コンピューターゲームを競技としてプレイ・観戦する「eスポーツ」が話題になって久しい。ゲームをプレイし勝つことで賞金を得る「プロゲーマー」の存在も広く知られるようになってきた。ただ、実態が見えない、と思う人もいるだろう。プロゲーマーとは、一体、どのような職業なのか。プロゲーミングチーム「Rascal Jester(ラスカルジェスター)」のリーグ・オブ・レジェンド部門で活躍する選手たちに“プロの条件”を聞いた。
例えば、「高い実力があっても、味方を非難するばかりで自省しなかったり、SNSなどで配慮のないコメントを公開したりする人のプレイは、見ていても気分が良くない」Ninja(ニンジャ)選手は言う。そういった人と、痛快な活躍をみせる優しくて明るい人がいたら、後者が人気になるのは想像に難くない。プロには、ゲームのプレイ内容だけでなく、あらゆる面を見られているという自覚が必要ということだ。勝つことはもちろん、真摯な姿勢や礼儀を忘れないことが大事だという。
自覚があれば、自ずと身に付く技能もある。あらゆる場面で必要不可欠なコミュニケーション能力だ。特に苦しい局面では、お互いを思いやる心が全体の士気を左右する。和を乱すような暴言を吐けば、チームの士気も下がってしまう。Art(アート)選手は「チームで戦う以上、コミュニケーションには気を配っている」と語る。社会で欠かせない能力は、プロにとって、なおさら欠かせないという。
存在感をアピールしてファンを増やすことも、eスポーツ業界の存続・発展につながる大切な仕事だ。チームの収入は、大部分をスポンサー料が占めている。ファンが増えればスポンサーにとっては広告効果の向上が期待できるばかりか、チーム自身のグッズや“投げ銭”による収入アップが見込める。収益性がアップすれば、将来的にチームとしての新たなコンテンツの開発や、チームの体制強化につながることもある。ファンには、さらにエキサイティングな体験が待っているはずだ。
「すべての仕事に共通することだが、一つの事を続けていたら、スランプに陥ることや集中力が切れてしまうこともある。人に見られるのが重圧に感じる時もある。ただ、仕事なので放り出すわけにはいかない。苦しいときがあるのは否定できない」。Ninja選手の話を聞いて、他の選手もうなずいていた。
そんな時の対処方法はさまざまだ。一旦、ゲームから離れて休憩する選手がいれば、ほかのゲームで遊ぶ選手もいる。行き詰まったときは頭をリフレッシュして、メリハリをつけることが、練習や試合でパフォーマンスを発揮するコツだという。
負担を感じることはあるが、リーグ・オブ・レジェンド自体は一様に「楽しい」と答える。プロになったことで「多くの人に応援してもらえるのが嬉しい」と、viviD(ヴィヴィッド)選手はモチベーションの源を明かす。極め続けているからこそ得られる特権だろう。
健全なメンタルを保つのもプロの仕事だ。観客のなかには、選手を批判する人もいる。痛烈なコメントを浴びせられることもあり、メンタルへのダメージを負うこともある。自身に対する批判について、hachamecha選手は「なるべく見ないようにしている」と対策を語る。「コーチやチームメイトとの反省会で客観的な視点からしっかり見直しているので、玉石混合の批判でモチベーションを下げないよう心がけている」という。
とはいえ、どうしても目に入ってしまうのも事実。「正直、ショックを受けることもある」とCogcog(コグコグ)選手はこぼした。辛いこともあるが、先に進むには乗り越えるしか道は無い。
Ninja選手は、「eスポーツに関わり続けたい」と考えている。Art選手やCogcog選手らも同様だ。いま、支えてくれている人たちと一緒に、この業界を発展させていくと意気込む。なかでもviviD選手は、「eスポーツが楽しめる場所を増やすため、カフェを経営したい」と、eスポーツ人口の拡大に前のめりだ。
ラスカルジェスターのLOL部門はリーグ・オブ・レジェンドの国内リーグに参加している。狙うのは「優勝」と、メンバーは口をそろえる。日本最強のチームになれるかどうか、今後の活躍に注目したい。(BCN・南雲 亮平)
現役が考えるプロの定義
「まず勝つことが基本」と語るのは、hachamecha(ハチャメチャ)選手だ。一つのゲームを極めた人が結果的にプロになれるわけだ。これだけでも難易度は極めて高いが、ただ勝つだけでは足りない。「観客にとって、見て楽しいプレイも同時に求められる。言動や姿勢を含めて、憧れを集める存在がプロ」なのだという。例えば、「高い実力があっても、味方を非難するばかりで自省しなかったり、SNSなどで配慮のないコメントを公開したりする人のプレイは、見ていても気分が良くない」Ninja(ニンジャ)選手は言う。そういった人と、痛快な活躍をみせる優しくて明るい人がいたら、後者が人気になるのは想像に難くない。プロには、ゲームのプレイ内容だけでなく、あらゆる面を見られているという自覚が必要ということだ。勝つことはもちろん、真摯な姿勢や礼儀を忘れないことが大事だという。
