さまざまな媒体が実施するアンケート結果や公的な人口統計データなどから、東京都心の職場近くに住む、職住近接ニーズの高まりがうかがえる。自宅の不動産を利用した資産形成の観点からも、住宅を購入するなら、今後も人口が増える都心3区(千代田区・中央区・港区)か、各地に点在する郊外~首都圏近郊の人気のエリア・学区が望ましいという主張が優勢だ。
デジタル家電・家電、リフォーム工事などを店頭販売する家電量販店は、おおまかに都市型店舗と郊外型店舗に分かれ、都市型の大型店舗は、駅直結または駅から徒歩数分の立地の良さがウリ。今年2月にオープンした「ビックカメラ町田店」は、あざといまでに「小田急」を意識しており、店舗の商圏は、行政区単位ではなく、沿線単位になりつつあると感じた。人気の沿線・駅・エリアを抑えれば成功は固い。
職住近接ニーズが高まる背景には、小田急線をはじめ東京都心のターミナル駅に乗り入れる鉄道路線の混雑を回避すること、子育て世帯の共働きが一般化したことなどがある。その結果、ますます交通の便のいい立地の人気に拍車がかかり、物件価格は高騰する。職住近接でも、長距離通勤でも、就業開始時刻にあわせて出社するため、朝8時~9時に乗降客が集中する通勤ラッシュは起こる。
2019年1月21日~2月1日の「時差Biz集中取組期間」にあわせ、東京メトロは、早朝時間帯の臨時列車「時差Bizトレイン」の運転、「東西線早起きキャンペーン」(継続)、豊洲駅混雑緩和キャンペーン「とよすプロジェクト」、他鉄道事業者とタイアップした「メトロde朝活」出張講座の開講、サテライトオフィスサービス実証実験など、さまざまな取り組みを実施した。
ほかにも、JR東日本は中央線・総武線で時差通勤でJRE POINTをプレゼントする「早起き応援キャンペーン」を実施。「都営交通 2019冬の時差Bizキャンペーン」「時差Biz~りんかる早起きキャンペーン2019【冬】」「KEIO BIZ PLAZA オフピーク通勤キャンペーン」なども行われた。
こうしたキャンペーンの多くは、出社時間の前倒し(早朝出社)にインセンティブを与えるもので、例えば、東京メトロは、期間中の平日10日間全て「東西線早起きキャンペーン」に参加した人には、東京メトロ駅構内で営業している「めとろ庵」全店で使える商品引換券をプレゼントした。官民を挙げたキャッシュレス化の推進と同じく、人気チェーン店や有料講座の「オトク」を呼び水に、人々の行動変化を促そうとしている。
しかし、一般的な会社員の場合、自分自身の判断で出社時刻を前倒し/後ろ倒しする時差出勤は、長時間労働または反対に労働時間の絶対的な不足につながりやすく、メリットよりデメリットのほうが多いように感じられる。カフェや自宅で仕事をする「テレワーク」に至っては仕組みが整わず、理想だけが先行しているのが現状だ。
19年の注目キーワードとして「MaaS(Mobility as a Service)」が挙がっているが、時差Bizの掲げるコンセプトから、位置情報とAIの活用で、公共交通機関を使った通勤は、今よりもっと便利になるはずと考えた。
各社のIoT対応AI家電は、生活習慣のパターンを学習し、位置情報に応じて室温や開閉操作などを自動制御する。この仕組みを応用し、現行の乗車区間に応じた運賃体系から、例えば、スマートフォンに内蔵したGPSで取得した行動履歴から乗車路線をAIが推定。過去の混雑度や当日の運行状況をもとに算出した混雑度を加味したAI運賃に切り替えれば、通勤ラッシュの時間帯に出社を避ける大きなインセンティブにならないだろうか。
今すぐ「AIが毎回、混雑度に応じて利用者ごとに料金を自動計算する仕組み」が導入可能とは思わないが、すでにGoogleのパーソナライズされた検索結果やリコメンドにはスマホで取得したGPS情報が反映されており、希望者にはGoogle マップのタイムラインの月次レポートが届く。「WalkCoin」や「歩いておトク」といった歩くだけでポイント/コインが貯まるアプリもあるため、技術的には不可能ではないと思える。AI・IoTを活用した「働き方改革」は、掛け声だけではなく、本質的な「働き方」の見直しにメスを入れてほしい。(BCN・嵯峨野 芙美)
