この10年ほど、初日の出の写真を撮りに出かけている。最初の年は、ありがたい「ご来光」で一年をスタートするのはとてもいいアイディアだと思っていた。しかし、正直言ってあまりオススメはできない。どうしてもという奇特な人がいるなら、ベテランの「初日の出カメラマン」から、ちょっとしたアドバイスをお届けしたい。
まず、初日の出の撮影は寒い。とても寒い。日の出の時刻と同時に、なるべく早く太陽を拝みたいというのが人情。周りに何もない海岸や、湖、海上などで迎えることになる。もれなく吹きさらしの場所だ。冷たい風がもろに肌を刺す。日の出直前は最も気温が下がる時間帯でもあり、待っている間の冷たい風も確実に体に悪い。これでもかというぐらい、暖かい格好で出かけたい。
限られた撮影ポイントから撮ることが予測されるなら、場所取り用に安い三脚を持参する。例えば、富士本栖湖リゾートの竜神池。富士山頂からの日の出が湖面に映る、いわゆる「ダブルダイヤモンド富士」が拝める場所として人気だ。
太陽は富士山の頂上あたりから上るため、日の出の時間は遅く8時頃。しかし、何百人ものカメラマンが3時、4時頃から続々と集まり始め、狭い場所にひしめき合って撮影する。撮影場所を確保するには三脚が必須だ。しかも、湖面が凍らないよう直前まで水をまいている。人間三脚として場所取りをすると、もろにその水を浴びる羽目になるので注意が必要だ。
太陽が出てこない場合もある。1月1日は晴れの特異日でもあり、この10年、雨が降ったのが1度ぐらいしかなかった。問題は雲だ。ついさっきまで雲一つない快晴の空だったと思えば、日の出直前に突如として雲がわき上がり、東の空を覆うことも少なくない。こうなると、「いつ太陽が出たか」という最も重要な判断がつかなくなってしまう。
結局、雲間からちらっと光が見えたら、ご来光として拝んで帰るというスタイルになる。なんとも後味の悪い初日の出だ。撮影のチャンスも逃す。ちらっと見えた光をご来光としても、絵にはならない。しばらくして完全に明るくなってから撮影しても、これまた間抜けな絵になってしまう。雲には要注意だが、こればっかりはどうしようもない。
はっきり言って、初日の出の写真自体はつまらない。そもそも、元旦とはいえ365日のうちの一つの朝に過ぎない。特別の日の出になるわけでもなく、物珍しいわけでもない。基本的に、だだっ広い場所で、太陽が出てくるのを撮るだけなので、変化のつけようもない。太陽以外の要素をいろいろと工夫して写し込んで、なんとか変化のある写真になる。過去の初日の出の写真を見返しても、「あれ、これどこだっけ」状態になってしまいがちだ。なるべく、街のスナップも撮って、場所を記録しておいた方がいい。
そして、初日の出撮影の最大のデメリットは、一年のスタートともいえる元日をほぼ棒に振ることだ。私のパターンだと、だいたい1時から3時ぐらいに出かけて6時前に現場着。しばらく待機した後、初日の出を拝んで、できれば朝食をとり温泉にでもつかり、少し休憩して帰路につく。新宿あたりまで戻ってきて、昼食。家に帰ると2時ぐらいだ。
大晦日からほとんど寝ていないのでヘトヘト。気がつくと寝落ちてしている、という具合。結局、正月らしい雰囲気をあまり味わうこともなく、1年の最初の日が終わる。分かっていても、1年過ぎると忘れてしまい、結局撮影に出かけることになる……という繰り返しだ。
それでも、初日の出を見に行きたい、撮影したいというなら、特別列車がある。JR東日本なら、初日の出に合わせた臨時列車が何本も出る。全席指定のため、早めに座席を確保したい。高尾・大宮・新宿から出るのは「犬吠初日の出号」。銚子で銚子電鉄に乗り換えてと犬吠まで行けば、犬吠埼で初日の出を拝める。帰りに成田に寄れば、成田山のお参りも可能だ。
新宿から出る「外房初日の出号」は、太海、和田浦、千倉とそれぞれ初日の出スポットに停車。5時25分が終点千倉着だ。同じく新宿から出る「伊東初日の出号」は、根府川駅で45分停車して、車内からも初日の出を拝める。品川から出る「伊豆初日の出号」は、片瀬白田駅で45分停車して、白田海岸から初日の出が拝める。
