉化したMVNOは従来同様のショップでの手厚いサポートや、新品のiPhoneの割賦販売を求める層には不向きである。消去法で選ぶと、8月下旬から「iPhone SE(第2世代)」の取り扱いを開始したワイモバイル、UQ mobileあたりが無難だろう。
しかし、1回線につきわずか3000円とはいえ、通信事業者が手数料を徴収できなくなるため、MNP転出手数料の無料化と同時に、端末割引は一律減額する方向に向かうのではないか。バラマキの代名詞だったキッズケータイですら、今夏を最後に、もう二度と1円では手に入らなくなるかもしれない。
2016年2月以降、総務省が端末販売の適正化を図るガイドラインを定めるたびに、スマホの駆け込み購入と反動減が発生してきた。特に、端末割引上限2万2000円、定期契約あり・なしの差額170円、契約解除料1000円などを定めた19年10月の「電気通信事業法」の改正は大きな転機となった。総務省の意図とは裏腹に、MNP手数料原則無料化は、またもや駆け込みを生むだけに終わる気がする。(BCN・嵯峨野 芙美)
まず、キッズケータイを例に説明しよう。もともと子どものためにキッズケータイを購入しようと思っていたドコモ回線契約者にとって、「一括1円」は最適な買い時だ。対して、auやソフトバンク、MVNO各社などの契約者は、月額500円のキッズケータイプラン専用プランの申込条件を満たすために自身もドコモに乗り換えるか、新規に親回線となるドコモ回線を契約する必要が生じるので安いとは言えない。居場所を把握するために子どもに持たせる防犯目的のケータイ・スマホは、自身(親)のキャリアに合わせるか、古いスマホで代用するのが鉄則だ。
スマホの場合は、料金体系はさらに複雑だ。ドコモ・au・ソフトバンクとも「家族3人または4人以上」「指定の固定回線とのセット割引」といった条件付きの割引全てを適用した月額料金を提示しており、しかも「新規割引」は当初6カ月~1年で終了する。数年前は、新規割引は最大2年間の割引適用だったので、どんどん変化している。
つまり、現状、「家族が利用しているキャリアに自分が乗り換え、キャリアを揃える」ケースを除き、他の大手キャリアに乗り換えるメリットは回線契約者限定の特典くらいしかなく、通信費削減が目的ならMVNOがおすすめといわざるを得ない。しかし、選ぶMVNOのサービス規模にもよるが、無駄なコストを省いて料金を低廉化したMVNOは従来同様のショップでの手厚いサポートや、新品のiPhoneの割賦販売を求める層には不向きである。消去法で選ぶと、8月下旬から「iPhone SE(第2世代)」の取り扱いを開始したワイモバイル、UQ mobileあたりが無難だろう。
「オンライン受付の24時間化」は賛成だが、「MNP手数料無料化」は疑問
総務省で開催している有識者会議の8月の会合で、携帯電話の乗り換えを促す番号ポータビリティー(MNP)の利用件数を増やすため、現行3000円のMNP転出手数料の「原則無料化」が決定した。今後、報告書のとりまとめを作成し、具体的な調整に入るという。あわせて、MNP番号発行手続きの「オンライン受付の24時間化」、同意なく自社プランに誘導するといった「過度な引き止め行為の禁止」なども検討された。前者は、知識の有無による利益獲得の是正(公平化)、後者は利便性向上につながる。しかし、1回線につきわずか3000円とはいえ、通信事業者が手数料を徴収できなくなるため、MNP転出手数料の無料化と同時に、端末割引は一律減額する方向に向かうのではないか。バラマキの代名詞だったキッズケータイですら、今夏を最後に、もう二度と1円では手に入らなくなるかもしれない。
2016年2月以降、総務省が端末販売の適正化を図るガイドラインを定めるたびに、スマホの駆け込み購入と反動減が発生してきた。特に、端末割引上限2万2000円、定期契約あり・なしの差額170円、契約解除料1000円などを定めた19年10月の「電気通信事業法」の改正は大きな転機となった。総務省の意図とは裏腹に、MNP手数料原則無料化は、またもや駆け込みを生むだけに終わる気がする。(BCN・嵯峨野 芙美)