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グラフィックボードの王者、CFD販売を追い抜いた台湾メーカー勢

 年間販売数No.1メーカーを表彰する「BCN AWARD」で、04年に新設した「グラフィックボード部門」。部門の設置以来、16年にわたってNo.1の座を守り続けているのがシー・エフ・デー販売(CFD販売)だ。しかし、19年も折り返しを迎える中、6月時点で台湾メーカーの波が押し寄せている。MSIとASUSだ。

CFD販売のグラフィックボード

 そもそもグラフィックボードとは、GPU(Graphics Processing Unit)を積み、パソコンのグラフィック処理を担当する拡張機器のこと。CPUにもある程度のグラフィック処理を行う機能を持つが、PCゲームやVRコンテンツなど、PCからモニターへのグラフィック処理を行う際、入力デバイスからのデータ処理演算(CPU機能)とグラフィック処理(GPU機能)を同時に行うため、プレイ画面の処理が遅延するなど、CPUに大きな負荷がかかる。

 この負荷を避けるため、ゲーミングPCにはCPUと別にグラフィックボードを搭載し、快適なゲームプレイを提供する目的で設計されているケースがほとんどだ。このグラフィックボードは、PCショップやネット通販でも販売しており、主に自作PCユーザーが購入しているとの見方が強いが、最近では外付けグラフィックボード「GPU BOX」などによってカジュアルにPCをゲーミング仕様にするために購入するユーザーも増えているといえる。
 
2018年と2019年1月~5月時点の、グラフィックボードメーカー別シェア

 全国の家電量販店やECショップからPOSデータを集計する「BCNランキング」で、グラフィックボード市場の販売数量シェアを見てみると、18年に26.8%だったCFD販売は、19年1~5月時点で18.3%と約8.5ポイント減少。18年に24.8%で2位だったMSIの29.8%と比べて、10ポイント以上離された。GPUの製造メーカーであるNVIDIAとAMDのグラフィックボードに分けて、前年(18年1~5月)の販売数量と比較してみても、19年に入ってCFD販売は前年比で半数以下となっている。一方、MSIはNVIDIAとAMDと共に18年から販売を伸ばし続けて好調だ。
 
GPUメーカー2社別に、販売数量前年比を算出した。MSIはNVIDIA、AMD共に前年より伸ばしている。
 
NVIDIAの新チップセット「Geforce RTX 2000」シリーズにおけるメーカーシェア(2019年1月~5月)
     ※BCNランキング 最大パネル

 また、18年8月にNVIDIAから発表された最新GPUチップセット「Geforce RTX 2000」シリーズでも、MSIやASUS以外に、GIGABYTEやZOTACに続いて5位と、他社の方がシェアを上回っている。6位に位置するPalit Microsystemsとのシェア差が0.2%しかなく、新製品に対するシェア獲得も現時点で厳しい状況だ。

 CFD販売のシェアが落ちている理由については、あくまでも推測だが、いくつか考えられるだろう。一つ目は、NVIDIAやAMDから割り振られるチップセットの供給量が、例年よりもCFD販売分だけ少なく、他メーカーに割り振られている可能性を秘めているということだ。

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 二つ目は、CFD販売のラインアップ構成が変化し、従来ローエンド・ミドルエンド向け中心だった製品群を、MSIやASUSが中心のミドルハイ・ハイエンドに寄せてきているが、ブランディングがなかなか進んでおらず、ミドルハイ・ハイエンド製品市場で強いMSIやASUSに阻まれてシェアが獲得できていない可能性があること。

 とある自作PCパーツ業界関係者によれば、NVIDIAやAMDのチップセット供給量について、インテルやAMDのCPUにおけるグラフィック処理性能も向上していることから、ローエンドチップセットのメーカーに対する供給数が減っているとの指摘もあり、これが本当ならCFD販売にとっては主力商材のローエンド製品拡販にブレーキがかかり、販売シェア減につながっていると思われる。

 CFD販売は「玄人志向」のブランドで、カスタマーサポートを不要とするユーザーをターゲットにしたブランドで、メーカーサポートや商品カタログ、パッケージを簡略化して販売する分、価格を下げて商品を提供していることも理由に、今まで16年間トップシェアを保ってきた。そのコンセプトは19年になっても変わっていないが、ミドルハイ・ハイエンドに向けた製品の販売に力を注ぐのであれば、MSIやASUSに負けないブランディングが急務だ。

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 6月も終わりに近づき、19年も折り返しとなる中、CFD販売は巻き返せるのか、注目を集めそうだ。(BCN・栃木亮範)