b8taの出品者にとって、月30万円の出品料は高いか、安いか
メーカーにとって、ダイレクトにエンドユーザーとのタッチポイントが得られる「D2C」(Direct to Consumer)のビジネスモデルは魅力的だ。このメリットを前面に打ち出して日本に上陸した、米国・サンフランシスコ発の体験型小売店「b8ta(ベータ)」が8月1日に新宿と有楽町でオープンした。出品者は1区画、1カ月30万円前後の「出品料」を支払う代わりに、来店客の行動履歴などのマーケティングデータが得られる。具体的に、出品者はどのようなデータやメリットが得られのかを見ていこう。
Retail as a Service(RaaS、サービスとしての小売り)のパイオニアと自負するように、b8taの収益の柱は約60×40センチの1区画に対して出品者が支払う月30万円前後の出品料だ。最低契約期間が6カ月であることから、サブスクリプションモデルであることをうたっている。
出品者が支払う出品料は、単なる6カ月間のテナント料としてではなく、その先にあるマーケティングデータという付加価値の対価として支払っているのだろう。それこそが、最大の魅力だからだ。
「b8taダッシュボード」と呼ばれるプラットフォームで確認できる主なデータは13種類にのぼる。まず、製品の前を通り過ぎた人数がわかる。「5秒」という基準に設けることで、5秒未満で過ぎ去った人は商品に関心を示さなかった人として「IMPRESSION」、5秒以上滞在した人は商品に関心を示した人として「DISCOVERIES」に分類する。これらの行動は、天井に設置したAIカメラで識別する。
「DEMOS」は、製品ブランドの教育トレーニングを受けたb8taのスタッフが製品デモを実施した回数だ。「IMPRESSION」→「DISCOVERIES」→「DEMOS」の推移をみることで、成約に至るまでの流れを把握することができる。
実際にクロージングまでの確率は、b8taダッシュボードの下にある3項目で確認できる。「IMPRESSION→DISCOVERIES」は製品の前に5秒以上滞在した人の率、「DISCOVERIES→DEMO」は製品をチェックしてからb8taスタッフのデモに至った率、「DEMO→GROSS UNIT SOLD」はデモを実施してから成約までに結びついた率である。
もちろん、クロージングの結果は「GROSS UNIT SOLD」(販売実績)と「GROSS SALES」(販売金額)で確認することができる。
b8taダッシュボードの真ん中に表示している折れ線グラフは「BENCHMARKING」として、製品カテゴリや分類による時系列のパフォーマンスの推移を比較することができる。
左側にある分析項目では、「Transactions」として製品別の販売情報としてPOS(販売時点情報管理)と連動したデータが得られるようだ。
「Stores」は、ストアごとの来客数や来店者のデモグラがわかる。例えば、ある店舗をチェックすると「GENDER RATIO」(指定期間の来店客の男女比率)や「TRAFFIC OVER TIME」(日ごとのストアトラフィック推移)、「VISITORS BY AGE GROUP」(来店客の年齢別分布)などがわかる。これは、店舗入り口の天井に設置されたデモグラフィックカメラで識別した年齢層と性別データと連動しているようだ。
「Chat」は、b8taスタッフが接客時に顧客からヒアリングした製品コメントなどを忘れないうちにフィードバックすることができる。定量データだけでなく、こうしたスタッフと客による直接的なコミュニケーションから得られる定性データは、製品の改善点や次の製品開発に反映できる貴重なデータとなるだろう。
最後の「Inventory」は、在庫管理用のデータである。店頭での顧客との接点だけでなく、在庫や物流と連動したデータも確認することができる。
b8taは、これらのデータを出品者に開放する。もちろん、さすがに他の出品者のデータは開示されないだろうから、完全とはいえない。例えば、強烈な人気製品が隣の区画にあったり、なかったりではデータの中身もまるで変わってきてしまうだろう。来客数を上げるためのトータル的な売り場づくりという点では、あくまでもプロデュースはb8taが行い、出品者がコントロールできない部分も残るだろう。
とはいえ、出品者が少なくとも自社の製品に限ってエンドユーザーと直接つながるというのは、大きな魅力に違いない。
また、ブランド単独で路面店を構えたり、テナントと交渉して低層階の売り場を確保する工程などを考えると、オープンまでにさばかなければいけないタスクは膨大になり、そのための時間とリソースを自ら手当する必要が生じる。
この点、b8taダッシュボードを使えば、通常の企画から出品、運用開始のオープンまで約4週間で実現できるという。出品料でオープンまでの時間を買う、というとらえ方もできるわけだ。
まさにオンラインに広告を出すノリでリアル出店でき、マーケティングデータが得られるなら、1区画、月30万円前後というコストも決して高くないのではないか。少なくとも、路面店を出店する前のテストマーケティングとして活用するだけの価値はあるだろう。(BCN・細田 立圭志)
「b8taダッシュボード」でわかること
