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格安SIMや端末の格安販売には必ず理由がある コスパ見極めは節約の第一歩

 楽天モバイルが5月27日から6月17日8時59分まで実施した、「Rakuten UN-LIMITお申し込みでRakuten Mini本体代が1円」キャンペーンは大いに話題になった。しかし、キャンペーン期間中、製造ロットによって対応する周波数帯(バンド)が異なり、変更後の製品はFDD-LTE Band 1(2.1GHz)、WCDMA Band 1(2.1GHz)に対応していないと判明した。

Rakuten Miniの新色クリムゾンレッド

 この対応周波数帯変更に対し、総務省は、発売時点で満たしていた法律上の基準(工事設計)と合致していない恐れがあるとして、楽天モバイルに電波法の規定に基づく報告を求めた。報告期限は6月26日で、25日夕方時点で未回答。

 今回のキャンペーンは、楽天モバイル唯一のプランのRakuten UN-LIMITの契約と同時に購入すると、Rakuten Miniの本体価格が1人1回限り、1円となり、ポイント還元によって事務手数料なども実質0円という非常にお得なキャンペーンだった。ただし、Rakuten Miniはメインのスマートフォンには不向きな高さ106.2mm×幅53.4mm、重さ79gの小型・軽量端末のため、2台目以降のサブ回線のお試しとして購入したケースが大半を占めるとみられる。
 
総務省の楽天モバイルに対する指摘

 Rakuten Miniを楽天回線で使い続ける限り、楽天モバイルで使われていないBand 1の対応・非対応は気にする必要のない仕様だ。しかし、キャンペーンで端末を安く手に入れて、Rakuten UN-LIMIT1年無料キャンペーン終了後、もっと月額料金の安いMVNO(格安SIM)のeSIMサービスに乗り換えて使おうと想定していた層にとっては看過できない仕様変更である。

 Band 1非対応だと、実質、楽天回線しか利用できないからだ。しかも、SNS上で指摘を受けるまで公表せずに沈黙していたわけで、企業の対応として不誠実だといわざるを得ない。
 
月額1000円台から音声通話SIMが使える主なMVNO

 新型コロナウイルス感染症に関連し、大手3キャリアは25歳以下などの条件付きで、1カ月上限50GBまでの追加チャージ料金を無償化した。各社とも7月31日まで延長している。

 この施策に対し、これまで格安SIMを契約して生活費を抑えていた大学生や若手社会人が、急遽始まったオンライン授業や在宅勤務のため割高な追加チャージの必要に迫られ、負担増に苦慮している状況は不公平だと、批判的な意見も出ている。

 しかし、格安SIMや端末の格安販売には必ず理由がある。そうしたリスクを認識した上で、選んだのは本人なのだから仕方ない。

 携帯電話番号をそのまま他社に乗り換えるMNP(番号ポータビリティ)は14年前、2006年10月にスタート。以降、キャリア乗り換えを阻害する「2年縛り」と高額な契約解除料が問題になっていたが、それも19年10月以降の新規契約では上限1000円など、細かいガイドラインが定められ、乗り換えの金銭的ハードルがさらに下がった。

 つまり今回の場合、自粛の長期化が分かった時点で、契約中の格安SIMの最安プランを契約して毎月追加チャージ料金を支払うよりも、大手3キャリアの最安プランを契約して50GBまで追加チャージ無料が適用された方が安いという試算結果が出たなら、端末の残債を支払い、他のキャリアにSIMのみの契約で乗り換えれば負担を下げられた。

 見かけのコストと実質的なコストの見極めこそ節約の第一歩。大手キャリアは、指定の固定通信サービスや電気・ガスのセット割引を適用すると割引が増え、スマートフォン決済サービスの還元額を加味するとさらに実質負担は下がる。よってトータルで見ると、必ずしも月額料金の安い格安SIMが最安とは限らない。通信料金に関しては、継続利用特典のポイント還元や、決済時・EC利用時のポイント還元も含めて判断しよう。(BCN・嵯峨野 芙美)