世界最大級の家電展示会「IFA」レポート、5G/AI/8Kのトピックスを振り返る
■インターネットにつながるスマート家電は「もう当たり前」
AIやコネクテッド機能を搭載する、いわゆる「スマート家電」の展示については昨年のIFAと比べてもまた違う傾向が見られた。一言でいえばIFA2018の頃よりも各社の“スマート家電推し”のメッセージがかなり薄まっていたのだ。
ヨーロッパでは2015年頃からロケットスタートを切ったスマート家電のブームもいよいよ衰えてきたのだろうかと案じながら、欧州最大の総合家電ブランドであるボッシュとシーメンスのブースツアーに参加したところ、筆者の思い違いであったことがわかった。
スタッフによると、ボッシュとシーメンスが2019年モデルとして発売している冷蔵庫に洗濯機などの生活家電は、今や「ほぼ全てのモデルがWi-Fiでインターネットにつながるコネクテッド家電」なのだと説明してくれた。つまりヨーロッパでは日本よりも先にスマート家電が「当たり前」の商品になったため、あえてブースで高らかにその機能をうたう必要がもうなくなったのっだ。
筆者はドイツの一般家庭を訪問して取材した経験がないため、コンシューマーの意識が家電のスマート化について行けているのか、本当の所はわからない。だが少なくとも、ボッシュやシーメンスのように欧州の家電業界をリードする企業はスマート家電の積極導入を完了して、これからは普及期を迎えつつあるという現状がここにあった。各社ともにもう「次の戦略」を準備して、ロードマップを描き始めているのだ。
各社のIFAの展示を見ると、自社ブランドのスマート家電による機器連携や、スマホで操作できる空気清浄機、コンパクトなオーブントースターなどより小型な家電にまでスマート化の輪を広げようとしているようだ。ただ、家庭にあるさまざまな生活家電をネットワーク対応にするためには5Gを使うのか、あるいは小容量のデータを長距離に渡って伝送ができて、デバイスの消費電力も低く抑えられる「LPWA(Low Power Wide Area)」の技術を使うのかなど、踏み込んだ提案はIFAの出展に見る機会はとても少なかった。
その中でLGエレクトロニクスが今後、クアルコムと組んで生活家電に搭載することを目的とした専用SoCを開発するとIFAのプレスカンファレンスでアナウンスした。LGが独自に開発するAIプラットフォームの「ThinQ(シンキュー)」の活用、クラウドサービスやマシンラーニングの技術と一体になったスマート家電の高度化が始まる期待を感じさせる発表だった。
■ウォークマンや入門クラスの完全ワイヤレスイヤホンが発表
直近の2019年末商戦で脚光を浴びるであろう注目製品も紹介しよう。ソニーはプラットフォームにAndroid OSを採用して、スマホのようにSpotifyやAmazon Musicのアプリをダウンロードして高音質再生が楽しめる“ウォークマン”の最新製品を発表した。二つの新製品は欧州型番の「NW-A105」「NW-ZX507」として詳細が公開されていたが、おそらく秋以降の日本導入が期待できるのではないだろうか。
人気の完全ワイヤレスイヤホンも、オーディオテクニカが「ATH-CKR3TW」という、欧州での想定売価が99ユーロ(約1万1000円)の入門機を発表したほか、JBLも欧州での想定売価が1万円台中頃という「Reflect Flow」の投入を予告した。アップルのAirPodsを猛追する両社が1万円から2万円台までの価格ゾーンに投入する完全ワイヤレスイヤホンを発売することのインパクトは大きいだろう。
最後に筆者が今年のIFAを取材して、最も心躍らされた製品を紹介しよう。パナソニックの透明有機ELディスプレイを使ったテレビの試作機だ。スイスの有名な家具メーカーとコラボレーションしたというプロトタイプはとてもスタイリッシュな出来映えだった。映像を視聴するだけでなく、家庭の情報ディスプレイとして、あるいは映像鑑賞とは別のエンターテインメントを家族揃って楽しむための「開かれた窓」として、テレビに新しい役割を与えるきっかけになりそうな力強い商品力を持つテレビだと思う。本機の前で大勢の来場者が足を止めていたことがその証明だ。
