NTTとNECが描く「新メイドインジャパン」とは、2030年までにO-RANで世界シェア20%へ
通信技術で5Gやその次の6Gまで見据えた研究開発の資本業務提携を交わし、中長期的なアライアンスを組んだNTTとNEC。お互いのノウハウや技術を融合させたオープンアーキテクチャで、垂直統合モデルが幅を利かせる世界市場に打って出るという。NTTの澤田純社長とNECの新野隆社長が描く「新メイドインジャパン」とは何か。記者会見の一問一答から見えてくる。
――NTTがあえて出資した理由について。
NTTの澤田社長(以下、敬称略) 両社の協業は中長期の共同研究開発になる。両社間で連携した開発をスムーズに進めるために出資した。(NECの株式の)5%弱になるが、出資を増やしていくことが目的ではない。
――なぜ相互で出資する形ではないのか。
澤田 開発した後の役割分担はオペレーターとメーカーでクリアに分かれているため、双方で出資するほどではなかった。
NECの新野社長(以下、敬称略) 5%の出資を受ける上で(NECの)経営を尊重していただける。また、資金の使い方に特に制約はないが、製品開発に投資をしていく上でうまく活用していきたい。もともとわれわれが掲げていた政策保有株式は、原則ゼロという会社方針にも合致する。
――世界情勢と今回の提携の関係について。
澤田 現在の垂直統合で動いているキャリアとメーカーの関係を、よりフレキシブルに、できればキャリア主導に変えていきたい。そこで、O-RANというオープンアーキテクチャを提唱している。キャリアのNTTとメーカーのNECが組むという、世界にもない新しいモデルになり、世界市場でシェアをとっていけると考えている。米中関係がきつい状況になっていく可能性がある中で、世界で通用する日本発の付加価値の高い製品システムを一緒につくっていく。新メイドインジャパンといったのは、そういうことだ。
――米国のファーウェイに対する追加制裁があったが、両社のサプライチェーンにおける経済安全保障上の位置づけについて。また、日本政府からの後押しはあったのか。
澤田 われわれはオープン化を推進しながら、信頼のおける国やプレーヤーと組んで新しいシステムをつくっていきたい。結果的に、経済安全保障にも合致していくのだろう。日本政府との連携は、手前では5Gのシステムで国がリードして後押ししてもらっている。われわれのO-RANを世界に出していく点でも、直接、間接は別にしても国がそのように見てくれていると認識している。
新野 日本政府からO-RANをグローバルに展開していく上で、大きな支援をいただいているのは事実。ただ、今回の資本業務提携は両社で決めたことだ。
――645億円の投資の回収時期や売り上げの見込みは。
澤田 両社による明確な切り分けは難しいが、われわれが出資している部分では、DSP(小型光集積回路)を一緒に開発していく。子会社のNTTエレクトロニクスで一連のLSIを大きい時は200億円規模で全世界で製造、販売してきた。今回は、光電融合型の世界初のものに変えていくということで、早い段階で出資した分を回収していけるだろう。
新野 DSPを活用した製品は、2、3年のスパンで出てくるだろう。今後のO-RANやIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)は中長期的な取り組みになる。目指すところは、2030年までにO-RANで世界シェア20%を取っていきたい。
――5Gの基地局でファーウェイなどが垂直統合モデルでシェアをとっている。半導体の微細化技術を含めた上流から下流までの開発投資を含めて海外ベンダーと戦っていけるのか。
新野 今回のオープンアーキテクチャは、ネットワークのコアな専門デバイスもあるが、ITとネットワークを融合した柔軟なものを構築していくことが大きな特徴だ。半導体の製造も含めて、NTTとわれわれの強い技術をオープンアライアンスの中で推進していきたい。
澤田 5Gのオープンアーキテクチャのイメージは、アンテナ、その後ろの集約型と分散型の無線装置、その奥にあるコアの四つをカバーしている。半導体の議論は、基本的に自社でつくっているところはない。垂直統合といってもエコシステムの中に入っている。われわれも、そのようなエコシステムを利用するし、特殊な半導体でいえば、我々自身でもつくれる。その後ろでソフトウエアをどう動かしていくかだ。4Gと同じように5Gの出だしは垂直統合だが、今後は全世界に広がる大きな市場になる。柔軟なオープンアーキテクチャによる競争力は十分にある。
――R&Dの規模で海外ベンターにかなわないが、グローバルシェアでトップを目指す上で、どこが強みになるのか。
澤田 NTTは、特定のLSIを製造しているメーカーでもある。さらに効率的な、IOWNのような光電融合型を広めていきたいと思っている。世界でも最先端のIPを持つ半導体を、NECの製品開発に入れていきたい。研究開発費の多寡ではなく、何を狙って開発しているかをフォーカスすれば競争優位性を発揮できる。
