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5Gで変わるエレクトロニクスの形が見えた! 2020年CESの展示を振り返る

時事ネタ

2020/01/15 20:30

オートモーティブとホームをAlexaがつなぐ

 アマゾンのAlexaはオートモーティブと「クルマのためのサービス」をつなぐAIプラットフォームとしても大きく育ちつつある。今年のCESで、アマゾンがオートモーティブ関連のイノベーションを集めたブースは見応えがあった。

 北米ではAlexaをビルトインする自動車をランボルギーニやキャデラックがローンチする。筆者もアマゾンのブースでキャデラック「CT5」に試乗して、ドライバーが音声操作でAlexaと対話しながらルートマップを探したり、離れた自宅のスマート家電機器の操作、給油代金をAmazon Payで支払うデモンストレーションを体験した。
 
2020年からアマゾンAlexaがオートモーティブにビルトインされる形で広がりそうだ。
Alexaにルートマップを検索してもらったり、自宅のスマート家電の操作も頼める
ゼネラルモーターズのキャデラック「CT5」がAlexaをビルトインしたコネクテッドカーとして
アマゾンのブースに展示されていた

 アマゾンがコネクテッドカー向けに開拓するサービスはAlexaをビルトインした自動車に限らず、アマゾンが北米で発売したあらゆる自動車をAlexa対応にできる車載AIアダプター「Echo Auto」を載せた自動車でも利用できる。本機はコネクテッドカーの敷居を下げて、サービスへの関心を集める起爆剤になりそうだ。Echo Autoと対応するサービスの日本語化、日本上陸を楽しみに待ちたい。
 
スマートフォンに接続して、あらゆるクルマをコネクテッド化できる「Echo Auto」

 今後も家と自動車のどちらか一方にコネクテッドライフの中心が偏ることはないと思うが、5Gの本格スタートに伴って、まずはネットワークにつながる自動車の技術革新が進むと思う。その後に今はまだ伸び悩むスマートホームにも「コネクテッドカーに対応する製品やサービス」が入り込むことによって、互いの普及を後押しするのではないだろうか。

ソニーの立体音響が自動運転モビリティにも広がる

 モビリティが自動走行を実現するころまでには、映像・音響まわりのリッチなコンテンツサービスも出揃うだろう。ソニーが2019年のCESで発表した独自の立体音響技術「360 Reality Audio」は、今年、ソニーが自社で外装とコネクテッドカーに求められるプラットフォームを試作したコンセプトカーに組み込まれる形で、初めて車載向けの展開がお披露目された。
 
ソニーが自社のセンサー技術、エンターテインメントのノウハウを注入した「VISION-S」の
コンセプトカーをCESのブースに展示した

 筆者もコンセプトカーに試乗してその音を体験した。サラウンド対応のカーオーディオはとりわけ珍しいものではないが、360 Reality Audioはオブジェクトとして360度全天球の音響空間に音を配置して自由自在に動かせる。車体の壁を越えて外から聞こえてくるような、力強く伸びやかなサウンドはカーサウンドの既成価値を超えるリアリティを感じさせた。
 
ソニーのコンセプトカーに試乗して「360 Reality Audio」の立体サウンドを体験した。
車の外から音が飛び込んでくるような迫力のサラウンド体験がソニーらしい先進性を感じさせる

 自動運転が実現する時代には、迫力たっぷりのサラウンドをクルマの中で目を閉じて聴くことも当たり前になるのかもしれない。現在ポータブルヘッドホンやイヤホンの技術として注目されている「ノイズキャンセリング」や「外音取り込み」も、人がハンドルから手を離してドライブを楽しめるようになったときには、車内空間でエンターテインメントを快適に楽しむために欠かせない技術として脚光を浴びることになりそうだ。

「共創」から再び「競争」の時代へ

 オートモーティブに比べると、筆者は今年のCESではホームエンターテインメント系の展示に心動かされることが少なかったと思う。8Kについてはいくつかの大きなアナウンスもあったが、それでもテレビの新製品が発売されるということ以外に、あの大画面・高画質のエンターテインメントを5G時代にどうやって活用するのか、目新しい提案に出会えなかった。

 ただ、次世代の映像デバイスの中にとても刺激的なアイテムもあった。パナソニックが開発を進めるHDR対応の眼鏡型VRデバイスだ。本機で視聴したHDR映像は画素構造が見てわからないほど一体感にあふれていた。人物を被写体に捉えた映像を見てみると、まるでその人が目の前に立っているような感覚に息を呑んだ。
 
パナソニックの眼鏡型VRデバイスのプロトタイプ
 
4K相当のHDR映像が楽しめる。ディスプレイは米Kopin社と共同で開発したマイクロ有機LEパネル

 仁和寺の金堂内部をキャプチャしたリアルなCGの世界を、自分の足で歩きながら回れるバーチャルミュージアムを想定したコンテンツが特に圧巻だった。筆者はこれまでにもVRデバイスを取材して楽しいと感じたことはもちろんあるのだが、パナソニックの試作機は格段に画質が良いため、ある程度長い時間映像を見ていても疲労感がなかった。

 眼鏡とほとんど変わらない軽快な装着感を実現しているから、コンテンツへの没入感も損なわれない。パナソニックでは5Gの商用サービスを見据えて、配信型のVR映像コンテンツを本機単体、またはPCやスマホなどのモバイル端末と組み合わせて視聴できるデバイスとして製品化の検討を進めるそうだ。

 VRエンターテインメントが5Gの時代に革新を遂げるための鍵はどうやら「画質の向上」にあるようだ。このように競争軸が顕在化すれば、今後来年のCESまでに画質を追求したVRのハードとコンテンツが続々と出揃うかもしれない。これまでに次世代の5Gエンターテインメントを「共創」する道とパートナーを模索してきた各社が、それぞれの相方探しを終え、これからはユニークなアイデアと技術をぶつけ合わせて再び「競争」するときが訪れたのではないだろうか。(フリーライター・山本敦)

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