東急ハンズの都内における旗艦店舗が大規模なリニューアルを敢行している。新宿店、渋谷店に続き、6月28日に池袋店で全8フロアのうち3フロアの売り場を刷新。「集結!マーケット」プロジェクトと銘打ち、池袋のカルチャーを求める顧客の“集う、つながる”を応援する店舗に生まれ変わった。
「東急ハンズ池袋店」は、1984年にオープンした同社の中でも歴史のある店舗だ。東京・東池袋一丁目のサンシャイン60通りに面しており、最先端のトレンドを30年以上にわたって発信してきた。ここ数年、池袋の変化は加速している。サンシャイン60通りもアニメをはじめ、特定のカルチャーの専門店が増え、老若男女が行き交うようになった。7月19日に近場に首都圏最大級のシネコン「グランドシネマサンシャイン」がオープンし、賑わいを増している。
今回の池袋店の大規模リニューアルにも、こうした街の変化の流れが大いに反映されている。まずは、1階のエントランスフロア。これまではシーズンものなど、そのときに売れる商品が並ぶエリアだったが、リニューアル後は「集結!PARK」として、よりこだわりの強い消費者を引きつけるジャンル不問のイベントスペースになった。なお、取材時はTwitterから生まれた人気キャラクター「東京トガリ」の特設コーナーを展開していた。
その隣にある「HANDS CAFE stand」は、東急ハンズ初となるスタンド型のカフェ。ドリンクやスイーツをテイクアウトでき、サンシャイン60通りを散策する人の飲み歩きスポットとしても注目を集めそうだ。
3階フロアに新設された「ヒントスタジオ」は、マニアックな消費者から支持の厚い東急ハンズならではの取り組み。日々、さまざまなテーマのセミナーや体験会、ワークショップを開催することで、顧客と深くつながるのが狙いだ。同社は、販売スタッフ育成のための「ヒントハウス」という施設を持つ。「ヒントスタジオ」は、そこから派生しているという。
訪問したときのテーマは「鉱物」。所要時間はなんと約240分。触りだけでなく、がっつり深く掘り下げる。取材時は夏休みということもあり、多くの親子連れで賑わっていた。回によっては顧客に交じって販売員も参加し、顧客とのコミュニケーションを通じて販売のヒントを探る。
売り場づくりの工夫としては、フロア奥の角に展開しているのがミソ。参加者以外の顧客も興味を引かれて、奥に誘導されるため、これまで以上に回遊につながる。かなり大きく場所をとっているため、売り場は圧縮しているが、売上に貢献する効果も期待している。
最上階の7階も、今回のリニューアルで大きく雰囲気を変えたフロアだ。バラエティコーナーと「HANDS CAFE」が隣接するのだが、サブカルチャーの街である池袋らしさを全開にして、アニメやマニアックな趣味をフィーチャー。バーチャルYouTuber、通称VTuberとのコラボでは、人気VTuberの富士葵がハンズ制服をイメージした衣装を着て限定動画を公開する凝りようだ。
カフェとバラエティコーナーが同じフロアにあるのは理由がある。アニメやキャラクターとのコラボ企画を連動して開催するためだ。取材時は、ちょうどコラボがない谷間の期間だったが、コラボ中は売り場でグッズを販売し、カフェでコラボメニューやイベントを実施する。ファンは物販と飲食の両方のニーズを満たすことができるというわけだ。
最後に紹介したいのは、リニューアルを機に2階を除く全てのフロアで導入したというセルフレジだ。東急ハンズ子会社のハンズラボが協力会社と開発した自前のシステムで、対人レジと連動して機能するのが特徴だ。バーコードの読み取りなどは販売員が行い、会計は手段を顧客が選び、自分で行う。ハイブリッドにすることで、丁寧な顧客対応と業務効率の最大化を図っている。
同店の西林圭吾ユニットリーダーによると「もともと池袋店はハンズでは珍しい男性比率の高い店舗で、年齢層は40~50代と高め」だという。「今回のリニューアルで地域性を色濃く出し、若い世代にもアプローチできれば」と期待を語る。今後は、地域の子どもをハンズに呼び込むような施策も展開したい、と次の構想も教えてくれた。
モノからコトへのシフトは小売業界で数年前からトレンドになっているが、自社ならではの色を出すとなるとなかなか難しい。これまでの売り場を維持しつつ、となるとなおさらだ。リニューアル後の東急ハンズ池袋店にもそうしたジレンマはあったはずだ。もともと1階フロアにあったトレンドものを各フロアに散らしたり、売り場の少なくないスペースを削ったりと身を切る覚悟があったことが、随所から伝わってきた。
売り場を回って感じたのは、「モノからコト」というより「モノからヒト」への変化だ。「モノを買う場所」から「ヒトが集まる場所」へ。店舗のあり方そのものを変えようと考えているからこそ、これだけ大胆に攻める必要があったのだろう。リニューアルから日は浅く、この挑戦がもたらす成果を見極めるにはもう少し時間がかかるが、それでも店舗を訪れた顧客の表情からはモノを買うだけでは得られない満足感が読み取れた。(BCN・大蔵 大輔)
