ノジマは5月15日、静岡県・神奈川県を中心に全国展開する地方銀行のスルガ銀行と業務提携に関する基本合意書を交わした。同日、スルガ銀行は新生銀行とも業務提携に関する基本合意書を結んでいる。不振のスルガ銀行の経営再建への道といえるが、一方で他の狙いもありそうだ。
スルガ銀行と新生銀行の業務提携は、相互に自社の強みを強化・補完し合える可能性を持つという共通の認識に至ったためといい、「無担保ローン分野、住宅ローン分野など、個人向けビジネスにおける連携」「事業承継、その他の法人向けソリューションの提供など、法人取引分野における連携」など、計3項目について具体的な検討を開始するとしている。2018年4月、シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズの経営破たんをきっかけに、投資用不動産向け融資の不正融資が発覚したスルガ銀行。同じ神奈川県内で店舗を展開するノジマと新生銀行が助け舟を出した格好だ。
ドコモはケータイ全盛期の2005年、三井住友フィナンシャルグループ(SMFGグループ)、三井住友カードと提携し、ドコモのクレジットカード「dカード」や電子マネー「iD」を立ち上げたが、キャッシュレス化の急伸、スマートフォン(スマホ)の急速な普及を受け、既存の資本提携関係を見直すと18年9月に発表。iDのさらなる拡大に向け共同で事業を展開するとともに、フィンテック領域で新たな連携について検討していくとしていた。
ドコモの送金・決済サービス「ドコモ口座」は、セブン銀行のATMでのチャージに対応しており、セブン銀行とも提携関係にあるが、「楽天/楽天銀行」「au/じぶん銀行」に相当するネット専業銀行はない。また現在、システム上の都合により、ドコモ口座にチャージするための新規口座登録・他銀行口座からの変更登録が一時的に利用できなくなっており、システムの全面的な刷新が予想される。
ノジマもドコモとの関係は深いように見える。16年10月からノジマ・ノジマモバイルの店舗は、「dポイントが貯まる・使える店」となっており(18年2月からノジマモバイル会員限定に変更)、さらに、ローソンなどと同じ「dカード特約店」のため、dカード(クレジットカード)で決済するといつでも3%オフになる。ただし、5月22日現在、スマホ決済サービス「d払い(街のお店)」は利用できない。一方、ECサイトの「ノジマオンライン」では「d払い(ネットのお店)」が利用でき、ノジマグループのインターネットサービスプロバイダ(ISP)の「nifty」は、他の主要ISP同様、「ドコモ光」に対応している。
こうした状況から、そう遠くない将来、ドコモ・ノジマ・スルガ銀行・新生銀行、そこにセブン銀行、SMFGグループなどが加わり、ドコモの中期戦略2020「beyond宣言」に即した、新たな金融サービス・フィンテックサービスを立ち上げる目論見ではないか。
スルガ銀行と新生銀行の業務提携の検討内容から予想すると、dポイントクラブ会員やノジマの顧客を対象とした「住宅ローン(ネット専用・店頭専用)」や、高齢の経営者に向けた「事業承継サービス」などが想定される。さらに、スマホの使い方をレクチャーする「ドコモスマホ教室」などを組み合わせれば、他の金融機関にはない強みとなる。逆にいうと、既存の枠を超える新たなビジネスでも始めない限り、家電量販店と地方銀行が提携してもシナジー効果は生み出せない気がする。
5月16日開催のドコモの新製品・新サービス発表会では、d払いの機能拡充にかなりの時間が割かれていた。ドコモは6月以降、d払いに、新たに「d払い ミニアプリ」「ウォレット」「読み取る決済」と三つの新機能を追加し、ユーザー・加盟店ともメリットを享受できる「お得な購買体験を提供するキャッシュレスプラットフォーム」に進化させる。そのために足りないピースがあれば、当然、手は打つだろう。(BCN・嵯峨野 芙美)
渦中のスルガ銀行は異色の銀行 オンラインバンキングにも強み
