ファーウェイ・ジャパン新社長に聞いた、Apple、Googleに次ぐ「第三のプラットフォーム」戦略
ファーウェイ・ジャパンが6月2日に開催した発表会の中で、ハードの新製品はもとより、ソフトウェアの独自アプリストア「AppGallery」を国内で本格的に展開するとアピールしたことは重要だ。AppleのApp StoreやGoogleのGoogle Playに次ぐ「第三の選択肢」として、スマートフォン(スマホ)のプラットフォーマーになる意思表示をしたからだ。BCNの単独インタビューに応じたファーウェイ・ジャパン新社長の楊涛(Yang Tao、ヤンタオ)ファーウェイデバイス日本・韓国リージョンプレジデントに、ファーウェイが掲げる「1+8+N」や「ファーウェイHiLink」を含めたプラットフォームやエコシステム戦略について聞いた。
取材・文/細田 立圭志 写真/松嶋優子
楊涛プレジデント(以下、敬称略) 今年はスマホのほかにモバイルPCやタブレット端末、ウェアラブル端末、完全ワイヤレスイヤホンなどの新製品を続々と日本市場に投入していく計画です。ファーウェイはスマートライフを実現するための「1+8+N」という製品戦略を掲げています。これを日本にも浸透させていきたいです。
――「1+8+N」は、昨年6月に中国・上海で開催した「CES ASIA 2019」でコンシューマービジネスを統括するコンシューマー・ビジネス・グループの邵洋(Shao Yang)最高戦略責任者が発表していますね。あらためて教えてください。
楊 「1」はスマホを意味し、それが中軸となり取り囲むようにして8カテゴリーの周辺機器がつながります。具体的にはタブレット、PC、スマートスクリーン、スマートテレマティクス、VRグラス、スマートウェアラブル、スマートイヤホン、スマートスピーカーの八つです。さらにその外側に位置する「N」は、パートナー企業のスマート家電やスマートライフに関連する製品、アプリ、サービスなどとのつながりを意味します。
実は「+(プラス)」にも意味があります。これらの製品をネットワークでつなぐ際の通信プロトコル「ファーウェイHiLink」でつながるという意味です。「ファーウェイスマートライフ」というアプリがあり、それを使うと朝起きたとき、在宅しているとき、家に帰ってきたとき、掃除をするときなど、ユーザーの生活シーンから選ぶと機器同士が連携して操作できます。
――すべてがファーウェイの製品でなくても、リンクするのでしょうか。
楊 他社製品ともつながります。例えば、寝る前に設定したスマートスピーカーのアラームで朝起きた時に、音声だけでアラームを止めたり、電気をつけたり、カーテンをあけたりといった一連のことが操作できます。これらのすべての製品をファーウェイ1社でカバーすることはできないので、パートナー企業とともにエコシステムを一緒につくっていくことで、みんなで力を合わせながら消費者のスマートライフの利便性を高めていきたいと考えています。
楊 AppGalleryはファーウェイのアプリマーケットです。App StoreやGoogle Playのようなものです。さまざまなアプリを操作できます。一方のファーウェイHiLinkは通信プロトコルです。テレビとスマホ、スマホと照明器具などモノとモノの間で意思疎通ができるようにするための共通の仕様です。HiLinkという同じ言語を使って、情報のやりとりをするのです。そのため、ファーウェイHiLinkはすべてのパートナー企業にオープンにしています。
――6月2日の発表会では、日本のユーザーにもなじみのある多くのアプリが揃っていましたが、日本でAppGalleryがスタートしたのはいつからなのでしょうか。
楊 日本では19年9月の東京ゲームショウで初めて開発者向けにオープンしました。さらに厳密にいうと、それ以前は18年から限られた範囲内で試行的にスタートしていました。実はAppGalleryはすでに10年前から中国国内で開始して実績を積み重ねながら、海外市場でもパートナー企業とエコシステムを構築して推進してきました。長年の運用実績があるので、日本で展開するにあたっては、技術や運用面の準備が整っている状態です。
AppGalleryを推進していく上での私の目標は、利便性を高めながらアプリにアクセスしやすくすることです。さらにコンテンツプロバイダーや開発者に向けて、第三の選択肢として提供して協業関係を築いていきたいです。だれかがコントロールするのではなく、あくまでも参加者のみんなが力を合わせて、ともに発展していくという調和的な協業の実現を目指します。
――普及させるにはアプリ開発などパートナー企業との関係も重要になってきますね。
楊 昨年11月に、日本のアプリ開発者をサポートするための「シャイニングスタープログラム」を発足して、全世界で10億ドルの資金を用意しました。まずはコンテンツプロバイダーや開発者の全員がWin-Winで利用できるプラットフォームをつくり、これを通してファーウェイのスマホユーザーがいろんなアプリにアクセスしやすくなります。
――AppGalleryの発表では、ダウンロードやインストールをしなくても使えたり、端末のメモリを消費しない分、使えるアプリ数に制限がないなど新しい機能が示されました。ほかにも差異化ポイントはありますか。
楊 アプリの数が短期間でこれだけ増えた要因とも関係していますが、実は各国に専門のエコシステムチームを立ち上げて、このチームにエンジニアやサービス担当者、業務推進の担当者など全てのスタッフが参加しています。各国でAppGalleryの登録に何か問題があれば、すぐに駆け付けられる組織体制をつくりました。トラブルが起きれば、われわれの方から動いていけるので、この点も他社のプラットフォームと違うところだと思います。