「東急ハンズ池袋店」は、1984年にオープンした同社の中でも歴史のある店舗だ。東京・東池袋一丁目のサンシャイン60通りに面しており、最先端のトレンドを30年以上にわたって発信してきた。ここ数年、池袋の変化は加速している。サンシャイン60通りもアニメをはじめ、特定のカルチャーの専門店が増え、老若男女が行き交うようになった。7月19日に近場に首都圏最大級のシネコン「グランドシネマサンシャイン」がオープンし、賑わいを増している。
今回の池袋店の大規模リニューアルにも、こうした街の変化の流れが大いに反映されている。まずは、1階のエントランスフロア。これまではシーズンものなど、そのときに売れる商品が並ぶエリアだったが、リニューアル後は「集結!PARK」として、よりこだわりの強い消費者を引きつけるジャンル不問のイベントスペースになった。なお、取材時はTwitterから生まれた人気キャラクター「東京トガリ」の特設コーナーを展開していた。
その隣にある「HANDS CAFE stand」は、東急ハンズ初となるスタンド型のカフェ。ドリンクやスイーツをテイクアウトでき、サンシャイン60通りを散策する人の飲み歩きスポットとしても注目を集めそうだ。
3階フロアに新設された「ヒントスタジオ」は、マニアックな消費者から支持の厚い東急ハンズならではの取り組み。日々、さまざまなテーマのセミナーや体験会、ワークショップを開催することで、顧客と深くつながるのが狙いだ。同社は、販売スタッフ育成のための「ヒントハウス」という施設を持つ。「ヒントスタジオ」は、そこから派生しているという。
訪問したときのテーマは「鉱物」。所要時間はなんと約240分。触りだけでなく、がっつり深く掘り下げる。取材時は夏休みということもあり、多くの親子連れで賑わっていた。回によっては顧客に交じって販売員も参加し、顧客とのコミュニケーションを通じて販売のヒントを探る。
売り場づくりの工夫としては、フロア奥の角に展開しているのがミソ。参加者以外の顧客も興味を引かれて、奥に誘導されるため、これまで以上に回遊につながる。かなり大きく場所をとっているため、売り場は圧縮しているが、売上に貢献する効果も期待している。
最上階の7階も、今回のリニューアルで大きく雰囲気を変えたフロアだ。バラエティコーナーと「HANDS CAFE」が隣接するのだが、サブカルチャーの街である池袋らしさを全開にして、アニメやマニアックな趣味をフィーチャー。バーチャルYouTuber、通称VTuberとのコラボでは、人気VTuberの富士葵がハンズ制服をイメージした衣装を着て限定動画を公開する凝りようだ。
カフェとバラエティコーナーが同じフロアにあるのは理由がある。アニメやキャラクターとのコラボ企画を連動して開催するためだ。取材時は、ちょうどコラボがない谷間の期間だったが、コラボ中は売り場でグッズを販売し、カフェでコラボメニューやイベントを実施する。ファンは物販と飲食の両方のニーズを満たすことができるというわけだ。
最後に紹介したいのは、リニューアルを機に2階を除く全てのフロアで導入したというセルフレジだ。東急ハンズ子会社のハンズラボが協力会社と開発した自前のシステムで、対人レジと連動して機能するのが特徴だ。バーコードの読み取りなどは販売員が行い、会計は手段を顧客が選び、自分で行う。ハイブリッドにすることで、丁寧な顧客対応と業務効率の最大化を図っている。
同店の西林圭吾ユニットリーダーによると「もともと池袋店はハンズでは珍しい男性比率の高い店舗で、年齢層は40~50代と高め」だという。「今回のリニューアルで地域性を色濃く出し、若い世代にもアプローチできれば」と期待を語る。今後は、地域の子どもをハンズに呼び込むような施策も展開したい、と次の構想も教えてくれた。
モノからコトへのシフトは小売業界で数年前からトレンドになっているが、自社ならではの色を出すとなるとなかなか難しい。これまでの売り場を維持しつつ、となるとなおさらだ。リニューアル後の東急ハンズ池袋店にもそうしたジレンマはあったはずだ。もともと1階フロアにあったトレンドものを各フロアに散らしたり、売り場の少なくないスペースを削ったりと身を切る覚悟があったことが、随所から伝わってきた。
売り場を回って感じたのは、「モノからコト」というより「モノからヒト」への変化だ。「モノを買う場所」から「ヒトが集まる場所」へ。店舗のあり方そのものを変えようと考えているからこそ、これだけ大胆に攻める必要があったのだろう。リニューアルから日は浅く、この挑戦がもたらす成果を見極めるにはもう少し時間がかかるが、それでも店舗を訪れた顧客の表情からはモノを買うだけでは得られない満足感が読み取れた。(BCN・大蔵 大輔)