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10年目を迎えたドンキの情熱価格、「こだわりがない」を武器に

 2009年の誕生以来、小売企業ならではの商品開発でヒットを連発してきたドン・キホーテのプライベートブランド「情熱価格」。最近ではジェネリック家電製品大賞で殿堂入りを果たした格安4Kテレビや2万円を切る格安ノートPCが話題になったことが記憶に新しい。4月18日に都内で開催された記者発表会では、予防ヘルスケア×AIテクノロジーに特化したヘルステックベンチャーのFiNC Technologies(FiNC)とコラボレーションしたオリジナル商品を発表。新たなデジタルを活用した戦略についても言及した。

ドンキが「情熱価格」の新商品を発表。
同ブランドがメディア向けに発表会を開催するのは今回が初

アンバサダーの声を反映 消費者目線に振り切った商品開発

 ドンキとFiNCのコラボ商品は今回が第2弾。第1弾として今年3月に女性向けのスポーツウェア「アクティブギアレディース」を発表。スポーツウェアが日常生活で活用されているという新たなトレンドに着目し、スポーツと日常で兼用できるストレッチパーカーやレギンス、スポーツブラなどを発売した。
 
3月20日に発売した「アクティブギアレディース」

 情熱価格の根幹にあるコンセプトは「メーカーが開発できていない消費者からニーズがある商品を提供する」というもの。FiNCコラボ商品も同じ発想から生まれているが、異なるのは消費者の意見を直接取り入れて商品開発を行ったことだ。

 ヘルスケアプラットフォームアプリを運営するFiNCは、多くの影響力ある女性アンバサダーを抱えており、商品には彼女たちの忌憚のない意見が反映されている。例えば、生活雑貨のカテゴリーから発売するフライパンのカラー。カラフルなものが好まれるという先入観があったが、「インスタで映えるのは“モノクロ”」というアンバサダーからの指摘があり、それに沿った開発が行われた。
 
消費者目線に振り切った生活雑貨や家電
 
アンバサダーの意見がダイレクトに反映されている

 このほか、パッケージや価格など声を取り入れたのは細部にまで及ぶ。通常、メーカーが消費者の声を取り入れて商品開発を行う際には、どうしても譲れないブランドのエッセンスがあるが、情熱価格にはそれがない。したがって、どこまでも消費者目線に振り切った商品開発ができる。

デジタル戦略で拡散力強化 売れ行きの初速で手ごたえを実感

 今回の取り組みで興味深かったのが、FiNCアプリを活用したデジタル戦略だ。新商品について、両者は相互のサービスプラットフォーム内で情報を発信。また、開発に関係したアンバサダーによるSNSやブログの拡散にも事前に注力した。ドン・キホーテのSPA開発本部の小田切正一本部長は「まだ第1弾の発売から1カ月程度しか経っていないが、初速の売れ行きには驚くものがある」と販促効果の手応えを語る。
 
デジタル戦略の効果を語る小田切正一本部長

 リテールテックを推進すると公言しているドンキであれば、もしかするとFiNCと商品開発の先に別の提携を模索しているのではないかと思ったが、小田切本部長によると「現在は考えていない」とのこと。ただ、商品を軸にしたデジタル戦略については今後も拡大させていく方針だ。拡散力の強化により“情熱価格ならでは”のセンセーショナルな商品が話題になる機会は、ますます増えるかもしれない。(BCN・大蔵 大輔)