新野 NECは創業以来、無線、光、コア、クラウドもサポートまで含めたトータルの通信技術をもっている。次のキーワードとなるオープンアーキテクチャになると、従来の専用の通信機器から、ITや汎用品を組み合わせた柔軟なネットワークの構築になる。われわれがITとネットワークで、ずっと培ってきた強みを出して十分に戦っていける。
澤田 このように、キャリアとメーカーがそれぞれの強みを統合して製品化やシステム開発をしていく営みは、世界でも初めてのことだ。
――5Gと次の6Gのどちらに重きを置いているのか。
澤田 両方だ。IOWNは名前の通り、Optical and Wireless Networkで6Gも包含している。今回の共同開発も、IOWNが目指す新しい無線、有線システムを両社でつくっていくのが狙い。特にNECの光の波長技術は海底ケーブルから宇宙まで立体的で世界でも有数の技術だ。
――協業を検討した時期と、提携に至ったきっかけは。
澤田 新野さんとは数年来、協業の可能性を議論してきた。長いレンジでお互いに模索してきた。昨年、われわれがIOWNを構想化したことで将来の部分と、手前の5GでO-RANを進めたいというお互いの認識が合ったので1年以内に話が進んでいった。
新野 世の中のスピードが速く、市場からの期待も大きくなっていた。資本提携はNTTの方から提案があったが、両社の協業の検討は18年からしてきた。
――NTTの主要なサプライヤーに富士通もあるが、同じようなスキームをつくっていくのか。
澤田 今回の提携は排他的ではなくオープンなもの。NECは楽天とも組んでいるし、他国からさまざまな話があると聞いている。われわれも、さまざまなところから公平に調達している。共同開発でもオープンにやっていきたい。
――安定的に調達するために資本提携するという調達面の変化があるのか。
澤田 研究開発部門がこれだけ強いキャリアは、NTTが世界No.1と考えている。特定のLSIの製造部門ももっている。資本提携が他のキャリアと比べて異例という見立ては外れている。他のキャリアとわれわれは違う。ただ、今後の共同開発で資本提携を必ずするという問いだとすれば答えはノーだ。ケースバイケースの対応となる。
――通信機器の世界でNECはエリクソンやノキアに並ぶ存在になっていきたいということか。
新野 NECが基地局の分野で4Gまでグローバルに出られなかったのは、GSMという標準化の問題があった。5G以降のオープン化は、われわれにとってグローバルに出ていける最後のチャンスかもしれないというぐらいの気持ちだ。今回の資本業務提携で、非常に強いパートナーを得た。オペレーターとわれわれモノづくりのノウハウの二つを組み合わせて、オープンな市場にどんどん出ていく。グローバルで20%のトップシェアを狙うぐらいの覚悟で、この事業を推進していきたい。
――NTTがあえて出資した理由について。
NTTの澤田社長(以下、敬称略) 両社の協業は中長期の共同研究開発になる。両社間で連携した開発をスムーズに進めるために出資した。(NECの株式の)5%弱になるが、出資を増やしていくことが目的ではない。
――なぜ相互で出資する形ではないのか。
澤田 開発した後の役割分担はオペレーターとメーカーでクリアに分かれているため、双方で出資するほどではなかった。
NECの新野社長(以下、敬称略) 5%の出資を受ける上で(NECの)経営を尊重していただける。また、資金の使い方に特に制約はないが、製品開発に投資をしていく上でうまく活用していきたい。もともとわれわれが掲げていた政策保有株式は、原則ゼロという会社方針にも合致する。
――世界情勢と今回の提携の関係について。
澤田 現在の垂直統合で動いているキャリアとメーカーの関係を、よりフレキシブルに、できればキャリア主導に変えていきたい。そこで、O-RANというオープンアーキテクチャを提唱している。キャリアのNTTとメーカーのNECが組むという、世界にもない新しいモデルになり、世界市場でシェアをとっていけると考えている。米中関係がきつい状況になっていく可能性がある中で、世界で通用する日本発の付加価値の高い製品システムを一緒につくっていく。新メイドインジャパンといったのは、そういうことだ。
――米国のファーウェイに対する追加制裁があったが、両社のサプライチェーンにおける経済安全保障上の位置づけについて。また、日本政府からの後押しはあったのか。
澤田 われわれはオープン化を推進しながら、信頼のおける国やプレーヤーと組んで新しいシステムをつくっていきたい。結果的に、経済安全保障にも合致していくのだろう。日本政府との連携は、手前では5Gのシステムで国がリードして後押ししてもらっている。われわれのO-RANを世界に出していく点でも、直接、間接は別にしても国がそのように見てくれていると認識している。
新野 日本政府からO-RANをグローバルに展開していく上で、大きな支援をいただいているのは事実。ただ、今回の資本業務提携は両社で決めたことだ。
――645億円の投資の回収時期や売り上げの見込みは。
