今春から外出自粛の流れを受けて、実店舗を訪問せずにオンラインで完結するサービスの需要が高まってきている。補聴器業界でも販売店で購入後にスマートフォンやタブレットを利用して遠隔でサポートを受けることができるリモートケアが徐々に広がり始めている。どのようなサービスなのか、店舗で取材してきた。
今回、協力してもらったのは千葉県にある「ヒアリングスタジオ」を運営する待山商事の岡田英敬社長。柏市に根を下ろして補聴器の販売を行っていたが、19年11月には松戸市に2号店をオープン。岡田社長も新店で業務を行うことが多くなった。
そんな岡田社長の気がかりは柏店の顧客だ。「補聴器のケアは人との信頼の上で成り立っている。お客様も誰に調整してもらうかを重視している」。岡田社長をご指名の柏店の顧客は多いが、松戸店までわざわざ来てもらうわけにはいかない。そこで導入したのがオンラインによる遠隔サポートだった。
もともと既存のビデオ通話などを使って、松戸店にいながら柏店に来店したユーザーとオンラインによる遠隔コミュニケーションをとっていたが、今後に期待しているのは「Oticon RemoteCare(オーティコン・リモートケア)」だ。
店舗で調整後に補聴器を購入したユーザーのスマホと補聴器の調整ソフトがインストールされた店舗のPCを接続し、画面越しにオンラインで対話しながら2回目以降の補聴器の調整をビデオチャットとテキストを使って行うことができるサービスで、岡田社長の求めていたものと合致した。
補聴器メーカー各社がこのリモートケアのサービスを展開し始めているが、オーティコン・リモートケアはタイムラグが少ないという特徴がある。調整した補聴器のデータを一度クラウドにアップロードして、それを顧客がダウンロードするという仕組みを採用しているサービスが多いなかで、オーティコン・リモートケアは瞬時にデータが同期する。これによってオンラインでも対面と変わらないサービスをスムーズに提供することができる。
オーティコン・リモートケアは販売店とユーザーがそれぞれ専用のアプリを用いるが、特別な設備などは必要ない。岡田社長が気に入っているのが、インターフェース。ビデオ通話と補聴器の調整画面を同時に表示できるのでスムーズに顧客とコミュニケーションをとることができるという。
実際にリモートケアを行っている様子を見学させてもらった。まずは岡田社長と補聴器ユーザーがそれぞれアプリにログイン、ビデオ通話に接続してサポートがスタートする。岡田社長は店舗の調整用PCを使用し、ユーザー側はスマートフォンで対応。やりとりはオンラインだからという特別なものはなく、対面と変わらない。
見学したケースでは「補聴器が聞こえづらい」というユーザーの要望を聞き、岡田社長が補聴器を調整した。最近の補聴器は遠隔からソフトウェアを操作することができ、ユーザーに聞こえ具合を確認してもらいながら細かくセッティングを整えていく。
スマホのアプリでは店舗側で行っている調整の進捗状況を確認できるほか、テキスト入力によるチャット機能も搭載している。「オンラインだと聞き取りづらいという場合もあるので、そのときはテキストを送るチャットを活用して意思疎通が図れる」という。
ユーザーの満足いく状態になったら調整は終了。ケースバイケースだが1回のケアにかかる時間は20~30分程度で、むしろ対面よりも短くて済むこともある。店舗側は業務効率化、ユーザー側はご指名のスタッフのいる店舗を訪問する時間の節約ができ、それぞれにメリットは大きいようだ。
「今後このサービスを利用するユーザーが増え、自宅や職場など好きな場所から気軽にご利用いただきたい」と岡田社長は語る。店舗では音環境が整備されているため、調整のしやすさと言う意味でメリットはあった。一方で、ユーザーが具体的に困っている職場や家庭の音環境の再現が難しい、という点が課題となっていたが、その問題解決にもリモートケアがソリューションの一つになりそうだ。
日本では特に補聴器装用率が他の国より低く、必要な人に補聴器が届いていないという長年の課題がある。補聴器は購入後すぐに快適に使用できる機器ではなく、ユーザー本人の聴力や好みに合わせ、慣れるまでに専門家の手により複数回にわたる調整が必要になる。それゆえに一般的に購入後も、数週間から数か月にわたり定期的に購入した店舗を訪れ、カウンセリングを受けながら細かい調整を行う必要がある。
補聴器に関心はあるが、調整を行うために何度もお店を訪問することにわずらわしさを感じている人や遠方に住んでいる人などに対して、リモートケアサービスであれば店舗を訪問する手間が省け、気軽に相談や調整が受けられるようになる。ブレイクスルーはオンラインを活用した新しい様式から生まれるかもしれない。(BCN・大蔵 大輔)
