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平成/ゼロ年代のヒット商品・レコーダー 競合は動画配信に

【連載・平成振り返り 第2回】 「平成最後の年に振り返るデジタル製品史」として、過去の記事とデータを引きつつ、主にゼロ年代(2000年代)に注目を集めたジャンルを振り返りたい。第2回は、早々に国内メーカー4社を除いて撤退が相次ぎ、「地デジ元年」と呼ばれ2011年にピークを迎えた「レコーダー」を取り上げる。

「地デジ特需」はレコーダーにも波及 ピークは8年前

 家電量販店・オンラインショップの実売データを集計した「BCNランキング」によると、次世代DVDの「Blu-ray Disc(BD、ブルーレイ)」の再生・録画に対応したBD対応機(BDレコーダー)と従来型DVD対応機を合わせたレコーダー全体の年間販売台数は、買い替えを中心とした「地デジ特需」が発生した11年が最多。しかし、駆け込み後の反動は大きく、翌12年はほぼ半減し、急失速した。
 

 タイプ別にみると、09年にBDが従来型DVDを逆転。18年はBDレコーダー全体の販売台数は前年比104.8%と小幅ながら、14年以来、久々に前年超えを記録し、需要停滞局面の一歩手前で踏みとどまっている。

 内閣府の「消費動向調査」では、市場の変化にあわせ、調査対象や分類を見直しており、14年以降は、再生専用のBDプレーヤーとBDレコーダーをまとめて「ブルーレイ」として集計。同調査によると、「ブルーレイ」の2人以上の世帯普及率は、最も高い年(16年)には40%台後半に達したが、ここ数年、普及は足踏みしていることが分かる。
 
2人以上の世帯普及率……内閣府 主要耐久消費財 普及率調査 より

最後の規格争い 「BD」対「HD DVD」の幕切れをプレイバック

 レコーダーといえば、ソニーを筆頭に多くの企業が推進していた「BD」と、東芝やマイクロソフトなどが推進していた「HD DVD」の規格争いが、印象に強く残っている。過去の記事から引用すると、「BD」と「HD DVD」の規格争いは、初のHD DVD対応プレーヤーが登場した06年末から約2年続き、本格的に両陣営が製品を投入した07年の年末商戦では、BD対応レコーダーの販売台数はHD DVDを圧倒する結果となった。
 
2007年1月掲載<BD陣営がシェア94.7%で圧勝、
3社8機種で戦った次世代DVD最初の年末商戦>より

【過去記事】
・BD陣営がシェア94.7%で圧勝、3社8機種で戦った次世代DVD最初の年末商戦
https://www.bcnretail.com/news/detail/070117_6575.html
・次世代レコーダーでソニーが61.1%とトップシェアを獲得、その戦略を探る
https://www.bcnretail.com/market/detail/080128_9667.html


 こうした販売データや当初からの「BD優勢」という各メディアの論調に加え、それまでHD DVDを支持してきた米ワーナー・ブラザーズが突然、BD支持に回ったため、当時社長を務めていた東芝の西田厚聰氏は「もはや勝ち目は無い」と判断、08年2月16日にHD DVD事業の終息を発表した。すると、即座にBDを中心とした次世代DVDの販売台数構成比は跳ね上がった。

【過去記事】
・次世代レコーダー動く! 台数で3割、金額で5割に迫る勢い、本格的拡大期へ
https://www.bcnretail.com/news/detail/080326_10253p1.html
・「来年にはレコーダーの8割がBDに」 松下の“ミスターBD”が語るブルーレイディスク戦略
https://www.bcnretail.com/market/detail/080508_10637.html

 仮に08年の時点でBDに一本化されず、その後も規格争いが続いていたら、多くの消費者は買い控えを続け、「地デジ特需」はなかったかもしれない。いま以上に、BDは、マニア向けのニッチな規格にとどまった可能性もある。
 
07年12月、BCNの田中繁廣取締役(当時)は「BDとHD DVDは併存する」と予想したが、
わずか2カ月強で事態は急展開した

「平成」の間は生き残ったが、今後は……

 08年春以降、旧作のBD化や新作のBD/DVDの同時リリースが盛んになったが、競合のないBD版の価格は高止まりした。現在、「ブルーレイ」と、その後継となる新規格「4Kブルーレイ(Ultra HD Blu-ray、UHD BD)は最後の光メディアとされている。コンテンツを所有しない、サブスクリプション型の動画配信の優位性が高まってきたからだ。

 具体的には、PCでお馴染みの「YouTube」に加え、「Amazonプライム・ビデオ」「Netflix」「dアニメ」「hulu」、無料インターネットテレビ局「AbemaTV」、動画視聴アプリ「TVer(ティーバー)」など、さまざまなタイプの動画配信サービスが登場し、「テレビ番組の録画」「市販のBD/UHD BD/DVDの視聴」という、VHSビデオデッキ、DVDレコーダーから引き継いできた価値が根本から揺るぎつつある。
 
「Amazonプライム・ビデオ」をはじめ、マルチデバイス対応の動画配信サービスが充実し、
わざわざ専用機を用い、「テレビ放送を録画して見る」スタイルが廃れる可能性が出てきた

 テレビ放送のデジタル化のため、複製に関する不便なルール「コピーワンス」「ダビング10」を受け入れざるを得ず、そうしたネガティブイメージと、機能・操作方法の複雑化で、なかなか一般層に広がらなかったレコーダー。最新テレビの手軽なUSB HDD録画機能や動画配信サービスで十分という声が強くなると、市場縮小は免れない。「平成」の間は生き残ったが、今後の見通しは不透明だ。(BCN・嵯峨野 芙美)

■レコーダーの歩み
2003年(平成15年):世界初のBDレコーダーが登場
ソニーが世界初となるBDレコーダー「BDZ-S77」を発売。BSデジタルチューナーを内蔵し、デジタル対応の先駆けとなった。12月、3大都市圏で地上デジタル放送スタート

2006年(平成18年):12月、全国で地上デジタル放送がスタート。あわせて、BD、HD DVDの地デジ対応機が初投入

2007年(平成19年):地上アナログチューナーのみの機種が店頭から消える
 
2004年からずっと右肩上がりの傾向が続いていた
(2011年7月24日掲載<データと関連ニュースで振り返る“地デジ化”10年>より)

2008年(平成20年)2月:東芝がHD HDDから撤退、後にBDに参入
2008年(平成20年)6月:「ダビング10」スタート(それまではコピーワンス)
2009年(平成20年)5月:家電エコポイント制度スタート

2011年~12年(平成23~24年):スマートフォンが普及し始める
2011年(平成23年)以降:全録レコーダーやトリプルチューナーモデルが増える

2019年(平成31年)1月:改正著作権法 施行
バッファローがUSB接続した外付けHDDに録りためたデータを有償で新しいHDDへ移行する「録画番組引越しサービス」を開始


*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などのPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。