徹夜して移動して撮影してヘトヘトになって帰る。それでも、初日の出を拝むときには、多少なりともありがたい気分に浸れる。2020年も懲りずに出かける予定だ。(BCN・道越一郎)
まず、初日の出の撮影は寒い。とても寒い。日の出の時刻と同時に、なるべく早く太陽を拝みたいというのが人情。周りに何もない海岸や、湖、海上などで迎えることになる。もれなく吹きさらしの場所だ。冷たい風がもろに肌を刺す。日の出直前は最も気温が下がる時間帯でもあり、待っている間の冷たい風も確実に体に悪い。これでもかというぐらい、暖かい格好で出かけたい。
限られた撮影ポイントから撮ることが予測されるなら、場所取り用に安い三脚を持参する。例えば、富士本栖湖リゾートの竜神池。富士山頂からの日の出が湖面に映る、いわゆる「ダブルダイヤモンド富士」が拝める場所として人気だ。
太陽は富士山の頂上あたりから上るため、日の出の時間は遅く8時頃。しかし、何百人ものカメラマンが3時、4時頃から続々と集まり始め、狭い場所にひしめき合って撮影する。撮影場所を確保するには三脚が必須だ。しかも、湖面が凍らないよう直前まで水をまいている。人間三脚として場所取りをすると、もろにその水を浴びる羽目になるので注意が必要だ。
太陽が出てこない場合もある。1月1日は晴れの特異日でもあり、この10年、雨が降ったのが1度ぐらいしかなかった。問題は雲だ。ついさっきまで雲一つない快晴の空だったと思えば、日の出直前に突如として雲がわき上がり、東の空を覆うことも少なくない。こうなると、「いつ太陽が出たか」という最も重要な判断がつかなくなってしまう。
結局、雲間からちらっと光が見えたら、ご来光として拝んで帰るというスタイルになる。なんとも後味の悪い初日の出だ。撮影のチャンスも逃す。ちらっと見えた光をご来光としても、絵にはならない。しばらくして完全に明るくなってから撮影しても、これまた間抜けな絵になってしまう。雲には要注意だが、こればっかりはどうしようもない。
はっきり言って、初日の出の写真自体はつまらない。そもそも、元旦とはいえ365日のうちの一つの朝に過ぎない。特別の日の出になるわけでもなく、物珍しいわけでもない。基本的に、だだっ広い場所で、太陽が出てくるのを撮るだけなので、変化のつけようもない。太陽以外の要素をいろいろと工夫して写し込んで、なんとか変化のある写真になる。過去の初日の出の写真を見返しても、「あれ、これどこだっけ」状態になってしまいがちだ。なるべく、街のスナップも撮って、場所を記録しておいた方がいい。
そして、初日の出撮影の最大のデメリットは、一年のスタートともいえる元日をほぼ棒に振ることだ。私のパターンだと、だいたい1時から3時ぐらいに出かけて6時前に現場着。しばらく待機した後、初日の出を拝んで、できれば朝食をとり温泉にでもつかり、少し休憩して帰路につく。新宿あたりまで戻ってきて、昼食。家に帰ると2時ぐらいだ。
大晦日からほとんど寝ていないのでヘトヘト。気がつくと寝落ちてしている、という具合。結局、正月らしい雰囲気をあまり味わうこともなく、1年の最初の日が終わる。分かっていても、1年過ぎると忘れてしまい、結局撮影に出かけることになる……という繰り返しだ。
それでも、初日の出を見に行きたい、撮影したいというなら、特別列車がある。JR東日本なら、初日の出に合わせた臨時列車が何本も出る。全席指定のため、早めに座席を確保したい。高尾・大宮・新宿から出るのは「犬吠初日の出号」。銚子で銚子電鉄に乗り換えてと犬吠まで行けば、犬吠埼で初日の出を拝める。帰りに成田に寄れば、成田山のお参りも可能だ。
新宿から出る「外房初日の出号」は、太海、和田浦、千倉とそれぞれ初日の出スポットに停車。5時25分が終点千倉着だ。同じく新宿から出る「伊東初日の出号」は、根府川駅で45分停車して、車内からも初日の出を拝める。品川から出る「伊豆初日の出号」は、片瀬白田駅で45分停車して、白田海岸から初日の出が拝める。
徹夜して移動して撮影してヘトヘトになって帰る。それでも、初日の出を拝むときには、多少なりともありがたい気分に浸れる。2020年も懲りずに出かける予定だ。(BCN・道越一郎)