日本最大級のAIテックカンパニー誕生 楽天・Amazon・ドコモに勝つ日はくるのか
2015年に制定し、今年で4年目を迎える「いい(11)買物の日(11月11日)」に向け、ヤフー、ソフトバンク、PayPayは、「ニッポンPayPayPayプロジェクト」の一環として、11月1日からリアル店舗とオンラインを横断した、いい買物の日キャンペーンを11月1日から開催。今回は、計39社78ブランドが参画し、記者が11月11日の22時過ぎにYahoo! ショッピングで購入しようとしたところ、アクセス集中につき、サーバーダウンが発生するほどの勢いだった。
00年代前半から日本のインターネットをリードしてきた「Yahoo! JAPAN」を運営するヤフーは今秋、持株会社体制に移行し、商号を「Zホールディングス」に変更。PayPay、ジャパンネット銀行などが、Zホールディングス傘下に入った。
いい買物の日に購入した商品がまだ届いていないような状況で、ソフトバンクの連結子会社Zホールディングス(ZHD)と、韓国NAVERの連結子会社LINEは、11月18日付で、ZHDグループとLINEグループの経営統合に向けて統合基本合意書を締結し、12月に最終合意を目指すと発表した。現在、上場しているLINEは公開買付けによって非公開化する。
LINEは、スマートスピーカーなどに向けたAIアシスタント「Clova」を開発・提供。ヤフーは、膨大なビッグデータを抱える。複数アカウントやユーザーの重複を考慮しない単純計算で計1億人以上のユーザーを超える、日本最大級のAIテックカンパニーが誕生する。
楽天銀行・楽天証券の利用者は、楽天経済圏の強みは、金融、特に楽天証券にあると理解しているだろう。楽天証券は取り扱い商品・サービスともに充実しており、「ポイント投資」の先駆け。今年10月28日には、国内株式(現物)のポイント投資サービスも業界で初めて開始し、楽天スーパーポイントがほぼ現金代わりに使えるようになった。買い物や楽天銀行の各種取引などでためた楽天スーパーポイントだけで投資信託や日本株を購入すれば、評価損が発生しても、現金のロスはない。リスクのある資産運用に及び腰な層を取り込めるという狙いだ。
経営統合の仕組みは複雑だが、要約すると、Zホールディングスは、ソフトバンクと韓国NAVERなどがそれぞれ50%出資する新会社の100%子会社となり、ソフトバンクグループに残って、その下にヤフーやLINEがぶら下がる。まずは、AIテックカンパニーとして日本国内のシェアNo.1を目指し、やがてアジアに拡大していく道筋は明白だ。
LINEは、子会社のLINE Financial、LINE Payを通じてみずほフィナンシャルグループと共同出資で銀行を20年度に設立すると発表していた。また、オリエントコーポレーション、Visaとともにクレジットカードも新たに発行し、LINE Payのサービスを強化する計画だった。すでにスマートフォン(スマホ)限定のLINE証券はサービスを開始済みだが、投資クラスタからは不評で、LINEユーザーと重なる投資初心者層狙いが滑っている印象だ。
「アジア」「AI」「コマース」「FinTech(フィンテック)」などを掲げたLINEのビジョンは、ソフトバンク、ヤフーと組めばより現実味が高まる。また、LINEの音声アシスタント「Clova」は、今秋以降のトヨタ車の純正ディスプレイオーディオに標準で対応し、音声カーナビアプリとして「LINEカーナビ」の存在感が高まっている(詳しくはこちら:クルマとスマホ・AIの連携が加速 DIN対応カーナビは縮小不可避か https://www.bcnretail.com/market/detail/20191026_142834.html)。
AI技術を持つLINEの各サービスは、ますます生活に身近になることは間違いない。競い合うよりも、組んだほうがソフトバンクにとってプラスになるとの判断は支持したい。
そのため、楽天市場が頻繁に開催する「お買い物マラソン・楽天スーパーSALE」などの買い回りイベントやAmazoサイバーマンデー、Amazon Prime Dayの規模を超えると想定される。取引額や商品点数はともかく、「盛り上がり感」は間違いなく、楽天、Amazonを超えるはずだ。
ZホールディングスとSBIグループの業務提携では、今後の展開として「Yahoo! JAPAN IDでSBIグループの金融サービスを利用できるシングル・サインオンを実現し、ヤフーとSBIグループの金融サービスのシームレスな提供や、その他の金融サービス事業の提携を検討していく」としていた。ここにLINEの新しいスマホ銀行、クレジットカード、テコ入れしたスマホ証券などが加わると、選択肢が増え、楽天経済圏に対抗する下地が整う。
ソフトバンクグループの競合として、NTTドコモの存在も無視できない。無事、経営統合の合意に至った暁には、ソフトバンク/ヤフーモバイルに加え、18年3月にソフトバンクと資本提携しているMVNOのLINEモバイルの巻き返し旋風が巻き起こりそうだ。
通信事業者各社は、決済サービスを提供しており、注力分野として非通信の生活サービスや金融・フィンテックを挙げる。約2年前の17年12月、第4のキャリアとして、楽天が通信設備や回線網を自社で保有するMNOとしての携帯電話サービス参入を表明し、総務省が携帯電話免許を認可した時から、IT業界は大きく動き出したといえるだろう。(BCN・嵯峨野 芙美)
00年代前半から日本のインターネットをリードしてきた「Yahoo! JAPAN」を運営するヤフーは今秋、持株会社体制に移行し、商号を「Zホールディングス」に変更。PayPay、ジャパンネット銀行などが、Zホールディングス傘下に入った。
