入口で除菌用マットとアルコール消毒の徹底
4月14日からマルチメディアAkibaや梅田など15店舗で一時休業していたヨドバシカメラは、他の店舗で一部売り場の休業と短縮営業を実施したのと同じ形で4月24日から営業を再開した。
カメラ、時計、ゲーム、おもちゃ、映像音楽ソフト、アウトドア用品、スポーツ用品などの売り場を一時休業する一方、「社会生活を維持する上で必要な商品や生活必需品」としてPC、白物家電、テレビ、オーディオ、自転車などは適切な感染防止策をとった上で販売する。なお、アウトレット京急川崎と横浜駅前スマートフォン・携帯売場は引き続き一時休業のままだ。
4月27日午前11時前、JR秋葉原駅を降りてヨドバシカメラ マルチメディアAkibaがある中央改札と昭和通り改札に向かうと、いつもは利用客や働く人で多い通路はガラガラで、20人もいないほどだった。
店舗には、入口と出口の専用通路が別々に設けられていて、数人の従業員が感染防止のために来店客同士の距離を2メートル以上保つようにお願いしていた。また、急ぎで購入する予定の商品をヒアリングしながら売り場を案内することで、間違って休業中の商品を購入する客まで入店しないよう工夫していた。
入口には大きな看板を掲出し、東京都の休止要請を受けて休業している売り場が分かるようにしたり、急ぎでない客にはネット通販のヨドバシ・ドット・コムの利用を促したりと、営業と休業している売り場の違いが分かるようにしている。
さらにネットで注文した商品を店舗で受け取るための受付場所と、メインの入口とを別々に設けて密集を回避。入店する際は、メインとネット用の両方の入口に敷いた除菌用マットで靴の裏側を除菌する。その先には手のアルコール消毒液が並び、この二つの処理をしっかり行ってからでないと入店できない仕組みだ。
店舗を利用する顧客について原雄一副店長に聞くと、「冷蔵庫が壊れたから買いにくるお客様や、ネットで商品を2機種ぐらいに絞ってから最終的に店舗で確認しに来るお客様の利用などが多い」という。また「自分の家で設置する際に問題がないが、工事が必要か心配で来店してから購入するお客様もいる」と話す。
冷蔵庫や洗濯機などは壊れたら買い替えるか修理するしかないが、いくらネットが便利とはいえ、冷蔵庫やエアコン、有機ELテレビなどの高額な家電製品をネットで購入するのにためらう客も多いだろう。
ほかにも、家で過ごす際に使う商品や在宅勤務、リモートワーク需要が急増していることから、ノートPCや周辺機器、ネットワーク関連商品などの購入も目立っているという。
「リモートワークでは、PC搭載のカメラだと自宅の生活感が出てしまうので、外付けの長いUSBケーブルを買い求める方もいる。在宅時間をVODの大画面テレビで過ごすためにFire TVやChromecastも売れている」など、顧客にとって急ぎとなる新型コロナ対策の需要に応える。
親の在宅勤務だけでなく、休校中の子どもがタブレット端末を使うシーンも増えているため、家庭内のネットワーク環境を整える必要性も生じている。
飛沫防止シートやフェースガードも
もちろん、こうした社会生活を維持する上で必要となる家電製品の要望に対応するには、顧客の安全と同じぐらい従業員の安全を守ることが重要だ。レジに飛沫防止シートを設けたほか、レジの順番待ちをする際の距離を保つため、床に立ち位置を示すシートが貼られていた。
また、商品の設置や工事、契約書類をチェックするためにヒアリングが必要となる円卓では、フェースガードをつけて接客する対策も取り入れている。
ほかにも、エスカレーターに乗る際に2メートル以上の距離をとる社会的距離(ソーシャルディスタンス)をお願いするPOPや、当面の間、マッサージ機の試用ができないPOPを掲載したり、展示商品の掃除を徹底したりするなど、店内の至るところで新型コロナの対策が見られた。
もちろん、記者が取材で入館する際も、その場で検温して熱がないことを確認することも欠かさなかった。
新型コロナ感染拡大防止の外出自粛要請が短期間で解除されることは、誰もが願うところだ。マルチメディアAkibaの店内も、お馴染みの軽快なテーマソングは流れることなく、入店した顧客がどこのフロアに行くかの案内放送が流れるだけの静けさだった。
緊急事態の中、それでも必要なニーズに応えるために粛々と業務を遂行しつつ、決して多くはない来店客に笑顔を絶やさずに接する従業員の姿が印象的だった。
それでも仮に収束が長引く場合、さらにテレワーク需要は拡大するだろうし、猛暑による熱中症対策でエアコンの供給や工事が例年通りにひっ迫することは容易に予想される。そうした場合も密集、密閉、密着の「3密」を回避しながら、いかに混乱しない売り場をつくるかの知恵が試されている。(BCN・細田 立圭志)