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「駅すぱあと」で次世代の取り組み、各地域の実証実験で新たな連携強化

経営戦略

2019/03/10 16:00

【「駅すぱあと」の今までとこれから・6】 「MaaS(Mobility as a Service)」という概念によって、移動手段を通じて多くのサービスが連携しつつある中、サービス事業者による連携の必要性が出てきている。ヴァル研究所(ヴァル研)も、経路検索サービス「駅すぱあと」のビジネスモデルとして、パッケージ販売から始まり、経費精算ソリューション、システム連携サービスなどと提供形態に幅を広げてきたが、MaaSを見据えた新たなビジネスモデルの構築も視野に入れている。

 この新たなビジネスモデルとして、現在、ヴァル研が力を注いでいるのは「連携強化」で、中でも各地域での新たな連携にフォーカスしている。太田信夫社長は「近い将来、地方は移動手段という点で厳しい状況に陥る可能性がある。さまざまな企業との連携で、それを解決していきたい」との考えを示している。そのため、実証実験への参画に取り組んでいる。
 
太田信夫社長

 実証実験として参画したのは、まず京都府伊根町のグリーンスローモビリティ(電動小型低速車両)を活用したプロジェクトだ。

 伊根町伊根浦地区は、約230軒の舟屋が立地する観光地であるものの、狭隘な道路に自家用車や路線バスなどが混在し、地域の移動需要に対応した新たな交通手段の構築が求められている。その中で、電動小型低速車両は地域住民の日常生活や観光客の需要に対応したクリーンで楽しい交通システムとして期待がかかっており、移動手段としての適正性を検証。その実証実験で、ヴァル研のグループ会社であるVISHが展開するバスロケーションシステム「BUS CATCH(バスキャッチ)」の予約・配車機能を提供した。
 
「BUS CATCH」の利用イメージ

 また、静岡県静岡市の「居住者を対象としたMaaS実証実験」に参画。この実験では、ヴァル研の複合経路検索サービス「mixway」と未来シェアの「SAVS(AI相乗りタクシー)」が連携して、出発地から目的地まで鉄道や路線バスなど既存公共交通の経路検索サービスに加えて、特定地区内でラストマイル交通としてSAVSの経路案内と予約サイトへの移動が体験できる環境を整えた。

 就業人口の減少やドライバー不足、地域の高齢化などが進む中、公共交通サービスの水準の維持・向上が求められている。静岡市でも同様の課題があることから、MaaS、新たな移動サービスの体験乗車を通じて、居住者の利用意向やサービス改善の方向性を把握するために実証実験を行ったというわけだ。
 
従来型の交通サービスとMaaSによるサービス提供イメージ

 さらに、4月には岐阜県大垣市でスマートシティの実現に向けた共同実証実験プロジェクトに参加する。BUS CATCHを活用して、名阪近鉄バスの路線バスである岐垣線で運行するバスのリアルタイムな位置情報や運行状況を提供。地域におけるバス利用者の利便性向上と、バスの利用活性化が狙いだ。

 このプロジェクトでは、ほかにもスマートフォンアプリ「Japan Taxi」や市役所ロビーに設置する「タクシー予約システム(タブレット端末)」の活用をはじめ、スマートフォンアプリ「Origami」で窓口に設置したQRコードを読み取ってクレジットカードなどで市税や手数料を決済したりできる実証実験も行う。
 
ヴァル研究所が行う実証実験の内容

 これらの実証実験では、ITベンダーだけでなく、地方自治体や地元企業と連携することがポイントとなる。太田社長は、「業界の枠を越えたパートナーシップが生まれている」としている。ヴァル研では、従来のパートナーシップを維持しながら、これまでとは異なった新たなパートナーシップも模索している。