今回、協力してもらったのは千葉県にある「ヒアリングスタジオ」を運営する待山商事の岡田英敬社長。柏市に根を下ろして補聴器の販売を行っていたが、19年11月には松戸市に2号店をオープン。岡田社長も新店で業務を行うことが多くなった。
そんな岡田社長の気がかりは柏店の顧客だ。「補聴器のケアは人との信頼の上で成り立っている。お客様も誰に調整してもらうかを重視している」。岡田社長をご指名の柏店の顧客は多いが、松戸店までわざわざ来てもらうわけにはいかない。そこで導入したのがオンラインによる遠隔サポートだった。
もともと既存のビデオ通話などを使って、松戸店にいながら柏店に来店したユーザーとオンラインによる遠隔コミュニケーションをとっていたが、今後に期待しているのは「Oticon RemoteCare(オーティコン・リモートケア)」だ。
店舗で調整後に補聴器を購入したユーザーのスマホと補聴器の調整ソフトがインストールされた店舗のPCを接続し、画面越しにオンラインで対話しながら2回目以降の補聴器の調整をビデオチャットとテキストを使って行うことができるサービスで、岡田社長の求めていたものと合致した。
補聴器メーカー各社がこのリモートケアのサービスを展開し始めているが、オーティコン・リモートケアはタイムラグが少ないという特徴がある。調整した補聴器のデータを一度クラウドにアップロードして、それを顧客がダウンロードするという仕組みを採用しているサービスが多いなかで、オーティコン・リモートケアは瞬時にデータが同期する。これによってオンラインでも対面と変わらないサービスをスムーズに提供することができる。
オーティコン・リモートケアは販売店とユーザーがそれぞれ専用のアプリを用いるが、特別な設備などは必要ない。岡田社長が気に入っているのが、インターフェース。ビデオ通話と補聴器の調整画面を同時に表示できるのでスムーズに顧客とコミュニケーションをとることができるという。
実際にリモートケアを行っている様子を見学させてもらった。まずは岡田社長と補聴器ユーザーがそれぞれアプリにログイン、ビデオ通話に接続してサポートがスタートする。岡田社長は店舗の調整用PCを使用し、ユーザー側はスマートフォンで対応。やりとりはオンラインだからという特別なものはなく、対面と変わらない。
見学したケースでは「補聴器が聞こえづらい」というユーザーの要望を聞き、岡田社長が補聴器を調整した。最近の補聴器は遠隔からソフトウェアを操作することができ、ユーザーに聞こえ具合を確認してもらいながら細かくセッティングを整えていく。
スマホのアプリでは店舗側で行っている調整の進捗状況を確認できるほか、テキスト入力によるチャット機能も搭載している。「オンラインだと聞き取りづらいという場合もあるので、そのときはテキストを送るチャットを活用して意思疎通が図れる」という。
ユーザーの満足いく状態になったら調整は終了。ケースバイケースだが1回のケアにかかる時間は20~30分程度で、むしろ対面よりも短くて済むこともある。店舗側は業務効率化、ユーザー側はご指名のスタッフのいる店舗を訪問する時間の節約ができ、それぞれにメリットは大きいようだ。
「今後このサービスを利用するユーザーが増え、自宅や職場など好きな場所から気軽にご利用いただきたい」と岡田社長は語る。店舗では音環境が整備されているため、調整のしやすさと言う意味でメリットはあった。一方で、ユーザーが具体的に困っている職場や家庭の音環境の再現が難しい、という点が課題となっていたが、その問題解決にもリモートケアがソリューションの一つになりそうだ。
日本では特に補聴器装用率が他の国より低く、必要な人に補聴器が届いていないという長年の課題がある。補聴器は購入後すぐに快適に使用できる機器ではなく、ユーザー本人の聴力や好みに合わせ、慣れるまでに専門家の手により複数回にわたる調整が必要になる。それゆえに一般的に購入後も、数週間から数か月にわたり定期的に購入した店舗を訪れ、カウンセリングを受けながら細かい調整を行う必要がある。
補聴器に関心はあるが、調整を行うために何度もお店を訪問することにわずらわしさを感じている人や遠方に住んでいる人などに対して、リモートケアサービスであれば店舗を訪問する手間が省け、気軽に相談や調整が受けられるようになる。ブレイクスルーはオンラインを活用した新しい様式から生まれるかもしれない。(BCN・大蔵 大輔)