消費者がいちいちアプリをインストールしなくても、サクッと使える機能は「Quick App」と呼んでますが、実は消費者の利便性を高めるだけでなく、開発者がよりスピーディーに開発できるというメリットも生んでいるのです。今後も継続してお客様に好かれ、販売員の皆様が販売しやすい製品を投入していきます。(終わり)
取材・文/細田 立圭志 写真/松嶋優子
ファーウェイの「1+8+N」戦略とは
――2019年5月に日本に着任して1年の助走期間を設けて、呉波元プレジデントから引き継がれたとのことですが、あらためて自らのミッションについてお聞かせください。楊涛プレジデント(以下、敬称略) 今年はスマホのほかにモバイルPCやタブレット端末、ウェアラブル端末、完全ワイヤレスイヤホンなどの新製品を続々と日本市場に投入していく計画です。ファーウェイはスマートライフを実現するための「1+8+N」という製品戦略を掲げています。これを日本にも浸透させていきたいです。
――「1+8+N」は、昨年6月に中国・上海で開催した「CES ASIA 2019」でコンシューマービジネスを統括するコンシューマー・ビジネス・グループの邵洋(Shao Yang)最高戦略責任者が発表していますね。あらためて教えてください。
楊 「1」はスマホを意味し、それが中軸となり取り囲むようにして8カテゴリーの周辺機器がつながります。具体的にはタブレット、PC、スマートスクリーン、スマートテレマティクス、VRグラス、スマートウェアラブル、スマートイヤホン、スマートスピーカーの八つです。さらにその外側に位置する「N」は、パートナー企業のスマート家電やスマートライフに関連する製品、アプリ、サービスなどとのつながりを意味します。
実は「+(プラス)」にも意味があります。これらの製品をネットワークでつなぐ際の通信プロトコル「ファーウェイHiLink」でつながるという意味です。「ファーウェイスマートライフ」というアプリがあり、それを使うと朝起きたとき、在宅しているとき、家に帰ってきたとき、掃除をするときなど、ユーザーの生活シーンから選ぶと機器同士が連携して操作できます。
――すべてがファーウェイの製品でなくても、リンクするのでしょうか。
楊 他社製品ともつながります。例えば、寝る前に設定したスマートスピーカーのアラームで朝起きた時に、音声だけでアラームを止めたり、電気をつけたり、カーテンをあけたりといった一連のことが操作できます。これらのすべての製品をファーウェイ1社でカバーすることはできないので、パートナー企業とともにエコシステムを一緒につくっていくことで、みんなで力を合わせながら消費者のスマートライフの利便性を高めていきたいと考えています。
AppGalleryは10年以上の運用実績がある
――ファーウェイHiLinkとAppGalleryは、どのようにつながっていくのでしょうか。楊 AppGalleryはファーウェイのアプリマーケットです。App StoreやGoogle Playのようなものです。さまざまなアプリを操作できます。一方のファーウェイHiLinkは通信プロトコルです。テレビとスマホ、スマホと照明器具などモノとモノの間で意思疎通ができるようにするための共通の仕様です。HiLinkという同じ言語を使って、情報のやりとりをするのです。そのため、ファーウェイHiLinkはすべてのパートナー企業にオープンにしています。
――6月2日の発表会では、日本のユーザーにもなじみのある多くのアプリが揃っていましたが、日本でAppGalleryがスタートしたのはいつからなのでしょうか。
楊 日本では19年9月の東京ゲームショウで初めて開発者向けにオープンしました。さらに厳密にいうと、それ以前は18年から限られた範囲内で試行的にスタートしていました。実はAppGalleryはすでに10年前から中国国内で開始して実績を積み重ねながら、海外市場でもパートナー企業とエコシステムを構築して推進してきました。長年の運用実績があるので、日本で展開するにあたっては、技術や運用面の準備が整っている状態です。
AppGalleryを推進していく上での私の目標は、利便性を高めながらアプリにアクセスしやすくすることです。さらにコンテンツプロバイダーや開発者に向けて、第三の選択肢として提供して協業関係を築いていきたいです。だれかがコントロールするのではなく、あくまでも参加者のみんなが力を合わせて、ともに発展していくという調和的な協業の実現を目指します。
――普及させるにはアプリ開発などパートナー企業との関係も重要になってきますね。
楊 昨年11月に、日本のアプリ開発者をサポートするための「シャイニングスタープログラム」を発足して、全世界で10億ドルの資金を用意しました。まずはコンテンツプロバイダーや開発者の全員がWin-Winで利用できるプラットフォームをつくり、これを通してファーウェイのスマホユーザーがいろんなアプリにアクセスしやすくなります。
――AppGalleryの発表では、ダウンロードやインストールをしなくても使えたり、端末のメモリを消費しない分、使えるアプリ数に制限がないなど新しい機能が示されました。ほかにも差異化ポイントはありますか。
楊 アプリの数が短期間でこれだけ増えた要因とも関係していますが、実は各国に専門のエコシステムチームを立ち上げて、このチームにエンジニアやサービス担当者、業務推進の担当者など全てのスタッフが参加しています。各国でAppGalleryの登録に何か問題があれば、すぐに駆け付けられる組織体制をつくりました。トラブルが起きれば、われわれの方から動いていけるので、この点も他社のプラットフォームと違うところだと思います。
消費者がいちいちアプリをインストールしなくても、サクッと使える機能は「Quick App」と呼んでますが、実は消費者の利便性を高めるだけでなく、開発者がよりスピーディーに開発できるというメリットも生んでいるのです。今後も継続してお客様に好かれ、販売員の皆様が販売しやすい製品を投入していきます。(終わり)