ニコンは10月31日、「ミラーレスカメラ『ニコン Z 50』が、『デジタルカメラグランプリ2020』において、最高位となる総合金賞<ミラーレス>を受賞しました。」と発表した。しかし、このZ 50は、発売前の製品。ニコンでは「2019年11月下旬発売予定」としているのみで、まだ具体的な発売日すら決まっていない。ユーザーが店頭で実機を触る機会を待たずに、「総合金賞」を受賞した、という知らせに大いに疑問を感じた。あたかも人気のある商品のように発売前から喧伝するのは、消費者を惑わすことにならないのか。
「デジタルカメラグランプリ」は、主に音楽やAV情報を扱う出版社、音元出版が主催するもの。選考対象は「発表済みの製品」で、発売前でも問題ないとしている。
担当者によれば、「ご批判もあるかもしれないが、今年で12年目。一定のご評価はいただいている。過去にも、発売前の製品が金賞を受賞したこともある。グランプリは店頭を重視しており、量販店がこれから売りたいモデルをおすすめするもの。これを買っとけば失敗はない、という視点の賞だと受け止めて欲しい」と話す。
一方、ニコンイメージングでは「受賞は光栄だが、主催者の規程で発表済みの製品が対象になると聞いている。規程の是非については、ニコンとしてコメントはしようがない」としている。
受賞製品の選出は、写真家やライター、編集者、カメラ量販店の社員からなる10人の有識者で構成する審査委員が行っている。音元出版は、今回のZ 50について「選考委員にはメーカーから貸与を受けた実機を使ってもらい、評価をしていただいている」として、実機評価の結果と説明。ただし、「実際に写真を撮影した上で評価していただいているかどうかは、審査委員にお任せしているので分からない」としている。
今回「デジタルカメラグランプリ2020」を受賞した主な製品は、総合金賞が7製品、審査員特別賞が1製品、技術賞が7製品、企画賞が4製品。このほか、銀賞、銅賞などを含めると数多くの製品が「受賞」しており、その数は全部で500製品を超える。
これだけの数の製品を一つひとつ審査するとなると、その作業は膨大なものになりそうだ。受賞製品は、音元出版が発行するフリーマガジン「受賞製品お買い物ガイド」にまとめられ、店頭やPDFで配布している。
ある業界関係者は、「選考の過程が見えにくく、本当にフェアに選定されているのかは疑問だ。業界ではほとんど重視されていない賞だが、消費者を惑わすことになりかねない」と警鐘を鳴らす。専門家の目で消費者に勧める製品を選ぶというコンセプトは「アリ」かもしれない。
しかし、一番厳しい目は消費者の購買行動そのものだ。市場の洗礼を受ける前に専門家だけで製品の序列を決めてしまうことには、やはり大きな疑問が残る。こうした消費者不在のグランプリを容認してしまう姿勢そのものが、現在のカメラ市場の縮小を招いているのではないだろうか。(BCN・道越一郎)
「デジタルカメラグランプリ」は、主に音楽やAV情報を扱う出版社、音元出版が主催するもの。選考対象は「発表済みの製品」で、発売前でも問題ないとしている。
担当者によれば、「ご批判もあるかもしれないが、今年で12年目。一定のご評価はいただいている。過去にも、発売前の製品が金賞を受賞したこともある。グランプリは店頭を重視しており、量販店がこれから売りたいモデルをおすすめするもの。これを買っとけば失敗はない、という視点の賞だと受け止めて欲しい」と話す。
一方、ニコンイメージングでは「受賞は光栄だが、主催者の規程で発表済みの製品が対象になると聞いている。規程の是非については、ニコンとしてコメントはしようがない」としている。
受賞製品の選出は、写真家やライター、編集者、カメラ量販店の社員からなる10人の有識者で構成する審査委員が行っている。音元出版は、今回のZ 50について「選考委員にはメーカーから貸与を受けた実機を使ってもらい、評価をしていただいている」として、実機評価の結果と説明。ただし、「実際に写真を撮影した上で評価していただいているかどうかは、審査委員にお任せしているので分からない」としている。
今回「デジタルカメラグランプリ2020」を受賞した主な製品は、総合金賞が7製品、審査員特別賞が1製品、技術賞が7製品、企画賞が4製品。このほか、銀賞、銅賞などを含めると数多くの製品が「受賞」しており、その数は全部で500製品を超える。
これだけの数の製品を一つひとつ審査するとなると、その作業は膨大なものになりそうだ。受賞製品は、音元出版が発行するフリーマガジン「受賞製品お買い物ガイド」にまとめられ、店頭やPDFで配布している。
ある業界関係者は、「選考の過程が見えにくく、本当にフェアに選定されているのかは疑問だ。業界ではほとんど重視されていない賞だが、消費者を惑わすことになりかねない」と警鐘を鳴らす。専門家の目で消費者に勧める製品を選ぶというコンセプトは「アリ」かもしれない。
しかし、一番厳しい目は消費者の購買行動そのものだ。市場の洗礼を受ける前に専門家だけで製品の序列を決めてしまうことには、やはり大きな疑問が残る。こうした消費者不在のグランプリを容認してしまう姿勢そのものが、現在のカメラ市場の縮小を招いているのではないだろうか。(BCN・道越一郎)