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震災から9年…家電市場に与えた影響は? モバイルバッテリー市場の10年を振り返る

 東日本大震災から今日で9年を迎える。被害の大きかった地域の方とは比べるべくもないが、都内在住の記者も電車が止まって立ち往生し、自宅まで3時間歩いて帰ったのを思い出す。そのときに困ったのが、スマートフォンのバッテリーだ。

 当時はiPhone 4を使用していたが、帰宅途中で電池切れしてしまい、連絡手段がなくなってしまった。同じような状況に陥った人は多かっただろう。いまや携帯することが普通になったモバイルバッテリーの市場が急拡大した要因には、少なからず震災の影響がある。
 
モバイルバッテリー市場 直近10年の販売台数指数の推移

 家電量販店やECショップのPOSデータを集計する「BCNランキング」で10年分(2010年2月~2020年)の市場動向を振り返ってみた。2010年2月の販売台数を「100」とし、どのタイミングでどれだけ成長したのかを分析した。

 10年前はスマホの普及率がそれほど高くなかったこともあり、モバイルバッテリー市場の規模も大きくはなかった。順調に拡大はしていたが、跳ね上がったのは11年3月以降だ。11年3月のモバイルバッテリーの販売台数は1年前の10年3月と比べて5.6倍、前月の11年2月と比べても2倍以上増加している。

 当時のデータでは過去に類をみない異常値だったが、以降、市場は急激に成長。基本はスマホ市場の拡大に呼応しての伸びとみられるが、12年3月、13年3月、14年3月と震災のあった月に大きく数字が跳ねていることから、震災を機に万一の備えとしてモバイルバッテリーが強く認識されるようになったことは間違いない。

 市場規模がピークに達したのは12年12月。10年2月と比較すると20倍以上も販売台数が伸びている。以降は右肩下がりで推移するが、やはり震災のあった14年3月はピークに近い数字を記録している。

 震災絡み以外で販売台数が急増する現象もあった。16年7月のスマホゲーム「ポケモンGO」のリリースだ。GPSを利用したゲーム仕様上、バッテリー消費量が多く、モバイルバッテリーは飛ぶように売れた。16年7月の販売台数は16年6月の3倍に達している。

 ポケモンGO特需以降は市場規模は安定期に入るが、18年9月に再び異常値をみせる。同月に発生した北海道胆振東部地震の影響だ。北海道全域が停電するブラックアウトが発生し、モバイルバッテリーの需要が再燃した。19年9月は1日が「震災の日」ということも相まって、年間でもっとも多い販売台数を記録している。(BCN・大蔵大輔)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計しているPOSデータベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。