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AMDの第3世代「Ryzen」がぶっちぎり、発売後も6割のシェアをキープ

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2019/09/03 18:00

 CPUメーカーのAMDが7月7日に第3世代「Ryzen」シリーズを発売したのをきっかけに、単体パーツとしてのCPU市場の勢力図が一変した。全国の主要家電量販店やネットショップからPOSデータを集計する「BCNランキング」の週次データによると、7月8日週にAMDの販売台数シェアが68.6%に急上昇。ライバルのインテルは31.4%に急落した。CPU市場でAMDの存在感が一気に高まっている。

インテルの供給不足問題だけではない?

 AMDの販売台数シェアは発売4週前の6月17日週から44.7%、50.5%、55.3%、59.9%と文字通りのうなぎ上りで、長年のライバルだったインテルを抜き去った。

 1年前の2018年9月10日週を見ると、AMDのシェアはわずか13.2%だったのに対し、インテルは86.8%で王者の貫禄を示していた。だがその後、約1年をかけてインテルはジリジリとシェアを下げ、逆にAMDがそのシェアを奪っていった。要因は、インテル製CPUの供給不足という問題が明るみになったからだ。

 インテルは会見などを通じて「19年中に改善する」と供給面の正常化に取り組んでいる様子をアナウンスしてきたが、第3四半期(7月~9月)に突入してもシェアに改善傾向は現れず、むしろAMDに引き離されていった。
 
AMDの第3世代「Ryzen」

 ポイントは、AMDのシェア上昇が、第3世代Ryzenの発売イベントによる瞬間風速ではなく、その後も6割近くのシェアをキープし続けている点にある。7月15日週と7月29日週はいずれも60.2%、7月29日週は54.6%、8月5日週は60.0%、8月12日週は57.1%といった具合である。

 どうもAMDの好調ぶりは“敵失”によるものだけではなく、AMD製CPUそのものの性能や品質の向上が、販売力のアップに結び付いているようなのだ。

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 日本AMDのジャパンマーケティング本部 佐藤美明マーケティングスペシャリストは次のように分析する。「確かにRyzenプロセッサー以前はグラフィックスの描写力を高めるGPUで一定の評価をいただいていたが、正直、ゲームなどをする際のCPU能力に課題があった。しかしRyzenプロセッサーではCPUの性能が向上したため、製品の総合力がアップして、コストパフォーマンスの良さも相まって結果につながっている」。

CPU性能の課題を克服したことで、総合的なパフォーマンスとコスト削減につなげたことに自信を示した。

ノートPCの19年春モデルからNECも積極採用

 BCNランキングを紐解くと、もう一つの大きな変化がみられる。ノートPCで販売台数シェアトップベンダーのNECパーソナルコンピュータが、19年春モデルからAMD製CPUの採用に動き出したことだ。その動きは、データに顕著なかたちで表れた。
 

 18年7月~19年7月までのAMD製CPU搭載ノートPCに絞ったメーカー別販売台数構成比の推移をみると、18年12月まで採用実績のなかったNECが、19年1月から採用して急増しているのが分かる。

 19年2月に45.6%に急増した後も、7月は78.0%まで高まり、親会社のレノボ・ジャパンの5.3%と合算すると実に83.3%を占める。7月に実際に売れたAMD製CPU搭載ノートPCのうち、レノボ・ジャパングループが8割以上を占めたことになる。

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 NECのノートPCでRyzenの採用が高まるということは、ゲーミングPCやクリエイターなどのハイスペックのCPUを必要とする一部のコアユーザーだけでなく、一般的なライトユーザーにもブランドが浸透する可能性を示す。競合のインテルにとっても無視できない、衝撃的な数字といえるだろう。

 もっとも、この構成比は、Ryzen搭載ノートPCの販売台数の母数が増えていなければ、あまり意味がない。そこで再びBCNランキングから、完成品のノートPCに搭載するCPUメーカー別販売台数シェアの推移をみていこう。さすがにインテルは8月12日週に81.1%と高いシェアを誇るが、わずか1年前は90%を大きく超えていたことを考えれば、AMDの躍進ぶりが目立つ。Ryzen搭載ノートPCの販売台数は確実に増えているのだ。
 

 1年前はシェア1%台前後に甘んじていたAMDだったが、19年8月12週のシェアは18.9%。2割台も目前に迫る勢いだ。シェアを0.5ポイント上げるのに四苦八苦していた過去とは違い、AMDのRyzenブランドがPCベンダーのCPU調達面においてもプレゼンスを上げていることを物語るデータだ。
 

 参考までに19年1月~7月に売れたノートPCのトップ10をみると、AMD Ryzen 7を搭載したNECの「LAVIE Note Standard NS600シリーズ」の3機種がランクインしている。

 ほぼ同一スペックで競合するとされるインテルのCore i7は、富士通の「FMV-LIFEBOOK AIシリーズ」の2機種がトップ10入りとなり、AMDのほうが1機種だけだが多い。AMDのRyzenブランドが着実に浸透しつつあることを裏付けている。(BCN・細田 立圭志)