【インターコムの進化論 独立系日の丸ソフト会社の歩みとこれから・6】 突然のコロナショックを受けて、たった数カ月でわれわれを取り巻く状況が一変した。コロナ不況が世界を襲い、それぞれの産業を支えるソフト開発業界にも影響が及んでいる。本連載ではこれまでにインターコムの38年間の歩みを紹介してきたが、最終回では、高橋啓介会長兼社長CEOのリモートインタビューの様子をお伝えする。昨今の状況に伴うビジネスの変化、そして今後の方向性について語ってもらった。
――昨年度は業績、ビジネスモデルがともに好調に推移していたようですが、新型コロナ問題を受けて状況に変化はありましたか。
2020年3月期は、最高に業績が良かったですね。コロナに関係なく、数年前からテレワークや働き方改革という形で製品展開を進めてきたところが、時代にマッチしているのだと思います。売上高では昨対比10%以上アップ、強みである営業利益率は約20%と良い数字を維持しています。また、自社開発ソフトの販売方式も、従来型のパッケージの売り切りモデルから、サブスクリプションモデルへと少しずつ移行させてきたのですが、それがしっかりと形になってきて、クラウドサービスや保守といったストックビジネスの売上比率が全体の50%を超えるようになりました。新年度は4月が好調でしたが、5月以降が正直なところまだ見えていないという状況です。
IT資産管理、情報漏えい対策ツールの「MaLion(マリオン)シリーズ」、特にクラウドで提供している「MaLionCloud(マリオンクラウド)」ですね。MaLionは、時代の要求に合わせてセキュリティやIT資産管理など切り口を変えて販売展開し、最近は働き方改革の視点で、テレワークも想定した従業員のPCのモニタリング、見える化という部分を強調していたのですが、そのさなかに新型コロナ感染症対策で、急きょテレワークの実施が求められるようになり、より注目されているという状況です。
一般的なテレワーク形態としては、VPN経由で自宅のPCから会社のPCを操作するという形や、会社のPCをノート型にして外に持ち出すという形がありますが、その際には社内情報や個人情報を社外で取り扱うというリスクが生じます。当然、情報漏えいを防がなければならないということで、MaLionにお声がけいただいています。MaLionはモニタリングだけでなく残業管理もでき、テレワークに必要な機能もたくさん入っています。その結果、引き合いは3倍に増えています。
――ほかの製品群の状況はいかがでしょう。
やはり働き方改革という部分で、オンライン商談向けの「RemoteOperator Sales(リモートオペレーター セールス)」が注目されています。コロナ対策としてこれからは対面でなくて非対面営業という方向性が出ている中、テレワークで営業ができるツールとして、多くの企業で導入が検討されています。「まいと~くFAX」も調子がいいですね。FAXで受発注をしている会社はまだまだ多く、そこが急にネットやEDIの取引に進んでいけるかといっても難しいですから。
偶然ですが、現在のインターコムには在宅勤務などのテレワークや働き方改革にぴったりのプロダクトが揃っていて、それがコロナ禍で開花しつつあるように感じられます。ただ一方で、従来のレガシー系の製品はライフサイクルが短くなっています。そこでやはり欠かせないのが、新製品の開発です。
現在、新しい製品を2種類開発しています。今年度いっぱいかかりそうですが、製品を作ったら自分たちで使ってみて、そこでうまくいったら販売します。まずは、オフィスから紙をなくす「ペーパーレス化」に向けたソフト、もう一つは「コミュニケーションツール」です。コロナ禍によってテレワークやリモート会議が普及しましたが、その際にコミュニケーションをスムーズに進めていくためのソフトですね。現在のリモート会議で感じている不便を改善するような機能も考えています。ともにコロナ禍を受けて出てきた問題を解決するようなソフトになります。早ければ年度内に発表したいと考えています。
――自社での働き方に関してはいかがですか。
社内の働き方改革も進めていかなければなりません。インターコムも例えば営業部門ではオープンスペースを設けて、フレキシブルな働き方を進めていきます。一番の問題は通勤時間です。在宅勤務やリモートワークが本当にいいかはまだ分かりませんが、少なくとも混んでいる電車に乗って会社に出てくることが仕事ではないですから。在宅勤務や時差出勤を併用して、営業部門のオンライン商談はもちろん、既存の自社製品は全部テレワークに活用します。自社で使わない製品は売らない。それで効率が上がれば売りやすいですし、ノウハウと一緒に売ることもできます。