いい買物の日に購入した商品がまだ届いていないような状況で、ソフトバンクの連結子会社Zホールディングス(ZHD)と、韓国NAVERの連結子会社LINEは、11月18日付で、ZHDグループとLINEグループの経営統合に向けて統合基本合意書を締結し、12月に最終合意を目指すと発表した。現在、上場しているLINEは公開買付けによって非公開化する。
LINEは、スマートスピーカーなどに向けたAIアシスタント「Clova」を開発・提供。ヤフーは、膨大なビッグデータを抱える。複数アカウントやユーザーの重複を考慮しない単純計算で計1億人以上のユーザーを超える、日本最大級のAIテックカンパニーが誕生する。
狙いは楽天経済圏、海外勢力への対抗
今回の経営統合の発表前に、ZホールディングスはSBIグループと業務提携。各金融サービス事業間の業務提携の一環として、住信SBIネット銀行とジャパンネット銀行は相互連携を開始した。協業の第1弾として、今年から住宅ローンに新規参入したジャパンネット銀行は、住信SBIネット銀行の「フラット35」の取り扱いを開始。この時点で、すでにZホールディングスは、楽天IDと楽天スーパーポイントを核とした「楽天経済圏」への対抗姿勢を示していた。楽天銀行・楽天証券の利用者は、楽天経済圏の強みは、金融、特に楽天証券にあると理解しているだろう。楽天証券は取り扱い商品・サービスともに充実しており、「ポイント投資」の先駆け。今年10月28日には、国内株式(現物)のポイント投資サービスも業界で初めて開始し、楽天スーパーポイントがほぼ現金代わりに使えるようになった。買い物や楽天銀行の各種取引などでためた楽天スーパーポイントだけで投資信託や日本株を購入すれば、評価損が発生しても、現金のロスはない。リスクのある資産運用に及び腰な層を取り込めるという狙いだ。
経営統合の仕組みは複雑だが、要約すると、Zホールディングスは、ソフトバンクと韓国NAVERなどがそれぞれ50%出資する新会社の100%子会社となり、ソフトバンクグループに残って、その下にヤフーやLINEがぶら下がる。まずは、AIテックカンパニーとして日本国内のシェアNo.1を目指し、やがてアジアに拡大していく道筋は明白だ。
LINEは、子会社のLINE Financial、LINE Payを通じてみずほフィナンシャルグループと共同出資で銀行を20年度に設立すると発表していた。また、オリエントコーポレーション、Visaとともにクレジットカードも新たに発行し、LINE Payのサービスを強化する計画だった。すでにスマートフォン(スマホ)限定のLINE証券はサービスを開始済みだが、投資クラスタからは不評で、LINEユーザーと重なる投資初心者層狙いが滑っている印象だ。
「アジア」「AI」「コマース」「FinTech(フィンテック)」などを掲げたLINEのビジョンは、ソフトバンク、ヤフーと組めばより現実味が高まる。また、LINEの音声アシスタント「Clova」は、今秋以降のトヨタ車の純正ディスプレイオーディオに標準で対応し、音声カーナビアプリとして「LINEカーナビ」の存在感が高まっている(詳しくはこちら:クルマとスマホ・AIの連携が加速 DIN対応カーナビは縮小不可避か https://www.bcnretail.com/market/detail/20191026_142834.html)。
AI技術を持つLINEの各サービスは、ますます生活に身近になることは間違いない。競い合うよりも、組んだほうがソフトバンクにとってプラスになるとの判断は支持したい。
2020年、ネット通販の「お買い物の祭典」が変わる?
20年10月までに統合を完了させる計画なので、冒頭で紹介した、いい買物の日キャンペーンに来年はLINEも参加するかもしれない。経営統合によって、どこまで重複するサービスが整理・統合されるかどうか分からないが、ソフトバンク/ワイモバイル/LINEモバイルユーザー、Yahoo!プレミアム会員、LINE銀行の口座保有者、「LINEスコアXXX以上」といったキャンペーン適用条件が増えれば増えるほど、11月11日は、まさに国内EC最大の買い物のお祭りとなる。そのため、楽天市場が頻繁に開催する「お買い物マラソン・楽天スーパーSALE」などの買い回りイベントやAmazoサイバーマンデー、Amazon Prime Dayの規模を超えると想定される。取引額や商品点数はともかく、「盛り上がり感」は間違いなく、楽天、Amazonを超えるはずだ。
ZホールディングスとSBIグループの業務提携では、今後の展開として「Yahoo! JAPAN IDでSBIグループの金融サービスを利用できるシングル・サインオンを実現し、ヤフーとSBIグループの金融サービスのシームレスな提供や、その他の金融サービス事業の提携を検討していく」としていた。ここにLINEの新しいスマホ銀行、クレジットカード、テコ入れしたスマホ証券などが加わると、選択肢が増え、楽天経済圏に対抗する下地が整う。
ソフトバンクグループの競合として、NTTドコモの存在も無視できない。無事、経営統合の合意に至った暁には、ソフトバンク/ヤフーモバイルに加え、18年3月にソフトバンクと資本提携しているMVNOのLINEモバイルの巻き返し旋風が巻き起こりそうだ。
通信事業者各社は、決済サービスを提供しており、注力分野として非通信の生活サービスや金融・フィンテックを挙げる。約2年前の17年12月、第4のキャリアとして、楽天が通信設備や回線網を自社で保有するMNOとしての携帯電話サービス参入を表明し、総務省が携帯電話免許を認可した時から、IT業界は大きく動き出したといえるだろう。(BCN・嵯峨野 芙美)