久々に携帯オーディオを手に入れた。最近は、DAP(Digital Audio Player)というらしいが、いずれにせよ、持ち運んで音楽を再生するデジタル製品のことだ。イヤホンで音楽を楽しむ際、今や大多数の人たちはスマートフォン(スマホ)の音楽再生機能を使っていると思うが、音にこだわったり、スマホより手軽に使えたりすることから、専用機を好む人も少なくない。今回購入したのは、HidizsというメーカーのAP80 Proだ。中国・新センから電車で小一時間の東莞にあるので、ざっくり深センメーカーということにしておく。
AP80 Proは、4月に発売されたばかりの新製品。実は同社のAP80も一度紹介したことがある。その上位モデルだ。AP80シリーズは、質感が高いほぼ正方形のアルミ筐体に2.4インチディスプレイを備え、ポケットに入れて使っても邪魔にならないのが特徴。
Proなしモデルは、ダイレクトショップで139ドル(米ドル・以下同)で購入できる。デザインも格好良くて高音質だ。気に入ってずっと使っていた。新バージョンのAP80 Proは169ドルと30ドル高いが、その分機能が強化されている。発売直後に早速購入して、その真価を確かめた。
AP80 Proの最大の特徴は、「バランス接続」に対応したことだ。これによって、ざっくりいうと音質の大幅改善が期待できる。AP80をはじめ、ほとんどの機器のイヤホンジャックは、左右のステレオ音声の信号を送る際、プラス側が左と右で独立しているが、マイナス側が共通になっている。つまり接点は、右プラス、左プラス、左右マイナスの三つしかない。
左右共通接点があるため、左右の音が多少混ざる「クロストーク」という現象が起き、音が少し濁ってしまう。しかし、バランス接続では、接点が4つあり左右のプラスマイナスが完全に独立している。このため、左右の音が独立し、よりクリアに聞こえる、というわけだ。前からこのバランス接続のプレーヤーを使ってみたいと思っていた。
AP80 Proは、左右の音を独立して処理するため、デジタル信号をアナログに変換して、人間の耳に聞こえるように処理するDAC(Digital Analog Converter)を2個備えている。ES9218Pという、エントリーモデルの携帯オーディオによく採用されているチップだが、Proなしモデルは左右共通で1個だった。これだけでとても音が良くなるような気がする。
実際に聴いてみると、Proなしモデルに比べ、確かに左右のチャンネルの分離は明確になり音がクリアになった。音のリアル感とパンチが増した印象だ。
いつもの音源セットをシャッフルして聴いていると、ビルエヴァンスのピアノでトニーベネットが歌うマイフーリッシュハートがかかった。ボーカルの存在感が特に素晴らしく、思わず聴き入ってしまった。
ポップスでもそのリアル感は際立つ。竹内アンナのalrightを聴いたところ、スピード感のあるドラムスやギターのバックに芯のあるしっかりしたボーカルが乗ってくる感じが素晴らしい。音がいいオーディオ製品は聴き疲れしないものだが、長時間聴いていても、まったく快適に聴いていられるのもいい。
ただ、このバランス接続、専用のヘッドホンやイヤホンを用意しなければならない。端子がそもそも異なるのだ。一番普及しているオーディオのプラグは直径3.5mmのいわゆるミニプラグだが、バランス接続は接点数が多いため別規格。ざっくり4.4mmと2.5mmの2種類のプラグがある。AP80 Proは、このうち2.5mmのバランスジャックを備える。通常の3.5mmの通常イヤホン用のジャックもついているので、普通のイヤホンをつないでも楽しめる。
バランス接続用イヤホンをまだ持っていなかったため、普段使っているShureのカナル式イヤホン「425」のケーブルを、バランス接続対応のケーブルに付け替えて聴いた。Shureのカナル式イヤホンは、MMCXプラグでコードが着脱式になっているので、こうした変更が容易だ。ヘッドバンド式のヘッドホンだと、バランス接続するには改造する必要があるものが多く大変だ。最初から対応製品を買った方がいい。
これまで、基本的にはバランス接続が従来方式より「優れている」としてきたが、オーディオは好みの世界。必ずしもバランス接続の音が好きな人ばかりではない。そもそも、世の中にあふれている多くの音源は、ヘッドホンなら普通のヘッドホンで聴くことを想定して制作されている。「現在一番使われているヘッドホンはiPhone付属のものだから、多くの音源はそれに合わせてチューニングされている」という噂もあるくらいだ。バランス接続のヘッドホンで聴かれることを前提にしているものは少ないだろう
そのため、制作者の意図と異なる音になる場合もある。DACを2個使うことで、それぞれのチップの微妙な差が音に影響することもあるだろう。とはいえ、いい音を求めるなら、一度はバランス接続のオーディオ機器を試してみてほしい。新たな発見があるかもしれない。
AP80 Proは、高音質のロスレスフォーマットでは、PCM 384kHz/32bit、FLAC、APE、WMA、WAV、ALACをサポート。DSDにも対応する。ProなしモデルではPCM変換で64/128のみの対応だったが、ProモデルではDSD 64/128/256のハードウェアデコードに対応した。もちろん、MP3などの圧縮フォーマット音源の再生も可能。価格も、このクラスとしては、かなりお買い得だ。