また、南房総市のグループ会社、インターコムR&Dセンターで新しいオフィスを建設していて、今年中に完成する予定です。今は主にコールセンター業務の拠点ですが、開発機能を強化して100人体制に拡充したいので、それに向けてこれから採用を進める計画です。地元の自治体からも期待されていて、東京に出た学生が地元に戻ってくるというモデルを作りたいと考えています。
インターコムの戦略には、「成長サイクルエンジン」という概念があります。エンジンの構造ですが、燃料は「製品」です。中のパーツとして「販売」があり、そこにはパートナーやビジネスモデルが含まれます。それぞれのパーツがうまく回り始めていて、これまでの活動の中で成長サイクルエンジンが確立されてきたのが好調の要因です。
そういった意味で今期は、新しい製品の開発が重要になると考えています。すでに販売体制は整いつつあり、全国のパートナーとの協力関係が進んでいます。拠点については、地方の営業拠点に大阪と名古屋に加え昨年度は福岡と仙台にも展開しましたが、さらに増やしていく計画です。教育やセミナー、サポート、現地でのインストールなどのサービスも増やしています。そこに燃料となる新製品が増えれば、さらにエンジンの馬力が大きくなり、より力強く回っていきます。withコロナの時代になっても、そこは変わることはありません。
――40年近く続いているソフトウェア企業としてのこだわりの部分はいかがでしょうか。
IPOには興味はありませんが、同じ製品を作っている競争の中では絶対に負けたくありません。MaLionでも、RemoteOperatorでも、そのカテゴリーの中で絶対に負けたくない。会社を大きくするのではなく、製品を大きくしたい。そのこだわりの積み重ねでここまできました。ですから、今のような状況になったところであまり慌てる必要はないのです。世の中はどうなるか分かりませんが、今まで通りのことをしていけばいい。「成長サイクルエンジン」を回していくだけです。これまで何度も危機を乗り越えてきましたし、今の状況は、インターコムにとってはチャンスだと捉えています。
――昨年度は業績、ビジネスモデルがともに好調に推移していたようですが、新型コロナ問題を受けて状況に変化はありましたか。
2020年3月期は、最高に業績が良かったですね。コロナに関係なく、数年前からテレワークや働き方改革という形で製品展開を進めてきたところが、時代にマッチしているのだと思います。売上高では昨対比10%以上アップ、強みである営業利益率は約20%と良い数字を維持しています。また、自社開発ソフトの販売方式も、従来型のパッケージの売り切りモデルから、サブスクリプションモデルへと少しずつ移行させてきたのですが、それがしっかりと形になってきて、クラウドサービスや保守といったストックビジネスの売上比率が全体の50%を超えるようになりました。新年度は4月が好調でしたが、5月以降が正直なところまだ見えていないという状況です。
時代の要請でMaLionCloudが急成長
――その中で好調な製品は。IT資産管理、情報漏えい対策ツールの「MaLion(マリオン)シリーズ」、特にクラウドで提供している「MaLionCloud(マリオンクラウド)」ですね。MaLionは、時代の要求に合わせてセキュリティやIT資産管理など切り口を変えて販売展開し、最近は働き方改革の視点で、テレワークも想定した従業員のPCのモニタリング、見える化という部分を強調していたのですが、そのさなかに新型コロナ感染症対策で、急きょテレワークの実施が求められるようになり、より注目されているという状況です。
一般的なテレワーク形態としては、VPN経由で自宅のPCから会社のPCを操作するという形や、会社のPCをノート型にして外に持ち出すという形がありますが、その際には社内情報や個人情報を社外で取り扱うというリスクが生じます。当然、情報漏えいを防がなければならないということで、MaLionにお声がけいただいています。MaLionはモニタリングだけでなく残業管理もでき、テレワークに必要な機能もたくさん入っています。その結果、引き合いは3倍に増えています。
――ほかの製品群の状況はいかがでしょう。
