補聴器ユーザーも音楽を楽しめる社会に――今年で6回目となるオーティコン補聴器の「オーティコン みみともコンサート2019」
補聴器メーカーのオーティコン補聴器は、メーカーとして補聴器を開発・販売するだけでなく、補聴器ユーザーがより暮らしやすい社会を目指し、さまざまな活動に取り組んでいる。11月1日にはその一環として「みみともコンサート2019」が開催された。当日のコンサートの様子をレポートする。
みみともコンサートが開催されるのは、今年で6回目。東京・銀座の王子ホールには、国内ラボラトリー見学後のユーザーだけでなく、多くのクラシックファンが招かれた。「健聴者と難聴者が同じように音楽を楽しめる」ということが、みみともコンサートにおける重要なコンセプトになっている。
そのための工夫が、ホールに張り巡らされた補聴器ユーザーの音楽鑑賞をサポートする「磁気ループシステム」だ。特定の範囲をワイヤーで囲み、その内部に磁気誘導アンプを通して変換した電気信号を送る仕組みで、テレコイル内蔵の補聴器や人工内耳に音を感知させることで、ハウリングを気にせず直接音を届けることができる。
また、情報保障(身体的なハンディキャップにより情報を収集することができない人に対して代替手段を用いて情報を提供すること)の取り組みとして実施されているのが「要約筆記」だ。ステージのバックヤードに複数の要約筆記者が控え、コンサート中の音声情報をリアルタイムでモニターに文字起こししている。
出演するのは、ダニエル・ゲーデ氏が率いるウィーン・フーゴ・ヴォルフ三重奏団。ゲーデ氏は前ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団でコンサートマスターを務めた人物。日本の各地を回りチャリティーコンサートを行っており、みみともコンサートの「誰もが音楽を楽しめる空間をつくりたい」という理念に共感し、1回目からほぼ毎回、みみともコンサートに参加している。
コンサートで奏でられたのは、ポピュラーなクラシックだけではない。多彩なジャンルの音楽に加えて、「天城越え」のような日本伝統の音楽を編曲した楽曲も披露し、観客を魅了した。会場には数人の未就学児も来場していたが、バラエティ豊かな構成を飽きることなく楽しんでいる様子だった。
プログラム終了後にはオーティコン補聴器の木下聡プレジデントが出演した3人にインタビューを行い、その日の演奏を振り返った。木下プレジデントが注目したのは、みみともコンサートではお決まりになっている「日本文化の色濃い楽曲のアレンジ」だ。質問に対して、ゲーデ氏は「文化は異なっていても魅力的なメロディに変わりない」とコメント。編曲者の高橋幸代氏に対する感謝とともに、演奏中に感じた新鮮な喜びを語った。
今回のコンサートに招待された補聴器装用者の方たちは、直前にオーティコン補聴器の国内ラボラトリーも見学。日頃からオーティコンの補聴器を愛用するユーザーが招かれた。ここで作られているのは、オーダーメイドの耳あな補聴器。一から制作するだけでなく、不具合のあった補聴器の修理なども行っている。貴重な機会にユーザーからは担当者に多くの質問が投げかけられた。
コンサート後にラボ見学とコンサートについて話を聞くと、磁気ループシステムや情報保障について、さまざまな意見があがった。海外で生活をしていたことがあるという参加者は「日本では難聴者に対する取り組みが遅れている」と指摘。「今回のコンサートで採用されていたような配慮がもっと広まってくれるとうれしい」と現状の改善を望んだ。
健聴者はそもそも磁気ループシステムや情報保障自体を知らないことも多い。これは難聴者の苦労や困りごとに対して理解が圧倒的に不足しているということだ。「健聴者と難聴者が同じように音楽を楽しめる」というコンサートのコンセプトは、一部の空間だけでなく、これから社会全体に求められていく課題といえそうだ。(BCN・大蔵 大輔)
みみともコンサートが開催されるのは、今年で6回目。東京・銀座の王子ホールには、国内ラボラトリー見学後のユーザーだけでなく、多くのクラシックファンが招かれた。「健聴者と難聴者が同じように音楽を楽しめる」ということが、みみともコンサートにおける重要なコンセプトになっている。
そのための工夫が、ホールに張り巡らされた補聴器ユーザーの音楽鑑賞をサポートする「磁気ループシステム」だ。特定の範囲をワイヤーで囲み、その内部に磁気誘導アンプを通して変換した電気信号を送る仕組みで、テレコイル内蔵の補聴器や人工内耳に音を感知させることで、ハウリングを気にせず直接音を届けることができる。
また、情報保障(身体的なハンディキャップにより情報を収集することができない人に対して代替手段を用いて情報を提供すること)の取り組みとして実施されているのが「要約筆記」だ。ステージのバックヤードに複数の要約筆記者が控え、コンサート中の音声情報をリアルタイムでモニターに文字起こししている。
出演するのは、ダニエル・ゲーデ氏が率いるウィーン・フーゴ・ヴォルフ三重奏団。ゲーデ氏は前ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団でコンサートマスターを務めた人物。日本の各地を回りチャリティーコンサートを行っており、みみともコンサートの「誰もが音楽を楽しめる空間をつくりたい」という理念に共感し、1回目からほぼ毎回、みみともコンサートに参加している。
コンサートで奏でられたのは、ポピュラーなクラシックだけではない。多彩なジャンルの音楽に加えて、「天城越え」のような日本伝統の音楽を編曲した楽曲も披露し、観客を魅了した。会場には数人の未就学児も来場していたが、バラエティ豊かな構成を飽きることなく楽しんでいる様子だった。
プログラム終了後にはオーティコン補聴器の木下聡プレジデントが出演した3人にインタビューを行い、その日の演奏を振り返った。木下プレジデントが注目したのは、みみともコンサートではお決まりになっている「日本文化の色濃い楽曲のアレンジ」だ。質問に対して、ゲーデ氏は「文化は異なっていても魅力的なメロディに変わりない」とコメント。編曲者の高橋幸代氏に対する感謝とともに、演奏中に感じた新鮮な喜びを語った。
今回のコンサートに招待された補聴器装用者の方たちは、直前にオーティコン補聴器の国内ラボラトリーも見学。日頃からオーティコンの補聴器を愛用するユーザーが招かれた。ここで作られているのは、オーダーメイドの耳あな補聴器。一から制作するだけでなく、不具合のあった補聴器の修理なども行っている。貴重な機会にユーザーからは担当者に多くの質問が投げかけられた。
コンサート後にラボ見学とコンサートについて話を聞くと、磁気ループシステムや情報保障について、さまざまな意見があがった。海外で生活をしていたことがあるという参加者は「日本では難聴者に対する取り組みが遅れている」と指摘。「今回のコンサートで採用されていたような配慮がもっと広まってくれるとうれしい」と現状の改善を望んだ。
健聴者はそもそも磁気ループシステムや情報保障自体を知らないことも多い。これは難聴者の苦労や困りごとに対して理解が圧倒的に不足しているということだ。「健聴者と難聴者が同じように音楽を楽しめる」というコンサートのコンセプトは、一部の空間だけでなく、これから社会全体に求められていく課題といえそうだ。(BCN・大蔵 大輔)