冒頭に紹介した“スタートアップの祭典”、IFA NEXTのレポートは次の機会に紹介したいと思う。(フリーライター・山本敦)
AIやコネクテッド機能を搭載する、いわゆる「スマート家電」の展示については昨年のIFAと比べてもまた違う傾向が見られた。一言でいえばIFA2018の頃よりも各社の“スマート家電推し”のメッセージがかなり薄まっていたのだ。
ヨーロッパでは2015年頃からロケットスタートを切ったスマート家電のブームもいよいよ衰えてきたのだろうかと案じながら、欧州最大の総合家電ブランドであるボッシュとシーメンスのブースツアーに参加したところ、筆者の思い違いであったことがわかった。
スタッフによると、ボッシュとシーメンスが2019年モデルとして発売している冷蔵庫に洗濯機などの生活家電は、今や「ほぼ全てのモデルがWi-Fiでインターネットにつながるコネクテッド家電」なのだと説明してくれた。つまりヨーロッパでは日本よりも先にスマート家電が「当たり前」の商品になったため、あえてブースで高らかにその機能をうたう必要がもうなくなったのっだ。
筆者はドイツの一般家庭を訪問して取材した経験がないため、コンシューマーの意識が家電のスマート化について行けているのか、本当の所はわからない。だが少なくとも、ボッシュやシーメンスのように欧州の家電業界をリードする企業はスマート家電の積極導入を完了して、これからは普及期を迎えつつあるという現状がここにあった。各社ともにもう「次の戦略」を準備して、ロードマップを描き始めているのだ。
各社のIFAの展示を見ると、自社ブランドのスマート家電による機器連携や、スマホで操作できる空気清浄機、コンパクトなオーブントースターなどより小型な家電にまでスマート化の輪を広げようとしているようだ。ただ、家庭にあるさまざまな生活家電をネットワーク対応にするためには5Gを使うのか、あるいは小容量のデータを長距離に渡って伝送ができて、デバイスの消費電力も低く抑えられる「LPWA(Low Power Wide Area)」の技術を使うのかなど、踏み込んだ提案はIFAの出展に見る機会はとても少なかった。
その中でLGエレクトロニクスが今後、クアルコムと組んで生活家電に搭載することを目的とした専用SoCを開発するとIFAのプレスカンファレンスでアナウンスした。LGが独自に開発するAIプラットフォームの「ThinQ(シンキュー)」の活用、クラウドサービスやマシンラーニングの技術と一体になったスマート家電の高度化が始まる期待を感じさせる発表だった。
■ウォークマンや入門クラスの完全ワイヤレスイヤホンが発表
直近の2019年末商戦で脚光を浴びるであろう注目製品も紹介しよう。ソニーはプラットフォームにAndroid OSを採用して、スマホのようにSpotifyやAmazon Musicのアプリをダウンロードして高音質再生が楽しめる“ウォークマン”の最新製品を発表した。二つの新製品は欧州型番の「NW-A105」「NW-ZX507」として詳細が公開されていたが、おそらく秋以降の日本導入が期待できるのではないだろうか。
人気の完全ワイヤレスイヤホンも、オーディオテクニカが「ATH-CKR3TW」という、欧州での想定売価が99ユーロ(約1万1000円)の入門機を発表したほか、JBLも欧州での想定売価が1万円台中頃という「Reflect Flow」の投入を予告した。アップルのAirPodsを猛追する両社が1万円から2万円台までの価格ゾーンに投入する完全ワイヤレスイヤホンを発売することのインパクトは大きいだろう。
最後に筆者が今年のIFAを取材して、最も心躍らされた製品を紹介しよう。パナソニックの透明有機ELディスプレイを使ったテレビの試作機だ。スイスの有名な家具メーカーとコラボレーションしたというプロトタイプはとてもスタイリッシュな出来映えだった。映像を視聴するだけでなく、家庭の情報ディスプレイとして、あるいは映像鑑賞とは別のエンターテインメントを家族揃って楽しむための「開かれた窓」として、テレビに新しい役割を与えるきっかけになりそうな力強い商品力を持つテレビだと思う。本機の前で大勢の来場者が足を止めていたことがその証明だ。
冒頭に紹介した“スタートアップの祭典”、IFA NEXTのレポートは次の機会に紹介したいと思う。(フリーライター・山本敦)