やはり働き方改革という部分で、オンライン商談向けの「RemoteOperator Sales(リモートオペレーター セールス)」が注目されています。コロナ対策としてこれからは対面でなくて非対面営業という方向性が出ている中、テレワークで営業ができるツールとして、多くの企業で導入が検討されています。「まいと~くFAX」も調子がいいですね。FAXで受発注をしている会社はまだまだ多く、そこが急にネットやEDIの取引に進んでいけるかといっても難しいですから。
偶然ですが、現在のインターコムには在宅勤務などのテレワークや働き方改革にぴったりのプロダクトが揃っていて、それがコロナ禍で開花しつつあるように感じられます。ただ一方で、従来のレガシー系の製品はライフサイクルが短くなっています。そこでやはり欠かせないのが、新製品の開発です。
「withコロナ」時代の働き方を支援する新製品を開発
――具体的な動きはあるのでしょうか。現在、新しい製品を2種類開発しています。今年度いっぱいかかりそうですが、製品を作ったら自分たちで使ってみて、そこでうまくいったら販売します。まずは、オフィスから紙をなくす「ペーパーレス化」に向けたソフト、もう一つは「コミュニケーションツール」です。コロナ禍によってテレワークやリモート会議が普及しましたが、その際にコミュニケーションをスムーズに進めていくためのソフトですね。現在のリモート会議で感じている不便を改善するような機能も考えています。ともにコロナ禍を受けて出てきた問題を解決するようなソフトになります。早ければ年度内に発表したいと考えています。
――自社での働き方に関してはいかがですか。
社内の働き方改革も進めていかなければなりません。インターコムも例えば営業部門ではオープンスペースを設けて、フレキシブルな働き方を進めていきます。一番の問題は通勤時間です。在宅勤務やリモートワークが本当にいいかはまだ分かりませんが、少なくとも混んでいる電車に乗って会社に出てくることが仕事ではないですから。在宅勤務や時差出勤を併用して、営業部門のオンライン商談はもちろん、既存の自社製品は全部テレワークに活用します。自社で使わない製品は売らない。それで効率が上がれば売りやすいですし、ノウハウと一緒に売ることもできます。
また、南房総市のグループ会社、インターコムR&Dセンターで新しいオフィスを建設していて、今年中に完成する予定です。今は主にコールセンター業務の拠点ですが、開発機能を強化して100人体制に拡充したいので、それに向けてこれから採用を進める計画です。地元の自治体からも期待されていて、東京に出た学生が地元に戻ってくるというモデルを作りたいと考えています。
順調に回り出した「成長サイクルエンジン」
――先行きが不透明な状況で、なかなか物事が計画通りに進むというわけにはいかないようにも思えますが。インターコムの戦略には、「成長サイクルエンジン」という概念があります。エンジンの構造ですが、燃料は「製品」です。中のパーツとして「販売」があり、そこにはパートナーやビジネスモデルが含まれます。それぞれのパーツがうまく回り始めていて、これまでの活動の中で成長サイクルエンジンが確立されてきたのが好調の要因です。
そういった意味で今期は、新しい製品の開発が重要になると考えています。すでに販売体制は整いつつあり、全国のパートナーとの協力関係が進んでいます。拠点については、地方の営業拠点に大阪と名古屋に加え昨年度は福岡と仙台にも展開しましたが、さらに増やしていく計画です。教育やセミナー、サポート、現地でのインストールなどのサービスも増やしています。そこに燃料となる新製品が増えれば、さらにエンジンの馬力が大きくなり、より力強く回っていきます。withコロナの時代になっても、そこは変わることはありません。
――40年近く続いているソフトウェア企業としてのこだわりの部分はいかがでしょうか。
IPOには興味はありませんが、同じ製品を作っている競争の中では絶対に負けたくありません。MaLionでも、RemoteOperatorでも、そのカテゴリーの中で絶対に負けたくない。会社を大きくするのではなく、製品を大きくしたい。そのこだわりの積み重ねでここまできました。ですから、今のような状況になったところであまり慌てる必要はないのです。世の中はどうなるか分かりませんが、今まで通りのことをしていけばいい。「成長サイクルエンジン」を回していくだけです。これまで何度も危機を乗り越えてきましたし、今の状況は、インターコムにとってはチャンスだと捉えています。