「オンライン広告に掲載するぐらいに気楽にリアル店舗を出店する」というコンセプトが売りのb8taは、2015年、米国・サンフランシスコ近郊でオープン。現在では米国で23店舗、ドバイで1店舗を構えて、この度、日本に初上陸した。Retail as a Service(RaaS、サービスとしての小売り)のパイオニアと自負するように、b8taの収益の柱は約60×40センチの1区画に対して出品者が支払う月30万円前後の出品料だ。最低契約期間が6カ月であることから、サブスクリプションモデルであることをうたっている。
出品者が支払う出品料は、単なる6カ月間のテナント料としてではなく、その先にあるマーケティングデータという付加価値の対価として支払っているのだろう。それこそが、最大の魅力だからだ。
「b8taダッシュボード」と呼ばれるプラットフォームで確認できる主なデータは13種類にのぼる。まず、製品の前を通り過ぎた人数がわかる。「5秒」という基準に設けることで、5秒未満で過ぎ去った人は商品に関心を示さなかった人として「IMPRESSION」、5秒以上滞在した人は商品に関心を示した人として「DISCOVERIES」に分類する。これらの行動は、天井に設置したAIカメラで識別する。
「DEMOS」は、製品ブランドの教育トレーニングを受けたb8taのスタッフが製品デモを実施した回数だ。「IMPRESSION」→「DISCOVERIES」→「DEMOS」の推移をみることで、成約に至るまでの流れを把握することができる。
実際にクロージングまでの確率は、b8taダッシュボードの下にある3項目で確認できる。「IMPRESSION→DISCOVERIES」は製品の前に5秒以上滞在した人の率、「DISCOVERIES→DEMO」は製品をチェックしてからb8taスタッフのデモに至った率、「DEMO→GROSS UNIT SOLD」はデモを実施してから成約までに結びついた率である。
もちろん、クロージングの結果は「GROSS UNIT SOLD」(販売実績)と「GROSS SALES」(販売金額)で確認することができる。
b8taダッシュボードの真ん中に表示している折れ線グラフは「BENCHMARKING」として、製品カテゴリや分類による時系列のパフォーマンスの推移を比較することができる。
左側にある分析項目では、「Transactions」として製品別の販売情報としてPOS(販売時点情報管理)と連動したデータが得られるようだ。
「Stores」は、ストアごとの来客数や来店者のデモグラがわかる。例えば、ある店舗をチェックすると「GENDER RATIO」(指定期間の来店客の男女比率)や「TRAFFIC OVER TIME」(日ごとのストアトラフィック推移)、「VISITORS BY AGE GROUP」(来店客の年齢別分布)などがわかる。これは、店舗入り口の天井に設置されたデモグラフィックカメラで識別した年齢層と性別データと連動しているようだ。
「Chat」は、b8taスタッフが接客時に顧客からヒアリングした製品コメントなどを忘れないうちにフィードバックすることができる。定量データだけでなく、こうしたスタッフと客による直接的なコミュニケーションから得られる定性データは、製品の改善点や次の製品開発に反映できる貴重なデータとなるだろう。
最後の「Inventory」は、在庫管理用のデータである。店頭での顧客との接点だけでなく、在庫や物流と連動したデータも確認することができる。
ブラックボックスだったデータを開放
コンビニエンスストアなどを見るまでもなく、これまで、こうしたマーケティングデータは小売業者や卸売業者などが握ってきた。小売企業の商品本部や店舗開発がデータ分析しながら、バイヤー機能やリベート交渉、売り場レイアウト、あるいはPB商品の開発などに反映してきた。まさにブラックボックスのデータといってもいいだろう。b8taは、これらのデータを出品者に開放する。もちろん、さすがに他の出品者のデータは開示されないだろうから、完全とはいえない。例えば、強烈な人気製品が隣の区画にあったり、なかったりではデータの中身もまるで変わってきてしまうだろう。来客数を上げるためのトータル的な売り場づくりという点では、あくまでもプロデュースはb8taが行い、出品者がコントロールできない部分も残るだろう。
とはいえ、出品者が少なくとも自社の製品に限ってエンドユーザーと直接つながるというのは、大きな魅力に違いない。
また、ブランド単独で路面店を構えたり、テナントと交渉して低層階の売り場を確保する工程などを考えると、オープンまでにさばかなければいけないタスクは膨大になり、そのための時間とリソースを自ら手当する必要が生じる。
この点、b8taダッシュボードを使えば、通常の企画から出品、運用開始のオープンまで約4週間で実現できるという。出品料でオープンまでの時間を買う、というとらえ方もできるわけだ。
まさにオンラインに広告を出すノリでリアル出店でき、マーケティングデータが得られるなら、1区画、月30万円前後というコストも決して高くないのではないか。少なくとも、路面店を出店する前のテストマーケティングとして活用するだけの価値はあるだろう。(BCN・細田 立圭志)