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在宅ワークを想定した間取りやインテリアオプション 一部の新築マンションが提案

 日鉄興和不動産は、販売中の物件や今後販売する物件に独自の「モアトリエ」を順次導入すると発表した。2012年に開発したモアトリエは、「リビオ」ブランドの新築分譲マンションなどに導入し好評を得ており、働き方改革や新型コロナウイルスの感染拡大を契機としたライフスタイルの変化にあわせ、引き続き導入していくと改めて発表した。

 モアトリエは、「モア(もっと、それ以上の)」+「アトリエ(創造空間)」の意味を込めた造語で、従来の間取りのプラスアルファとなる2~2.5畳程度の自由空間。民間企業が運営する個室ブース型のコワーキングスペース、カフェ風のオープン型コワーキングスペースの利用料はまだ高く、在宅勤務(在宅ワーク)手当が2万円以下の場合、常時利用すると、持ち出しとなってしまう。それなら従来通り、オフィスに出社するか、PCを常設して仕事に集中できるワークスペースの確保、すでにある書斎の快適化・最適化に費用を投じたほうがコストパフォーマンスは高い。特に恒常的に在宅勤務を続けるなら、自宅にオフィス並みの集中できる環境の整備は不可欠。モアトリエは、その一つの解になり得るだろう。
 
「モアトリエ」を利用した書斎イメージ
(リビオシティ西葛西親水公園の参考写真)

 東急不動産も今春以降、在宅ワークが急激に広がっている現状を踏まえ、新しい『住まい方』として、在宅ワークをより快適に行えるようなハード、サービスの開発、提案を進めると発表。コクヨと連携し、「BRANZ(ブランズ)」ブランドの新築マンションに、在宅ワークを想定したインテリアオプションを用意するほか、「ブランズ大阪福島」には、仕事場所として在宅ワークにも活用可能なコンパクトスペース「ユニットスペースの導入を決定した。

 インテリアオプションにういては、開発中の計画案として、収納や家具の一部にワークスペースを組み込み、住戸内の建具やフローリングとカラーに統一性を持たせ、居住性を損なわずインテリア性の高いワークスペース空間を創出するスケッチを公開。このインテリアオプションは、首都圏の2物件(ブランズシティ世田谷中町/ブランズ浦和別所沼公園)のモデルルームに設置予定。購入検討段階で、実際に見て確認できるようにする。
 
東急不動産がコクヨと連携して開発するインテリアオプションの計画案

 特にプレスリリースは発表していないが、野村不動産は販売予定の「プラウド」ブランドの新築マンションで、「自由な住まいの新提案」としてモアトリエ以上に自由度の高い「つながROOM(つながルーム)」を提唱している。物件公式サイトに掲載された家具を配置した18通りのレイアウトプラン例の筆頭は、「テレワーク」スタイルだ。

 このつながルームは、ほかにも、ワインバースタイル、ピアノルームスタイル、ソーイングスタイルなど、バリエーションに富んでおり、レイアウト例を見ているだけでワクワクする。ぜひ今後、他の物件にも導入してほしいところだ。
 
野村不動産の新築マンション「プラウド湘南藤沢ガーデン」の公式サイトの「プラン」コーナーに掲載された
「テレワークスタイル」(書斎+ウォークスルークローゼット)のイメージと工夫点

 こうした新築マンションデベロッパーの動きは、従来の標準的な新築マンション・建売住宅には、LDK(リビングダイニングキッチン)と寝室しかないという背景がある。そもそもセキュリティの観点で、会社で行う仕事は自宅に持ち込めず、よって多数派には書斎(ワークスペース)は必要なかった。しかし、在宅勤務や時差通勤を推奨する「新しい生活様式」によって一変し、状況によっては、夫婦2人、小学生~大学生の子ども2人の計4人がそれぞれPCやタブレット端末の画面に向かって、双方向型のビデオ会議で議論したり、オンラインで授業を受けたりする可能性が出てきた。

 賛否両論のある小中学校、高校、大学のオンライン授業が定着するかは不透明だが、文字入力しやすいPCの保有は1人1台、認証機能のあるスマートフォンとPCの併用は、ほぼ確実になってきたと考える。今のうちに、問い合わせのメールやチャット、オンライン手続きなどが苦にならないようにPCスキルを磨こう。(BCN・嵯峨野 芙美)