スルガ銀行との業務提携の狙いとして、ノジマは「対面とインターネットにおける強みを相互活用しながらクレジットカードを含めた金融デジタルの経済圏を作る」とし、地域活性化を含め、具体的に五つの施策を挙げている。特に重要な施策は「Fintech(フィンテック)事業の共同展開」だろう。スルガ銀行と新生銀行の業務提携は、相互に自社の強みを強化・補完し合える可能性を持つという共通の認識に至ったためといい、「無担保ローン分野、住宅ローン分野など、個人向けビジネスにおける連携」「事業承継、その他の法人向けソリューションの提供など、法人取引分野における連携」など、計3項目について具体的な検討を開始するとしている。2018年4月、シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズの経営破たんをきっかけに、投資用不動産向け融資の不正融資が発覚したスルガ銀行。同じ神奈川県内で店舗を展開するノジマと新生銀行が助け舟を出した格好だ。
支援企業はともにドコモと関りがある
新生銀行は今年4月、「Tポイントプログラム」を「新生ポイントプログラム」にリニューアル。毎月、エントリーするともらえるポイントをTポイント・dポイント・nanacoポイントから選べるようにした。これに先立ち、18年11月には、NTTドコモの「ドコモ レンディングプラットフォーム」を活用した融資サービスを開始予定と発表していた。ドコモはケータイ全盛期の2005年、三井住友フィナンシャルグループ(SMFGグループ)、三井住友カードと提携し、ドコモのクレジットカード「dカード」や電子マネー「iD」を立ち上げたが、キャッシュレス化の急伸、スマートフォン(スマホ)の急速な普及を受け、既存の資本提携関係を見直すと18年9月に発表。iDのさらなる拡大に向け共同で事業を展開するとともに、フィンテック領域で新たな連携について検討していくとしていた。
ドコモの送金・決済サービス「ドコモ口座」は、セブン銀行のATMでのチャージに対応しており、セブン銀行とも提携関係にあるが、「楽天/楽天銀行」「au/じぶん銀行」に相当するネット専業銀行はない。また現在、システム上の都合により、ドコモ口座にチャージするための新規口座登録・他銀行口座からの変更登録が一時的に利用できなくなっており、システムの全面的な刷新が予想される。
ノジマもドコモとの関係は深いように見える。16年10月からノジマ・ノジマモバイルの店舗は、「dポイントが貯まる・使える店」となっており(18年2月からノジマモバイル会員限定に変更)、さらに、ローソンなどと同じ「dカード特約店」のため、dカード(クレジットカード)で決済するといつでも3%オフになる。ただし、5月22日現在、スマホ決済サービス「d払い(街のお店)」は利用できない。一方、ECサイトの「ノジマオンライン」では「d払い(ネットのお店)」が利用でき、ノジマグループのインターネットサービスプロバイダ(ISP)の「nifty」は、他の主要ISP同様、「ドコモ光」に対応している。
こうした状況から、そう遠くない将来、ドコモ・ノジマ・スルガ銀行・新生銀行、そこにセブン銀行、SMFGグループなどが加わり、ドコモの中期戦略2020「beyond宣言」に即した、新たな金融サービス・フィンテックサービスを立ち上げる目論見ではないか。
スルガ銀行と新生銀行の業務提携の検討内容から予想すると、dポイントクラブ会員やノジマの顧客を対象とした「住宅ローン(ネット専用・店頭専用)」や、高齢の経営者に向けた「事業承継サービス」などが想定される。さらに、スマホの使い方をレクチャーする「ドコモスマホ教室」などを組み合わせれば、他の金融機関にはない強みとなる。逆にいうと、既存の枠を超える新たなビジネスでも始めない限り、家電量販店と地方銀行が提携してもシナジー効果は生み出せない気がする。
5月16日開催のドコモの新製品・新サービス発表会では、d払いの機能拡充にかなりの時間が割かれていた。ドコモは6月以降、d払いに、新たに「d払い ミニアプリ」「ウォレット」「読み取る決済」と三つの新機能を追加し、ユーザー・加盟店ともメリットを享受できる「お得な購買体験を提供するキャッシュレスプラットフォーム」に進化させる。そのために足りないピースがあれば、当然、手は打つだろう。(BCN・嵯峨野 芙美)