自覚があれば、自ずと身に付く技能もある。あらゆる場面で必要不可欠なコミュニケーション能力だ。特に苦しい局面では、お互いを思いやる心が全体の士気を左右する。和を乱すような暴言を吐けば、チームの士気も下がってしまう。Art(アート)選手は「チームで戦う以上、コミュニケーションには気を配っている」と語る。社会で欠かせない能力は、プロにとって、なおさら欠かせないという。
存在感をアピールしてファンを増やすことも、eスポーツ業界の存続・発展につながる大切な仕事だ。チームの収入は、大部分をスポンサー料が占めている。ファンが増えればスポンサーにとっては広告効果の向上が期待できるばかりか、チーム自身のグッズや“投げ銭”による収入アップが見込める。収益性がアップすれば、将来的にチームとしての新たなコンテンツの開発や、チームの体制強化につながることもある。ファンには、さらにエキサイティングな体験が待っているはずだ。
楽しいばかりが“仕事”じゃない
プロゲーマーに対する誤解も解いておきたい。Ninja選手は、「ゲームをプレイするだけでお金がもらえるなんて楽、というのは幻想」と自らの体験をもとに話す。Ninja選手は、出身国である韓国で放送されているeスポーツのテレビ番組を幼いころに視聴して、プロゲーマーを目指すようになったのだという。「選手がかっこいい」という憧れのほか、「ゲームは好きだから、好きなことだけやっていれば楽しそう」とも考えていたようだ。しかし、現実は甘くなかった。「すべての仕事に共通することだが、一つの事を続けていたら、スランプに陥ることや集中力が切れてしまうこともある。人に見られるのが重圧に感じる時もある。ただ、仕事なので放り出すわけにはいかない。苦しいときがあるのは否定できない」。Ninja選手の話を聞いて、他の選手もうなずいていた。
そんな時の対処方法はさまざまだ。一旦、ゲームから離れて休憩する選手がいれば、ほかのゲームで遊ぶ選手もいる。行き詰まったときは頭をリフレッシュして、メリハリをつけることが、練習や試合でパフォーマンスを発揮するコツだという。
負担を感じることはあるが、リーグ・オブ・レジェンド自体は一様に「楽しい」と答える。プロになったことで「多くの人に応援してもらえるのが嬉しい」と、viviD(ヴィヴィッド)選手はモチベーションの源を明かす。極め続けているからこそ得られる特権だろう。
健全なメンタルを保つのもプロの仕事だ。観客のなかには、選手を批判する人もいる。痛烈なコメントを浴びせられることもあり、メンタルへのダメージを負うこともある。自身に対する批判について、hachamecha選手は「なるべく見ないようにしている」と対策を語る。「コーチやチームメイトとの反省会で客観的な視点からしっかり見直しているので、玉石混合の批判でモチベーションを下げないよう心がけている」という。
とはいえ、どうしても目に入ってしまうのも事実。「正直、ショックを受けることもある」とCogcog(コグコグ)選手はこぼした。辛いこともあるが、先に進むには乗り越えるしか道は無い。
プロゲーマーのその後
「プロにとっては目の前の1試合に全力で臨むことが何より大切なこと」(hachamecha選手)だ。一方で、ゲームタイトルによっては反射神経や動体視力の衰えから、選手寿命が短いとされるものもある。引退後について考えることは、自然な流れだ。ラスカルジェスターの中にも、現役を退いた後を真剣に考える選手はいる。そんな時、“芸は身を助く”とはよく言ったもので、チームで培ったコミュニケーション能力や課題解決力、選手としての経験を生かせる場所はある。Ninja選手は、「eスポーツに関わり続けたい」と考えている。Art選手やCogcog選手らも同様だ。いま、支えてくれている人たちと一緒に、この業界を発展させていくと意気込む。なかでもviviD選手は、「eスポーツが楽しめる場所を増やすため、カフェを経営したい」と、eスポーツ人口の拡大に前のめりだ。
ラスカルジェスターのLOL部門はリーグ・オブ・レジェンドの国内リーグに参加している。狙うのは「優勝」と、メンバーは口をそろえる。日本最強のチームになれるかどうか、今後の活躍に注目したい。(BCN・南雲 亮平)