160万円するカメラの価値
一口に160万円のカメラと言っても、ぴんとこないかもしれない。ライカが11月末に発売するフルサイズミラーレス一眼「SL2」とレンズを合わせた価格だ。税込みのボディ価格は89万1000円。標準レンズ「ライカ ズミルックス SL f1.4/50mm ASPH.」(70万4000円)をあわせて買うと合計159万5000円と、超豪華なセットの出来上がりだ。
レンズを広角の「ライカ アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.」(66万円)にしても、あわせて155万1000円と、豪華セットであることに変わりはない。マウント規格は35mmフルサイズのLマウント。ライカに加え、パナソニック、シグマの3社がこのマウントで製品を展開している。
こんな高価なカメラは、自分にはとても手が出ないわけだが、製品発表会でテスト撮影する機会があったので、参考までに原寸サイズの写真を掲載した。レンズはライカ ズミルックス SL f1.4/50mm ASPH.。ボディとレンズの重さは1.9kg。価格ばかりでなく重さも重量級だ。高画素数ながら、5軸で5.5段分のボディ内手ぶれ補正機構を備え、手持ちでもかっちりとした画像を撮影できる。画像はJPEG「撮って出し」。4730万画素と高画素数のCMOSセンサーを搭載し、細部までクリア。JPEGでも深みのある落ち着いた色合いで高級感がある。
さすが老舗中の老舗ライカの新製品だけに、カメラも写真も存在感は半端ない。しかし、ミラーレス一眼市場で、こうした高級カメラの位置づけは極めて少数派だ。ボディ、レンズセットなどまとめたパッケージ単位の平均単価(税別)で、40万円を超える製品を、ここでは高級カメラと定義してみた。
これに該当するのは、ニコンのZ 7、パナソニックのLUMIX S1R、S1H、ソニーのα9IIあたり。これらのライカSL2の前モデルSLが加わる。プロかプロに準ずるハイアマチュア層や、収集家などが主なターゲットになるカメラだ。これら高級カメラは、販売金額でミラーレス一眼全体の1.6%に過ぎない構成比にとどまっている。
集計範囲をフルサイズのミラーレス一眼まで広げると、平均単価は22万8000円。20万円台の製品が売上高の58.8%を占め、中心的な価格帯になっている。一方、フルサイズ未満のミラーレス一眼は平均単価が7万5800円で、72.2%の売り上げを10万円未満の製品が占めている構図だ。
これらをまとめて、ミラーレス一眼全体の平均単価は9万1700円。10万円未満製品の売上高で53.6%を占めている。10万円台まで含めると7割を超える。いずれにしても、カメラ市場はこのあたりの製品群で「食っている」といっていいだろう。
高級腕時計が必ずしも最も正確な時を刻むわけではないように、最も高価なカメラが最も高性能だとは限らない。持つ喜び、撮る楽しさ、そんな価値も高級カメラには含まれている。カメラとしては飛び抜けて高価なライカ。大きく重い筐体も、今の時代にはそぐわないかも知れない。ビジネスは必ずしも順風満帆ではないと聞くが、長い年月をかけて時計のような付加価値の醸成に成功している。今でもライカが存続できているのは「価値」があるからだ。
激しい市場の縮小に苛まれているカメラ市場。スマートフォン(スマホ)と戦う以上、これからもカメラは不利な戦いを強いられる。スマホはすでに高速回線を持ち、それにぶら下がる頭脳をコンパクトな筐体の中で獲得しているからだ。もちろん、カメラも追いつかなければならない。しかし、それだけでは足りない。
カメラでしか成し得ないものは何なのか。スマホでは決して実現できない価値はどこにあるのか。負のスパイラルから抜け出すためには、真摯な姿勢で「食わせてもらっているユーザー」の声に耳を傾け、ユーザーが求めるカメラや写真の楽しみに向き合うことが不可欠だ。ライカの在り方には、ヒントが隠れているかも知れない。(BCN・道越一郎)
レンズを広角の「ライカ アポ・ズミクロンSL f2/35mm ASPH.」(66万円)にしても、あわせて155万1000円と、豪華セットであることに変わりはない。マウント規格は35mmフルサイズのLマウント。ライカに加え、パナソニック、シグマの3社がこのマウントで製品を展開している。
こんな高価なカメラは、自分にはとても手が出ないわけだが、製品発表会でテスト撮影する機会があったので、参考までに原寸サイズの写真を掲載した。レンズはライカ ズミルックス SL f1.4/50mm ASPH.。ボディとレンズの重さは1.9kg。価格ばかりでなく重さも重量級だ。高画素数ながら、5軸で5.5段分のボディ内手ぶれ補正機構を備え、手持ちでもかっちりとした画像を撮影できる。画像はJPEG「撮って出し」。4730万画素と高画素数のCMOSセンサーを搭載し、細部までクリア。JPEGでも深みのある落ち着いた色合いで高級感がある。
さすが老舗中の老舗ライカの新製品だけに、カメラも写真も存在感は半端ない。しかし、ミラーレス一眼市場で、こうした高級カメラの位置づけは極めて少数派だ。ボディ、レンズセットなどまとめたパッケージ単位の平均単価(税別)で、40万円を超える製品を、ここでは高級カメラと定義してみた。
これに該当するのは、ニコンのZ 7、パナソニックのLUMIX S1R、S1H、ソニーのα9IIあたり。これらのライカSL2の前モデルSLが加わる。プロかプロに準ずるハイアマチュア層や、収集家などが主なターゲットになるカメラだ。これら高級カメラは、販売金額でミラーレス一眼全体の1.6%に過ぎない構成比にとどまっている。
集計範囲をフルサイズのミラーレス一眼まで広げると、平均単価は22万8000円。20万円台の製品が売上高の58.8%を占め、中心的な価格帯になっている。一方、フルサイズ未満のミラーレス一眼は平均単価が7万5800円で、72.2%の売り上げを10万円未満の製品が占めている構図だ。
これらをまとめて、ミラーレス一眼全体の平均単価は9万1700円。10万円未満製品の売上高で53.6%を占めている。10万円台まで含めると7割を超える。いずれにしても、カメラ市場はこのあたりの製品群で「食っている」といっていいだろう。
高級腕時計が必ずしも最も正確な時を刻むわけではないように、最も高価なカメラが最も高性能だとは限らない。持つ喜び、撮る楽しさ、そんな価値も高級カメラには含まれている。カメラとしては飛び抜けて高価なライカ。大きく重い筐体も、今の時代にはそぐわないかも知れない。ビジネスは必ずしも順風満帆ではないと聞くが、長い年月をかけて時計のような付加価値の醸成に成功している。今でもライカが存続できているのは「価値」があるからだ。
激しい市場の縮小に苛まれているカメラ市場。スマートフォン(スマホ)と戦う以上、これからもカメラは不利な戦いを強いられる。スマホはすでに高速回線を持ち、それにぶら下がる頭脳をコンパクトな筐体の中で獲得しているからだ。もちろん、カメラも追いつかなければならない。しかし、それだけでは足りない。
カメラでしか成し得ないものは何なのか。スマホでは決して実現できない価値はどこにあるのか。負のスパイラルから抜け出すためには、真摯な姿勢で「食わせてもらっているユーザー」の声に耳を傾け、ユーザーが求めるカメラや写真の楽しみに向き合うことが不可欠だ。ライカの在り方には、ヒントが隠れているかも知れない。(BCN・道越一郎)