2019年5月にソニーの吉田憲一郎社長兼CEOとマイクロソフトのサティア ナデラCEOが握手する写真と共に、両社がゲームのクラウド配信サービスの共同開発で提携したことをリリース発表した「事件」は、世界を驚かせた。あれから1年、両社の協業はゲームにとどまらずAIや半導体領域まで深まっている。
2020年5月19日のソニーの経営方針説明会で吉田社長兼CEOは、「マイクロソフトとの提携は非常に多岐にわたっている。その一つがゲームネットワークサービスにおけるクラウドストリーミングサービスにおける協業。チップセットやネットワーク、ダークタイムソリューションの問題意識を共有して議論を重ねている」と語り、ゲーム領域における両社の良好な関係をアピールした。
ダークタイムソリューションについては、勝本徹専務R&D担当が説明した。ゲームユーザーの多くは夜間にプレーするため、サーバーの負荷が夜に集中する。そのため「サーバーをどのように効率的に使うかが、ビジネス上もポイントになる。この点のディスカッションを深めている」と語った。また、マイクロソフトのクラウドAIプラットフォームである「Microsoft Azure」を「素晴らしいクラウド技術」と評価した。
現在は、将来のストリーミングゲームに向けて「クラウド上のサーバーや、ユーザーまでつなぐネットワーク技術、操作するUI(ユーザーインターフェース)の三つについてディスカッションをしている」と勝本専務は語った。
会見では、両社がAIスマートカメラと映像解析を使ったソリューションの構築でも協業を開始したと発表。具体的には、ソニーの半導体積層技術を使ったインテリジェントビジョンセンサー「IMX500」に、マイクロソフトのAzure AI機能を組み込み、スマートカメラなどで撮影した映像を解析するソリューションを法人向けに開発していくという。
IMX500は、これまでの画像や映像をとらえるイメージセンサーに、AIエンジンのメモリーを積層した。これにより、IMX500を搭載した機器であるエッジ側で情報を解析できるようになる。ソニーがイメージセンサーではなく、「ビジョンセンサー」とあえて呼ぶのも、これまでの単なる画像処理から、AI処理による情報解析技術が加わる意味の大きさを強調するためだろう。
ビジョンセンサーを使えば、Azureのクラウドネットワークに情報を吸い上げる際に、必要のないデータをセンサー側で削減して高速化したり、プライバシーやセキュリティーを強固にしたり、コストや消費電力を削減したりすることができる。
具体的なソリューションとしては、小売業ならスマートカメラを使って欠品した商品を棚に補充するタイミングを検出したり、レジ待ちの長さに応じて最適なレジカウンター数を検知したりできる。また、メーカーなら現場で事故が発生する前にリアルタイムに危険を特定することなどができるという。
「中長期的にも強力な協業相手」(勝本専務)と語るように、ソニーとマイクロソフトの深い関係によって、今後もあらゆる産業から新しいアイデアの芽が生まれそうだ。(BCN・細田 立圭志)
2020年5月19日のソニーの経営方針説明会で吉田社長兼CEOは、「マイクロソフトとの提携は非常に多岐にわたっている。その一つがゲームネットワークサービスにおけるクラウドストリーミングサービスにおける協業。チップセットやネットワーク、ダークタイムソリューションの問題意識を共有して議論を重ねている」と語り、ゲーム領域における両社の良好な関係をアピールした。
ダークタイムソリューションについては、勝本徹専務R&D担当が説明した。ゲームユーザーの多くは夜間にプレーするため、サーバーの負荷が夜に集中する。そのため「サーバーをどのように効率的に使うかが、ビジネス上もポイントになる。この点のディスカッションを深めている」と語った。また、マイクロソフトのクラウドAIプラットフォームである「Microsoft Azure」を「素晴らしいクラウド技術」と評価した。
現在は、将来のストリーミングゲームに向けて「クラウド上のサーバーや、ユーザーまでつなぐネットワーク技術、操作するUI(ユーザーインターフェース)の三つについてディスカッションをしている」と勝本専務は語った。
AI搭載のビジョンセンサーとAzureがつながる
ソニーとマイクロソフトの協業領域はゲームのクラウドネットワークだけにとどまらず、AIやセンシングの半導体分野にまで拡大している。会見では、両社がAIスマートカメラと映像解析を使ったソリューションの構築でも協業を開始したと発表。具体的には、ソニーの半導体積層技術を使ったインテリジェントビジョンセンサー「IMX500」に、マイクロソフトのAzure AI機能を組み込み、スマートカメラなどで撮影した映像を解析するソリューションを法人向けに開発していくという。
IMX500は、これまでの画像や映像をとらえるイメージセンサーに、AIエンジンのメモリーを積層した。これにより、IMX500を搭載した機器であるエッジ側で情報を解析できるようになる。ソニーがイメージセンサーではなく、「ビジョンセンサー」とあえて呼ぶのも、これまでの単なる画像処理から、AI処理による情報解析技術が加わる意味の大きさを強調するためだろう。
ビジョンセンサーを使えば、Azureのクラウドネットワークに情報を吸い上げる際に、必要のないデータをセンサー側で削減して高速化したり、プライバシーやセキュリティーを強固にしたり、コストや消費電力を削減したりすることができる。
具体的なソリューションとしては、小売業ならスマートカメラを使って欠品した商品を棚に補充するタイミングを検出したり、レジ待ちの長さに応じて最適なレジカウンター数を検知したりできる。また、メーカーなら現場で事故が発生する前にリアルタイムに危険を特定することなどができるという。
「中長期的にも強力な協業相手」(勝本専務)と語るように、ソニーとマイクロソフトの深い関係によって、今後もあらゆる産業から新しいアイデアの芽が生まれそうだ。(BCN・細田 立圭志)