澤田 両社による明確な切り分けは難しいが、われわれが出資している部分では、DSP(小型光集積回路)を一緒に開発していく。子会社のNTTエレクトロニクスで一連のLSIを大きい時は200億円規模で全世界で製造、販売してきた。今回は、光電融合型の世界初のものに変えていくということで、早い段階で出資した分を回収していけるだろう。
新野 DSPを活用した製品は、2、3年のスパンで出てくるだろう。今後のO-RANやIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)は中長期的な取り組みになる。目指すところは、2030年までにO-RANで世界シェア20%を取っていきたい。
――5Gの基地局でファーウェイなどが垂直統合モデルでシェアをとっている。半導体の微細化技術を含めた上流から下流までの開発投資を含めて海外ベンダーと戦っていけるのか。
新野 今回のオープンアーキテクチャは、ネットワークのコアな専門デバイスもあるが、ITとネットワークを融合した柔軟なものを構築していくことが大きな特徴だ。半導体の製造も含めて、NTTとわれわれの強い技術をオープンアライアンスの中で推進していきたい。
澤田 5Gのオープンアーキテクチャのイメージは、アンテナ、その後ろの集約型と分散型の無線装置、その奥にあるコアの四つをカバーしている。半導体の議論は、基本的に自社でつくっているところはない。垂直統合といってもエコシステムの中に入っている。われわれも、そのようなエコシステムを利用するし、特殊な半導体でいえば、我々自身でもつくれる。その後ろでソフトウエアをどう動かしていくかだ。4Gと同じように5Gの出だしは垂直統合だが、今後は全世界に広がる大きな市場になる。柔軟なオープンアーキテクチャによる競争力は十分にある。
――R&Dの規模で海外ベンターにかなわないが、グローバルシェアでトップを目指す上で、どこが強みになるのか。
澤田 NTTは、特定のLSIを製造しているメーカーでもある。さらに効率的な、IOWNのような光電融合型を広めていきたいと思っている。世界でも最先端のIPを持つ半導体を、NECの製品開発に入れていきたい。研究開発費の多寡ではなく、何を狙って開発しているかをフォーカスすれば競争優位性を発揮できる。
新野 NECは創業以来、無線、光、コア、クラウドもサポートまで含めたトータルの通信技術をもっている。次のキーワードとなるオープンアーキテクチャになると、従来の専用の通信機器から、ITや汎用品を組み合わせた柔軟なネットワークの構築になる。われわれがITとネットワークで、ずっと培ってきた強みを出して十分に戦っていける。
澤田 このように、キャリアとメーカーがそれぞれの強みを統合して製品化やシステム開発をしていく営みは、世界でも初めてのことだ。
――5Gと次の6Gのどちらに重きを置いているのか。
澤田 両方だ。IOWNは名前の通り、Optical and Wireless Networkで6Gも包含している。今回の共同開発も、IOWNが目指す新しい無線、有線システムを両社でつくっていくのが狙い。特にNECの光の波長技術は海底ケーブルから宇宙まで立体的で世界でも有数の技術だ。
――協業を検討した時期と、提携に至ったきっかけは。
澤田 新野さんとは数年来、協業の可能性を議論してきた。長いレンジでお互いに模索してきた。昨年、われわれがIOWNを構想化したことで将来の部分と、手前の5GでO-RANを進めたいというお互いの認識が合ったので1年以内に話が進んでいった。
新野 世の中のスピードが速く、市場からの期待も大きくなっていた。資本提携はNTTの方から提案があったが、両社の協業の検討は18年からしてきた。
――NTTの主要なサプライヤーに富士通もあるが、同じようなスキームをつくっていくのか。
澤田 今回の提携は排他的ではなくオープンなもの。NECは楽天とも組んでいるし、他国からさまざまな話があると聞いている。われわれも、さまざまなところから公平に調達している。共同開発でもオープンにやっていきたい。
――安定的に調達するために資本提携するという調達面の変化があるのか。
澤田 研究開発部門がこれだけ強いキャリアは、NTTが世界No.1と考えている。特定のLSIの製造部門ももっている。資本提携が他のキャリアと比べて異例という見立ては外れている。他のキャリアとわれわれは違う。ただ、今後の共同開発で資本提携を必ずするという問いだとすれば答えはノーだ。ケースバイケースの対応となる。
――通信機器の世界でNECはエリクソンやノキアに並ぶ存在になっていきたいということか。
新野 NECが基地局の分野で4Gまでグローバルに出られなかったのは、GSMという標準化の問題があった。5G以降のオープン化は、われわれにとってグローバルに出ていける最後のチャンスかもしれないというぐらいの気持ちだ。今回の資本業務提携で、非常に強いパートナーを得た。オペレーターとわれわれモノづくりのノウハウの二つを組み合わせて、オープンな市場にどんどん出ていく。グローバルで20%のトップシェアを狙うぐらいの覚悟で、この事業を推進していきたい。