Bluetoothでスマホとつなぐと、再生する楽曲の選択や音量調整などをスマホで操作することもできる。逆にスマホの音をBluetoothで飛ばして聴くこともできる。FMラジオもあり、必要かどうか若干疑問だが歩数計もついている。価格が手ごろで音がよく機能が満載。今、私イチ押しの携帯オーディオだ。(BCN・道越一郎)
AP80 Proは、4月に発売されたばかりの新製品。実は同社のAP80も一度紹介したことがある。その上位モデルだ。AP80シリーズは、質感が高いほぼ正方形のアルミ筐体に2.4インチディスプレイを備え、ポケットに入れて使っても邪魔にならないのが特徴。
Proなしモデルは、ダイレクトショップで139ドル(米ドル・以下同)で購入できる。デザインも格好良くて高音質だ。気に入ってずっと使っていた。新バージョンのAP80 Proは169ドルと30ドル高いが、その分機能が強化されている。発売直後に早速購入して、その真価を確かめた。
AP80 Proの最大の特徴は、「バランス接続」に対応したことだ。これによって、ざっくりいうと音質の大幅改善が期待できる。AP80をはじめ、ほとんどの機器のイヤホンジャックは、左右のステレオ音声の信号を送る際、プラス側が左と右で独立しているが、マイナス側が共通になっている。つまり接点は、右プラス、左プラス、左右マイナスの三つしかない。
左右共通接点があるため、左右の音が多少混ざる「クロストーク」という現象が起き、音が少し濁ってしまう。しかし、バランス接続では、接点が4つあり左右のプラスマイナスが完全に独立している。このため、左右の音が独立し、よりクリアに聞こえる、というわけだ。前からこのバランス接続のプレーヤーを使ってみたいと思っていた。
AP80 Proは、左右の音を独立して処理するため、デジタル信号をアナログに変換して、人間の耳に聞こえるように処理するDAC(Digital Analog Converter)を2個備えている。ES9218Pという、エントリーモデルの携帯オーディオによく採用されているチップだが、Proなしモデルは左右共通で1個だった。これだけでとても音が良くなるような気がする。
実際に聴いてみると、Proなしモデルに比べ、確かに左右のチャンネルの分離は明確になり音がクリアになった。音のリアル感とパンチが増した印象だ。
いつもの音源セットをシャッフルして聴いていると、ビルエヴァンスのピアノでトニーベネットが歌うマイフーリッシュハートがかかった。ボーカルの存在感が特に素晴らしく、思わず聴き入ってしまった。
ポップスでもそのリアル感は際立つ。竹内アンナのalrightを聴いたところ、スピード感のあるドラムスやギターのバックに芯のあるしっかりしたボーカルが乗ってくる感じが素晴らしい。音がいいオーディオ製品は聴き疲れしないものだが、長時間聴いていても、まったく快適に聴いていられるのもいい。
ただ、このバランス接続、専用のヘッドホンやイヤホンを用意しなければならない。端子がそもそも異なるのだ。一番普及しているオーディオのプラグは直径3.5mmのいわゆるミニプラグだが、バランス接続は接点数が多いため別規格。ざっくり4.4mmと2.5mmの2種類のプラグがある。AP80 Proは、このうち2.5mmのバランスジャックを備える。通常の3.5mmの通常イヤホン用のジャックもついているので、普通のイヤホンをつないでも楽しめる。
バランス接続用イヤホンをまだ持っていなかったため、普段使っているShureのカナル式イヤホン「425」のケーブルを、バランス接続対応のケーブルに付け替えて聴いた。Shureのカナル式イヤホンは、MMCXプラグでコードが着脱式になっているので、こうした変更が容易だ。ヘッドバンド式のヘッドホンだと、バランス接続するには改造する必要があるものが多く大変だ。最初から対応製品を買った方がいい。
これまで、基本的にはバランス接続が従来方式より「優れている」としてきたが、オーディオは好みの世界。必ずしもバランス接続の音が好きな人ばかりではない。そもそも、世の中にあふれている多くの音源は、ヘッドホンなら普通のヘッドホンで聴くことを想定して制作されている。「現在一番使われているヘッドホンはiPhone付属のものだから、多くの音源はそれに合わせてチューニングされている」という噂もあるくらいだ。バランス接続のヘッドホンで聴かれることを前提にしているものは少ないだろう
そのため、制作者の意図と異なる音になる場合もある。DACを2個使うことで、それぞれのチップの微妙な差が音に影響することもあるだろう。とはいえ、いい音を求めるなら、一度はバランス接続のオーディオ機器を試してみてほしい。新たな発見があるかもしれない。
AP80 Proは、高音質のロスレスフォーマットでは、PCM 384kHz/32bit、FLAC、APE、WMA、WAV、ALACをサポート。DSDにも対応する。ProなしモデルではPCM変換で64/128のみの対応だったが、ProモデルではDSD 64/128/256のハードウェアデコードに対応した。もちろん、MP3などの圧縮フォーマット音源の再生も可能。価格も、このクラスとしては、かなりお買い得だ。
Bluetoothでスマホとつなぐと、再生する楽曲の選択や音量調整などをスマホで操作することもできる。逆にスマホの音をBluetoothで飛ばして聴くこともできる。FMラジオもあり、必要かどうか若干疑問だが歩数計もついている。価格が手ごろで音がよく機能が満載。今、私イチ押しの携帯オーディオだ。(BCN・道越一郎)