デジタル家電・家電、リフォーム工事などを店頭販売する家電量販店は、おおまかに都市型店舗と郊外型店舗に分かれ、都市型の大型店舗は、駅直結または駅から徒歩数分の立地の良さがウリ。今年2月にオープンした「ビックカメラ町田店」は、あざといまでに「小田急」を意識しており、店舗の商圏は、行政区単位ではなく、沿線単位になりつつあると感じた。人気の沿線・駅・エリアを抑えれば成功は固い。
職住近接ニーズが高まる背景には、小田急線をはじめ東京都心のターミナル駅に乗り入れる鉄道路線の混雑を回避すること、子育て世帯の共働きが一般化したことなどがある。その結果、ますます交通の便のいい立地の人気に拍車がかかり、物件価格は高騰する。職住近接でも、長距離通勤でも、就業開始時刻にあわせて出社するため、朝8時~9時に乗降客が集中する通勤ラッシュは起こる。
「時差Biz」ムーブメント インセンティブで早朝出社・朝活を推奨
東京都は、「東京2020」に向け快適通勤ムーブメントとして「時差Biz」を提唱。現在の参加企業は多種多様なジャンル、計1048社におよび、特設サイトでは、個人、企業ごとにそれぞれ時差Biz参加のメリットを挙げている。2019年1月21日~2月1日の「時差Biz集中取組期間」にあわせ、東京メトロは、早朝時間帯の臨時列車「時差Bizトレイン」の運転、「東西線早起きキャンペーン」(継続)、豊洲駅混雑緩和キャンペーン「とよすプロジェクト」、他鉄道事業者とタイアップした「メトロde朝活」出張講座の開講、サテライトオフィスサービス実証実験など、さまざまな取り組みを実施した。
ほかにも、JR東日本は中央線・総武線で時差通勤でJRE POINTをプレゼントする「早起き応援キャンペーン」を実施。「都営交通 2019冬の時差Bizキャンペーン」「時差Biz~りんかる早起きキャンペーン2019【冬】」「KEIO BIZ PLAZA オフピーク通勤キャンペーン」なども行われた。
こうしたキャンペーンの多くは、出社時間の前倒し(早朝出社)にインセンティブを与えるもので、例えば、東京メトロは、期間中の平日10日間全て「東西線早起きキャンペーン」に参加した人には、東京メトロ駅構内で営業している「めとろ庵」全店で使える商品引換券をプレゼントした。官民を挙げたキャッシュレス化の推進と同じく、人気チェーン店や有料講座の「オトク」を呼び水に、人々の行動変化を促そうとしている。
しかし、一般的な会社員の場合、自分自身の判断で出社時刻を前倒し/後ろ倒しする時差出勤は、長時間労働または反対に労働時間の絶対的な不足につながりやすく、メリットよりデメリットのほうが多いように感じられる。カフェや自宅で仕事をする「テレワーク」に至っては仕組みが整わず、理想だけが先行しているのが現状だ。
19年の注目キーワードとして「MaaS(Mobility as a Service)」が挙がっているが、時差Bizの掲げるコンセプトから、位置情報とAIの活用で、公共交通機関を使った通勤は、今よりもっと便利になるはずと考えた。
各社のIoT対応AI家電は、生活習慣のパターンを学習し、位置情報に応じて室温や開閉操作などを自動制御する。この仕組みを応用し、現行の乗車区間に応じた運賃体系から、例えば、スマートフォンに内蔵したGPSで取得した行動履歴から乗車路線をAIが推定。過去の混雑度や当日の運行状況をもとに算出した混雑度を加味したAI運賃に切り替えれば、通勤ラッシュの時間帯に出社を避ける大きなインセンティブにならないだろうか。
今すぐ「AIが毎回、混雑度に応じて利用者ごとに料金を自動計算する仕組み」が導入可能とは思わないが、すでにGoogleのパーソナライズされた検索結果やリコメンドにはスマホで取得したGPS情報が反映されており、希望者にはGoogle マップのタイムラインの月次レポートが届く。「WalkCoin」や「歩いておトク」といった歩くだけでポイント/コインが貯まるアプリもあるため、技術的には不可能ではないと思える。AI・IoTを活用した「働き方改革」は、掛け声だけではなく、本質的な「働き方」の見直しにメスを入れてほしい。(BCN・嵯峨野 芙美)