モデルルームでIoT機器を66個つなげて見えてきた問題

 家の中で多くのIoT機器をつなげたら、機器同士が勝手に連動して暴走する危険はないのか。ミサワホームが東京・渋谷のモデルルームを使って、実際に66個のIoT機器を接続する実証実験を実施したところ、いろいろな課題が浮上してきた。ミサワホーム総合研究所と産業技術総合研究所(産技研)は実証実験を踏まえながら、「スマートハウスの機能安全に関する国際標準規格(IEC63168)」の規格化を推進する。

66個のIoI機器がつながるミサワホームのスマートハウス

 プロジェクトは、経済産業省による省エネ国際標準の獲得や普及促進事業「connected 50@渋谷PJ」としてスタート。「TBSハウジング渋谷 東京ホームズコレクション」のミサワホーム渋谷展示場で実施した。そのユースケースを受ける形で、産技研が国際規格化に向けた委員会原案(CD)を作成し、IEC63168規格は遅くとも2021年に発行される見通しだ。

 昨年度はIoT機器50個をそれぞれ単独で動作させたが、今年度は66個に増やし、IoT機器同士を連携させて動くようにした。例えば、出かける際にAIスピーカーに声をかけると、照明が消えて、窓のブラインドやシャッターがゆっくりと閉まり始め、掃除ロボットや窓ふきロボットが床や窓を掃除し始めるといった具合だ。人感センサーと連動してカーテンが開いたり、空調が制御されたりもする。
 
AIスピーカーとシャッター、照明が連動するデモ

 最初の壁がWi-Fi環境の不安定さだ。家は、3階建てで4階が屋上になっている。Wi-Fiルータ1台では、3階や庭先、屋上にあるIoT機器と連動しないという問題が生じた。そこで、各フロアや庭にポケットWi-Fiを設置したものの、範囲が狭くて、どの機器がつながっているのか、いないのかが全く分からないという問題もあった。
 
Wi-Fiがつながらない問題

 改善策として、複数のWi-Fiアクセスポイントを最適なルートで選んで「網の目」のようにつながるメッシュ機能を搭載したバッファローのWi-Fiルーター「AirStation connect」を採用したところ、庭や屋上にあるIoT機器がつながった。ただし、親機や子機を最適な場所に置こうとしても、近くに電源がないという不都合もあった。この辺りは、スマートハウスをつくる際にWi-Fiネットワークを想定した設計が必要になってきそうだ。
 
IoT住宅にはメッシュWi-Fiが必須になるのか
 
メッシュWi-Fi対応のバッファロー「AirStation connect」の子機

 セキュリティについては、従来、PCやスマートフォン(スマホ)などの機器ごとにセキュリティ対策ソフトを入れておけば良かったが、66個ものIoT機器それぞれに対策ソフトを入れるのは難しい。また、どのIoT機器が危険にさらされているのかを管理するのは困難だ。

 モデルルームでは、BBソフトサービスのSECURIEを導入。実際に使ってみると、スマホのアプリでIoT機器の接続状況が把握でき、脆弱性がある場合も、どの機器が危険にさらされているかを検知してくれる。

 アナログ的なところでは、IoT機器を設置するときに棚やテーブルに電源がない場合があったり、電源の周りにIoT機器が集中するためにケーブルだらけになったり、電源タップにたくさんのコンセントがささる状態になったりする。また、ロボット掃除機を使っていないときは隠しておきたいといったニーズもあったという。
 
IoT住宅は電源が集中してしまう課題も

 改善策としては、壁のデッドスペースを活用するといった工夫を施した。ほかにも、想定される事例として、機器単独の使用は安全でも、連携すると不安定な状況が発生しうることが示された。
 
IoT機器が連携したときの「安全」が議論に

 例えば、ガス漏れを検知するシステムが作動して窓を開けるように指示したら、空調管理システムが気温の変化を検知して、逆に窓を閉めるといったループ現象や、スマホのアプリが使えない高齢者はどうするのかといった問題など。また、軽い痴ほう症の高齢者が迷わないようにトイレまで誘導する矢印を床に投影したら、それをロボット掃除機がゴミと認識して動いてしまうといったユースケースもあったという。

 こうしたことから、ミサワホームと産技研はIoT機器が連携したときの最低限の安全性を担保するための国際標準規格づくりを目指しているというわけだ。テクノロジーは進化し続けて、その速度を緩めないが、IoT機器がお互いに安全に動作するための議論をする余地は大いにあるだろう。(BCN・細田 立圭志)