携帯料金分離プランで「楽天除外」の不可思議

 3月5日に閣議決定したスマートフォンなど携帯電話の端末料金と通信料金の完全分離は、今年の夏から秋に関連する改正法案の施行が決まるとみられている。そうした中、新規参入となる楽天モバイルネットワークなどは完全分離から除外されることを総務省が検討していると、3月20日付の日本経済新聞・電子版が報じた。仮に楽天が除外されることとなれば、政府や総務省がSIMフリーなどの新規参入事業者の比率を高めるために推進してきた「完全分離プラン」を、自ら「新規参入事業者にとって不利」と認めることになりはしないか。

完全分離プランで「楽天は除外」が検討されていると報じられた

 完全分離の例外を認める理由について報道では、シェアが低い楽天のような新規参入事業者に分離の義務を課したら、体力のある大手キャリアが有利になり、大手の寡占が続く懸念があるためとしている。

 しかし、そもそも総務省は、「完全分離」をすれば、消費者が携帯端末を自由に選べるようになり、通信料金は下がり、端末と通信のトータルでかかる費用は下がると喧伝してきたのではなかったか。楽天の場合は例外とし、総額で高くなる現行のセットプランを認めるということは、逆に楽天にとっては競争面で不利に働かないだろうか。

 そうでないとすれば、総務省自らが、完全分離は携帯端末にかかる初期費用が高いから、新規参入事業者にとっては不利に働き、「実質ゼロ円」キャンペーンが展開できるセットプランのほうが普及を促進する効果があることを認めることになりかねない。

 昨年秋の総務省の緊急提言では、想定される料金プランの見直しイメージを図で示した。現状、他社キャリアから乗り換えたときは、端末の月賦をキャッシュバックすることで通信料金を下げているように見えるが、このままでは通信料金は高止まりしたままとなり、頻繁に端末を代えるユーザーは有利に、端末を長く使うユーザーは不利になる。

 これを「完全分離」に見直すと、高価な端末や安い端末、中古の端末など端末自体はユーザーの好みによって自由に選択し、明らかになった通信料金は低廉化される効果が期待されるとしていた。
 

 いずれにせよ、菅官房長官の「値下げの余地がある」との発言がきっかけとなった完全分離の議論は、端末と通信にかかるトータルコストを下げることで、消費者の家計負担を軽減したり、あるいは、ほかの消費に回すように促すことがベースにあったはずだ。また、SMIフリーなどMVNOの新規参入を促し、構成比を引き上げる狙いもあった。

 今回の「楽天の除外」は、あくまでも検討段階で詳細は夏ごろに省令などで定める見通しとはいえ、「完全分離は新規参入事業者にとって不利」ということなら、これまでのロジックが破綻することになりはしないか。(BCN・細田 立圭志)