プレミアム“キャッシュレス”フライデーの期待と不安、迷走する「プレ金」の行方
開始から2年が経過し、今ではすっかり形骸化してしまったかにみえる「プレミアムフライデー」。実は現在でも経済産業省による推進活動がひっそりと行われていることは、本サイトの2月22日掲載記事でご紹介したが、いよいよ抜本的な再生プランが打ち出された。プレミアムフライデーと合わせて、キャッシュレス決済のキャンペーンを展開する「プレミアム“キャッシュレス”フライデー」だ。
注目は対象になるキャッシュレス決済事業者が複数社あることだ。これまでキャッシュレス決済のキャンペーンといえば、モバイル決済サービス「PayPay」や「LINE Pay」が単独で展開するものが一般的だったが、「プレミアム“キャッシュレス”フライデー」は複数の事業者が同時にキャンペーンを展開する。
現在発表されているだけでも参加企業は、交通系電子マネーを提供するJR東日本、九州旅客鉄道、クレジットカード事業を行う三井住友カード、ビューカード、コード決済サービスを提供するPayPay、LINE Payなど数十社に及ぶ。イメージキャラクターは「鉄腕アトム」で、経産省の担当者いわく「未来を想起させ、かつ国民に親しみがある」というのが起用理由とのことだ。
「月末の金曜日に15時退社」という基準ばかりに意識がいきがちだが、実はこれはあくまで推奨するライフスタイルの一パターンで、満たしていなくても上記の三つの条件を達成しているなら、それは「プレミアムフライデーしている」ということになる。
その点、キャッシュレス決済の大規模キャンペーンは「15時退社」に縛られることなく利用可能で、多くの人が恩恵を享受できる。すでにPayPayやLINE Payが実施しているキャンペーンによって“お得”という印象はできあがりつつある。国が後押しするならば、これまで懐疑的だった保守層にも響きやすい。小売店や飲食店にも効果が波及するのも、プレミアムフライデーの目的と合致している。
レス決済の悪用が発生しない保証はない。
また、今回のキャンペーンに参加する事業者は、あくまで自主参加が原則。国からの補助金やサポートは予定していない。現状で主流となっているポイント還元や割引キャンペーンは、運営企業に資金力があることが前提だ。中小企業にとっては、参加ハードルが高く、事業参入の障壁になる可能性もある。また、先述したプレミアムフライデーの定義にある「単なる安売りではなく」を満たすかどうかも議論の必要がある。値引き以外の魅力的なキャンペーン案も当然求められてくるだろう。
プレミアム“キャッシュレス”フライデーは、早くも3月29日に第一弾がスタートする。第二弾は「キャッシュレスウィーク」として4月26日から10連休にかけて実施する予定だ。プレミアムフライデーでは、盛り上がりは一瞬で数カ月後には話題にもあがらなくなったが、今回はどうか。プレミアム“キャッシュレス”フライデーが回を重ねるごとに進化していく恒例行事となることを期待したい。(BCN・大蔵 大輔)
共通目的は“消費喚起” 複数社が一斉にキャンペーン展開
経産省とキャッシュレス推進協議会が3月13日に打ち出した本施策は、プレミアムフライデーが実施される月末の最終金曜日に合わせて、キャッシュレス決済のポイント還元をはじめとするお得なキャンペーンを実施するというもの。“消費喚起”を促すために政府が推進する二本柱を組み合わせることで、相乗効果を狙う。注目は対象になるキャッシュレス決済事業者が複数社あることだ。これまでキャッシュレス決済のキャンペーンといえば、モバイル決済サービス「PayPay」や「LINE Pay」が単独で展開するものが一般的だったが、「プレミアム“キャッシュレス”フライデー」は複数の事業者が同時にキャンペーンを展開する。
現在発表されているだけでも参加企業は、交通系電子マネーを提供するJR東日本、九州旅客鉄道、クレジットカード事業を行う三井住友カード、ビューカード、コード決済サービスを提供するPayPay、LINE Payなど数十社に及ぶ。イメージキャラクターは「鉄腕アトム」で、経産省の担当者いわく「未来を想起させ、かつ国民に親しみがある」というのが起用理由とのことだ。
キャッシュレスとのコラボで恩恵を受ける人が拡大
忘れている人も多いと思うので、今一度、プレミアムフライデーの定義を確認しておきたい。経産省のサイトを確認すると「プレミアムフライデーとは、個人が幸せや楽しさを感じられる体験(買物や家族との外食、観光など)や、そのための時間の創出を促すことで、『充実感・満足感を実感できる生活スタイルの変革への機会になる』『 地域等のコミュニティ機能強化や一体感の醸成につながる』『(単なる安売りではなく)デフレ的傾向を変えていくきっかけとなる』といった効果につなげていく取組」とある。「月末の金曜日に15時退社」という基準ばかりに意識がいきがちだが、実はこれはあくまで推奨するライフスタイルの一パターンで、満たしていなくても上記の三つの条件を達成しているなら、それは「プレミアムフライデーしている」ということになる。
その点、キャッシュレス決済の大規模キャンペーンは「15時退社」に縛られることなく利用可能で、多くの人が恩恵を享受できる。すでにPayPayやLINE Payが実施しているキャンペーンによって“お得”という印象はできあがりつつある。国が後押しするならば、これまで懐疑的だった保守層にも響きやすい。小売店や飲食店にも効果が波及するのも、プレミアムフライデーの目的と合致している。
セキュリティーや参入障壁の問題はまだクリアされていない
一方でいくつかの問題もある。まず、セキュリティーに関する問題だ。12月にPayPayが実施した「100億円あげちゃうキャンペーン」では、システムの穴をついた二重決済やなりすましによるクレジットカードの不正利用が発生した。同サービスは1月に本人認証サービス(3Dセキュア)を導入することで、この問題に対策を講じたが、別の手口でキャッシュレス決済の悪用が発生しない保証はない。
また、今回のキャンペーンに参加する事業者は、あくまで自主参加が原則。国からの補助金やサポートは予定していない。現状で主流となっているポイント還元や割引キャンペーンは、運営企業に資金力があることが前提だ。中小企業にとっては、参加ハードルが高く、事業参入の障壁になる可能性もある。また、先述したプレミアムフライデーの定義にある「単なる安売りではなく」を満たすかどうかも議論の必要がある。値引き以外の魅力的なキャンペーン案も当然求められてくるだろう。
プレミアム“キャッシュレス”フライデーは、早くも3月29日に第一弾がスタートする。第二弾は「キャッシュレスウィーク」として4月26日から10連休にかけて実施する予定だ。プレミアムフライデーでは、盛り上がりは一瞬で数カ月後には話題にもあがらなくなったが、今回はどうか。プレミアム“キャッシュレス”フライデーが回を重ねるごとに進化していく恒例行事となることを期待したい。(BCN・大蔵 大輔)