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4TB以上の内蔵HDDで販売台数シェアNo.1のシーゲイト、ユーザーが評価したポイントは?

販売戦略

2019/03/14 18:35

 SNSがテキストから画像、画像から動画に移行するなど、日常生活でデジタルデータの大容量化が進展するとともにストレージニーズは高まるばかりだ。全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などのPOSデータを毎日収集・集計する「BCNランキング」によると、2018年(1月~12月)における4TB以上の内蔵HDDの販売台数シェアで、シーゲイトが45.8%のトップとなり、ウエスタンデジタルの45.6%を抜いて首位に躍り出た。ここ数年の躍進が目立つシーゲイトの購入者は、どこに満足しているのだろうか。

2018年に販売台数シェアトップに躍り出たシーゲイト

目立つシーゲイトの躍進

 自作PC専門店などでは、ベアドライブ(HDDベア・ベアHDD)と呼ばれるむき出しの状態のHDDが売られている。その4TB以上の大容量の内蔵HDDで、16年に21.3%だったシーゲイトの販売台数シェアは、17年に一気に14.4ポイントもアップして35.7%、18年はさらに10.1ポイントアップしてシェアトップの座をつかみ取った。

 HDD開発に注力しているシーゲイトが躍進をみせ、ウエスタンデジタルは16年から6.5ポイントのシェアダウンとなった。また、東芝とHGSTもシェアダウンとなった。ユーザーは、シーゲイトをどのように評価しているのだろうか。
 
毎年シェアを伸ばしてきたシーゲイト

 BCNは今年1月にインターネット調査(n=600)を実施。過去5年間にシーゲイトの内蔵HDDを購入したユーザーに、評価(満足度)している項目を聞いてみた。

 もっとも評価が高かったのは「容量ラインアップの多彩さ」だ。満足(34.0%)とやや満足(60.5%)を合わせた94.5%となった。従来からのコアなファンである自作PCユーザーのPCのパフォーマンスを上げる「BarraCuda」シリーズに加え、24時間稼働を保証して耐久性や拡張性に優れた「IronWolf」シリーズ、そして高精細なグラフィックスの表現力とリアルタイムのレスポンスの速さが求められる過酷なPCゲーミング環境を満たす「FireCuda」シリーズなど、ターゲットごとのキメ細かいラインアップが評価されているようだ。
 

 例えば、「BarraCuda」シリーズでは、ノートPCやモバイル向けHDDで500GB~14TBを揃える「BarraCuda」と、クリエイティブやプロフェッショナル用デスクトップ向けHDDで同じく500GB~14TBを揃える「BarraCuda Pro」の二つのラインアップを展開する。ユーザーの用途に合わせた豊富な容量別のラインナップが、満足度の高さにつながっているのだろう。

 IT業界でも今年は通信規格の5Gを全面に打ち出すイベントが増えている。4Gの100倍のスピードや低遅延、リアルタイム性を実現する5Gにより、これまでとは次元の違う世界に突入する。また、自動運転やAIに代表されるようにクラウドのデータストレージ領域でもデータ量の爆発的な増加が見込まれ、HDDあたりの大容量化が求められている。

 ゲームの世界でも、VRやARなどコンテンツがリッチになるだけではなく、自分やほかの人のプレイを動画でキャプチャするといった用途が増えている。このように、今後もストレージ容量は大きくなることはあっても、小さくなることはないのだ。

 シーゲイトは、コンシューマ向けだけでなく、ビジネス向けのNASや高解像度のAIビデオ録画など監視領域や強固なセキュアが求められるデータセンター向けのHDDも用意することから、高度な技術面の評価も高い。

 ユーザー調査でも、購入者の満足として「最新技術の搭載」を回答したのは満足(20.5%)とやや満足(62.0%)を合わせた82.5%だった。ファンからは、HDDの高速化と電源瞬断時のデータ保護を実現する「Multi-Tier Caching(MTC)Technology」や、NAS用最適化ファームウェアの「AgileArray」といった独自技術の搭載は、あまり全面的にはアピールされていない技術力の高さを認識して評価しているようだ。
 

内蔵HDDを購入するときのポイントは?

 インターネット調査では、シーゲイトの購入者以外のユーザーにも、内蔵HDDを購入する際に重視するポイントを、項目別にメーカーの順位付けをして評価してもらった。つまり、ユーザーがメーカーに抱くイメージの特徴が分かる。
 
シーゲイトなど内蔵HDDメーカー上位3社の評価・購入重視ポイント順位比較

 やはりここでもユーザーは容量の大きさを、購入する際の重視したポイントに掲げている。シーゲイトは1位を獲得。大容量の実現には最新技術への投資が不可欠であり、「シーゲイトは大容量」というイメージが浸透していることが読み取れる。

 ほかに、内蔵HDDの基本スペックともいえる「読み込み・書き込み速度」はシーゲイトが1位、「転送速度・方式」も1位となり、HDDのスピード性能で他社と差をつけた。大容量かつスピード性能などのパフォーマンスの高さが裏付けられたことが、シーゲイトがここ1、2年で急激に販売シェアを伸ばしている要因といえるかもしれない。

 一方で、「静音性」はB社が1位となり、シーゲイトより上回った。また「最新技術の搭載」でもシーゲイトは他社と差をつけられている。この点、前述のようにコアなファン層からは技術力が評価されているのだが、新規ユーザー層に対しては、アピールが不足しているといえそうだ。

 例えば、静音性でもシーゲイトは、見えないところで技術の手を緩めていない。静音性を高めるには、プラッターやヘッドを振動させないことが重要になる。同社は、工場のライン検査の段階でプラッターの微細なたわみがないかまで試験してから生産ラインに流す。また、ラインの製造過程でも、たわみが出ている製品が発生したときは外す仕組みがとられている。

 HDDの静音性で加えると、シーク音というカリカリする耳障りな音がある。シーゲイトでは、このシーク音を耳障りではない音にチューニングしたりする。この機能は、静かな寝室でも気にならないように「ベットルームクワイエット」と名付けられている。こうした技術を、今後アピールしていくことが一つの課題といえるだろう。

 「本体の薄さ」はシーゲイトとC社が同率で1位だった。実は本体が薄いことで、放熱性を高めているという点も、あまり知られてはいないがシーゲイトのこだわりである。

 このように、大容量とスピードという時代の流れに合わせたラインアップ戦略が、シーゲイトの販売シェアが急激にアップした大きな理由といえそうだ。一方で、アピールしきれていない項目があるということは、まだ伸びしろがあることを意味し、この点が改善されれば、2位に転落したウエスタンデジタルをさらに突き放すかもしれない。